カンポットペッパーの夕べ

昨夜6月26日、代々木上原のQuindiという洒落たイタリアンのお店で、カンポットペッパーを使った創作料理をご馳走になり、甚く感動しましたので、ブログに感想記事を割り込ませることにします。

(出演者)    
 創作 安藤シェフ(聞き上手なイケメン)とQuindiのイタリアン界の猛者の方々
 プロデュース 味へのこだわりが半端ない「食の女王マギー」こと植田さん
 コメンテーター 「美食の女神」こと保々さん(IBM時代の同期入社で経営学の先生、大手企業の役員を歴任中。私は彼女のFBを見て美食を勉強してます。)
 胡椒提供&美味しく食べただけ 筆者杉田

 詳細は、以下の杉田のFB内の保々さんと植田さんのシェア記事を見て頂ければと思いますが、(https://www.facebook.com/takehiko.sugita.1

 どれもすごく美味しかったのですが、最初の赤胡椒のお茶で衝撃を受けました。

 これまでにないハーブティーの様で、胡椒の辛味をあまり感じず飲みやすい。

 驚愕したのは、飲んですぐに体がポカポカしてきたことです。

 ジンジャーエールやブランディ―の比ではない、お腹だけでなく全身ポカポカ感! 

 実際、飲み物でこんなに体全体が温まったのは初めてで、この体験だけでブログに書きたくなってしまいました。

 恐らく、風邪の引き始めに飲めば、一発で治ります。

 前々回の記事にも書きましたが、アーユルヴェーダ、ヨガなどのインド伝統医学を管理するインドの官庁AYUSH省のレポートで、「免疫を高めるために、生姜と胡椒を摂りなさい」と言っているのには、激しくうなずけますね。

 ただ、単にこのインドAYUSH省の言う通りすると、かなり辛いので日本人には抵抗があります。しかしながら、赤胡椒のお茶はハーブとしての旨味と香りが勝っているので、辛さに抵抗感がありません

 実は、カンボジアでは、胡椒の実を取った房の残った軸を乾燥させて、煎じてお茶として飲む習慣があり、この赤胡椒のお茶と似た味なんですが、味が薄すぎてあまり魅力がありません。ハーブとしての存在感・上品さが似て非なるもので、桁違いです。

 安藤シェフが強調されていたのは、「カンポットペッパーは圧迫クラッシュして使うよりも、普通にミルで挽いた方が独特の旨味が引き出せる特徴がある」とのことで、この赤胡椒茶にもミル挽きが使われているようです。

 この体をポカポカと温めるのは、前回記事のように、胡椒の辛味成分ピぺリンの作用です。

 カンポットペッパーは、ピぺリンが普通の胡椒より20%以上多いので、普通ならば辛過ぎるのですが、赤胡椒の特有のハーブとしての旨味が辛さを和らげるのです。

 また、アイスクリームにベリーを加え、赤胡椒を粗く割って添えたデザートにも感動しました。

 やはり、赤胡椒の「ハーブ効果」が効いて、これまでに無い「ハーブ・アイスクリーム」としか言いようがありません。

 以上は、私の独断と偏見による感想でした。

 その他のお料理の写真も添付します。

 鹿肉パテ入りサラダ:やはり胡椒がないと鹿肉は始まりません。(カンボジアの東北部の鹿肉のジャーキーと似た胡椒の使い方だが、フレッシュ。)

 焼きチョコレート with 黒・赤胡椒:チョコレートが「更にランクアップ」。

 カチョエペペ:極太の麺との相性が絶品! 

 カンポットペッパーの旨味を引き出して頂き、場を設けて頂いた皆様に感謝です。

アフターコロナの健康とカンポットペッパー その2

<免疫力アップと血流改善>

 前回の記事で、アフターコロナ時代には、免疫を高めて予防が大切。免疫を高める食材として、胡椒や生姜が改めて注目されてきた、というお話をさせて頂きました。

 コロナ対策の免疫を高めるために何が必要か?を知るために、日本の免疫学の第一人者と言われる、宮坂昌之阪大教授の「免疫力を強くする」(講談社ブルーバックス)という本を読みました。

 この本の第8章に「血液循環やリンパ循環を良くしてやれば、その分免疫力が高くなるのです」という記述があります。

 免疫細胞の通り道である血管やリンパ系の通りをよくすることが、免疫機能を働かせるために決定的に必要ということだそうです。

 この本の記述への私の独断と偏見の解釈ですが、平たく言うと、特定の病原体の抗原に反応して退治することができるリンパ球は、全体の10万分の1程度しかないなので、この数少ない割合のリンパ球を、体全体から血流を良くしてすごい速度でかき集めて病原体に充てることが、病原体に勝つ為に必要だということです。

<胡椒の有効成分ピぺリンの効果とカンポットペッパー>

 さて、古来より知られているように胡椒・生姜には全身の血流をよくする機能があります。

 生姜の効能については、日本でもある程度知られこれまで和食でも大いに活用されてきました。しかし、胡椒は調味料として単に味付けに用いられるだけで、健康効果を意識することもありませんので、ここで胡椒の健康効果をお話ししたいと思います。

 胡椒の辛味は、ピぺリンという辛味成分によりますが、ピぺリンは、ダイエットに効果があったり、血行をよくして冷えを解消したり、肌を健康に保ってくれたりするなどの健康効果があります。

ピぺリンの効果①:血行促進

 上記のように、血行促進が免疫力アップのために重要ですが、ピぺリンは体中の毛細血管を拡張して血行を促進し、冷えを防ぎます。

体が冷えることで風邪をひきやすくなることでもわかるように、やはり血流促進は免疫アップに大切ですね。

ピぺリンの効果②:食欲アップして栄養を十分摂取

 胡椒を使うと食事が進みますが、ピぺリンは食欲を増進します。

 どんなに良い食事であっても、それを十分に食べて消化しなければ健康にとって意味がありません。因みに、胡椒の臭い成分のリモネンにも食欲をそそる効果があります。

ピぺリンの効果③:抗菌、防腐、防虫効果

 元々、コロンブスなどの時代に西洋人が胡椒を求めてインドに向かったのは、肉の腐敗を防ぐために胡椒を使いたかったためです。

 現在は冷凍・冷蔵技術や防腐剤があって胡椒の重要性は下がりましたが、夏の食中毒を防ぐなどの為にも効果があります。

ピぺリンの効果④:ダイエット、アンチエイジングなど

 ピぺリンは、交感神経を刺激して、アドレナリンを分泌させ脂肪分解酵素を促進させるといわれています。

 また、ピぺリンには抗酸化作用もあるので、アンチエイジングに役立ちます。

 ところで、カンボジアのカンポット州で栽培される、カンポットペッパーはクメール種という品種で、他のインド種やマレー種よりもピぺリンを20%以上多く含むといわれています。

 カンポットペッパーにより、ピぺリンをより効果的に摂ることができます。

<カンポットペッパーの辛味>

 ギリシャの大手食品会社との商談で言われたのは、「カンポットペッパーの辛味は他の種類の胡椒の20%以上あるので、20%以上高くても買うよ」ということでした。

 また、カンボジアの首都プノンペンの日本人経営の有名ホテルでは、お土産コーナーに普通の胡椒とカンポットペッパーのサンプルが並べて置いてあり、すぐに比較できるようになっています。お客さんがカンポットペッパーの純粋な辛味と強い香りに驚いて買っていく、とのことで、在庫が少なくなると「カンポットペッパーを送れ、送れ」と

 催促が激しいですね。

 この様に、一口食べて頂くと、カンポットペッパーの違いがはっきり判ります。

(次回、胡椒の有効成分ピぺリンを美味しく、十分に摂る方法をお話しします。)

アフターコロナの健康とカンポットペッパー その1

<アフターコロナ時代には免疫を高めて予防が大切>

 今日、2020年6月16日時点、新型コロナ感染者数は全世界で800万人となり、増加の勢いが止まりません。

 世界中の科学者が特効薬やワクチンの開発にしのぎを削っていますが、まだ制圧するための決定的な対策は出ていません。

 安定したワクチンが出てくるまで数年かかるという専門が多いです。

(ノーベル賞の山中京大教授のコロナブログhttps://www.covid19-yamanaka.com/ など)

 有効なワクチンが出てきて大規模な流行が抑えられるようになっても、インフルエンザのように毎年流行を繰り返すようになる、との専門家の意見もあります。

 アフターコロナとは、何とかしてコロナとの共存をしていく時代になると予想されます。

「コロナとの共存」の為に何が必要か?

 勿論、政府の主導する「新生活様式」として、3蜜を避けて人との距離をとる(ソーシャルディスタンス)ようにお店、事務所、学校などを変えていくこと、テレ・ワークなどITを使った働き方改革などがあります。

 社会の在り方をコロナに合わせて変えていくということですが、一方で私たちが個人でできることは何でしょうか?

 新型コロナウイルスは強力な感染力があり、多くの方が感染している一方、感染しない人や感染しても症状が出ない人も大勢います。

 この違いは、個々の方の免疫力の違いによると考えられています。

 私たち1人1人でできることは、自分の免疫力を高めてコロナに罹りにくくしていくことです。

 免疫力を上げる為には、規則正しい生活をする、ストレスを溜めない、体を冷やさない、適度な運動などが重要と言われていますが、当然のことながら毎日の食事・栄養の取り方も大変重要です。

<伝統医学と胡椒・生姜>

 人類の古来の知恵、中国伝統医学では「医食同源」と言われ、日頃からバランスの取れた美味しい食事をとることで病気を予防し、治療しようという考え方があります。

 インドで5000年間受け継がれてきた、実践的な生活健康法としての伝統医学アーユルヴェーダでも「医食同源」は大きな柱です。

 我田引水で恐縮ですが、アフターコロナ時代の免疫を高める食材として、改めて注目されてきたものに、胡椒や生姜があります。

 新型コロナ感染対策の一環として、今年インド政府AYUSH省(アーユルヴェーダ、ヨガなどの自然医学を管理する官庁)の研究結果発表「健康的な食事とライフスタイルの実践を通じて、免疫システムを強化するための対策」として、伝統的なアーユルヴェーダの医薬とならんで胡椒・生姜を摂ることが挙げられています。

 胡椒も生姜も東南アジア・南アジアが主産地です。インドの伝統医療「アーユルヴェーダ」ではヨーロッパよりも更に昔、紀元前2500年前には、すでに生薬として活用されていたと言われています。

 胡椒・生姜が免疫を高める理由は、主に全身の毛細血管を拡張して血流を促進するからです。

 胡椒では、辛味成分のピぺリンにその作用があります。

 カンポットペッパーは、クメール種という特有の種類を栽培していますが、クメール種は他の種類の胡椒よりもピぺリンが20%以上多いといわれています。

(次回、更にピぺリンの健康効果などの内容に続きます)

黒生姜(ブラックジンジャー)の植付が終わりました。企業秘密を公開!?

 Cedar Farmの今シーズンの黒生姜(ブラックジンジャー)の植付が何とか終わりました。

 2016年に原産地と気候・土壌が酷似した、カンボジアのポーサット州でテスト栽培を始めて以来、5シーズン目の植付です。(写真は、‘種イモ’と植付作業風景)

 黒生姜(ブラックジンジャー)は生姜やウコンの仲間ですが、生姜やウコンと比べて非常に病気に弱く、すぐに死んでしまいます。

 通常は、人や動物が病原菌を運んで来ない山奥の人里離れた場所で栽培されます。

 代々黒生姜を栽培してきた村でさえ、年によってはかなりの病気が発生します。

 近年需要の高まりに応じて、原産地近くでもいくつかの事業者が栽培にチャレンジしてきましたが、何年も全滅を繰り返したりして、中々うまく行きませんでした。

 私が2016年にポーサット州でテスト栽培した時も、半分は病気が出ました。

 その後色々工夫して、ポーサット州でうまく行くようになった後は、胡椒農園近くのカンポット州でも大規模栽培に挑戦しました。

 山奥のポーサット州には行くだけで片道2日かかってしまいます。実際2016年9月20日にTV放映された「こんなところに日本人」でこのテスト栽培中の様子が紹介されましたが、見て頂くと「辿り着くだけでもやっとだ」と実感できます。

 そこで、私がほぼ毎日現地に入れる胡椒農園近くでも栽培を開始したわけです。

 そうは言ってもカンポット州での栽培の困難は、山奥とは比較になりません。

 原産地の農民からは「絶対に無理だからやめろ」と言われました。海岸近くのカンポット州では山奥とは気候・土壌その他の条件がまるで違うためです。

 また、本家の原産地では、化成肥料や農薬も使用していますが、私は完全有機栽培にこだわっているので、本家よりも難しいかもしれません。

 ノウハウの一端をお話ししますと、一番の問題は雨期に根腐れ病が出るので、それをいかにして防ぐかです。

 根腐れ病の原因は、病原カビ類が根を溶かして穴を開け、その穴からカビや細菌が侵入して病気になってしまいます。

 黒生姜は根の皮が薄くて弱いためか、根の防御機能が弱いためか、ウコンや生姜に問題がでない土でも簡単に根腐れしてしまうのです。

 病原のカビ類の増殖を防ぐ方法の1つは、土壌にカビ類の天敵を増やすことですが、うちでは天敵の放線菌類を増やすカニ殻を大量に使っています。

 何とか病原カビ類の天敵を増やす手はないかと、調べていた時にカニ殻、エビ殻を与えると(他の条件も揃うと)放線菌類が増えて病原も減るということがわかりましたが、肥料として買うと非常に高くてペイしません。

 ある晩、ふと、「そういえば、農園近くのケップ海岸のカニ市場のレストランで大量にカニを食べているなあ。食べたあとに殻をもらえないかな?」と思いつきました。

 結局、このカニ市場のカニ殻を大量に入手できることになり、自作の機械で粉にひいて使っています。まさに「灯台下暗し」ですね。(写真はカニ殻粉砕機)

パリのカンポットペッパー

 欧米、特にフランスではカンポットペッパーは胡椒のトップブランドです。

 これは、カンポットペッパーの歴史にも関係があります。

<カンポットペッパーが欧米でトップブランドになった経緯>

 1887年にフランス領インドシナが成立し、カンボジア、ベトナム、ラオスはフランスの植民地になりました。

 フランスは、胡椒原産地のイギリス植民地のインドやマレーシアに対抗して、20世紀に入るとカンボジアやベトナムで盛んに胡椒を栽培しました。そのため、フランスで使われる胡椒はカンボジア、ベトナム産が主流になり、また他のヨーロッパ諸国にも大いに輸出しました。

 1960年代のカンボジアの胡椒の総生産量は、約1.5万トンで、現在の日本の胡椒の年間消費量の約2倍にもなります。

 カンボジア、ベトナムで栽培される胡椒のうち、カンボジアのカンポット州産の胡椒は、「カンポットペッパー」と呼ばれ、その特別の味と香りにより最高級品としてパリの高級レストランで使われていました。

 これが、カンポットペッパーが、フランスをはじめとする欧米でトップブランドとなった経緯です。

<内戦による荒廃と復活>

 ところがその後、1975年のポルポトによるカンボジア支配が始まり、虐殺や極端な共産化政策により、カンポット州をはじめ、カンボジア全土の胡椒生産は壊滅してしまいました。

 例えば、弊社のケップ州(元のカンポット州ケップ郡)の農園もポルポトの内戦前は、フランス人経営の胡椒農園だったとのことですが、2013年に私が再開するときには深いジャングルになっていました。

 このあたりはすごい田舎で、今は牧歌的な景色が広がっていますが、実際に戦闘の舞台になっていたという話が伝わっています。

 平成3年(1991年)のパリ和平協定により、やっと内戦が収まり、1990年代後半には、生き残っていた現地の人々により、胡椒の生産が再開されたが、その時には既に、「カンボジア産高級胡椒」というブランドは、過去のものとなっていました。

その後の努力により、2008年(平成20年)にはWTOのGI(地理的表示)を取得して世界的な地域ブランドとして認められ、参入し生産が拡大しつつあります。

(GIとは世界貿易機関(WTO)協定に基づく一種の知的財産。製法や品質基準などを満たした特定産地の農水産物に、産地名を付けてブランド化し、他の農産物との差別化を図る。ワインの「ボルドー」がその一例。)

 前のブログでも述べましたが、TIME誌(2012年1月16日号)はカンポットペッパーの復活を祝って「普通の胡椒はテーブルワイン、カンポットペッパーは上質のボルドーワイン(ファイン・ボルドー)」と。書いています。

<現在のパリのカンポットペッパー>

 現在もパリではカンポットペッパーはトップブランドで、高級スパイス専門店でも高値で売られています。

 特に、フランス植民地時代にフランス人が発見した、カンポットペッパー特有の「赤胡椒」は、Poivre Kampot rouge と呼ばれ、その独特の旨味の為に最高値で販売されています。

(以下は、パリの高級スパイス専門店のインタネット販売ページの抜粋)

Epices Roellinger】

Albert Menes】

Sur Les Quais】