2014年8月10日
前回の記事で、天然ゴム農園の樹液採取(タッピング)の為には、雨季の雨は不可欠だが降りすぎるとタッピングができなくて困るので、その対策のレインガードについて書きました。
今回は、それ以外の雨季の悩み事です。
先ず、雨季が本格化すると毎日のようにスコールが来ますが、スコールは大きな積乱雲と共にやって来て雨を降らす直前に、積乱雲から強いダウンバーストが吹きます。
これは時に台風の風のように非常に強い場合があって、ゴムの木を吹き倒してしまうことがあります。
先日も2本ほど吹き倒されました。下の写真は吹き倒されたゴムの木を起こして補助に添え木をしたところです。
倒れた時に枝が折れたので、枝を切り払っています。この木は根を張り直して枝がまた出て来るまでしばらくはタッピングできません。
毎度雨季には、全体のゴムの木2万本余りの中で10本程度ですが、こんな状態のものが出てきます。
もう一つは、カビによる病気です。連日の雨で湿度がかなり高くなっているために、カビが発生しやすくなっています。
日本では、カビによる作物の病気と言えば‘うどん粉病‘が有名ですが、天然ゴム農園では様々なカビによる病気が発生します。(うどんこ病(うどんこびょう)は子嚢菌のウドンコカビ科の純活物寄生菌による植物病害の総称。ブドウ、麦類(コムギ、オオムギ)、野菜などの重要な病害である。 by Wikipedia)
(うどん粉病の写真 by Wikipedia)
元々、弊社の天然ゴム農園では、RAV4という天然ゴムの品種を栽培していますが、この品種は収量は多いが若干病気にかかりやすい性質を持っています。この為かどうかはわかりませんが、毎年雨季に入ると必ずカビによる病気が何回か発生します。
先日も下の写真のように、枝が白いカビに覆われてしまう病気が発生しました。(白矢印)
この白い枝の木が1本見つかると、周りに何十本という白い枝の木が出て来てしまいます。カビによる病気はエボラではないですが感染が非常に速いのです。
元々、どのゴムの品種もクローン栽培で増えてきているので、天然ゴム農園の木は全て同じDNAを持っています。そのため病気への耐性はどの木も同じなので、1本が感染すると周囲も簡単に感染してしまうことが多いのです。
少し放っておくと葉が枯れてきて木全体が弱ってしまいますので、1本病気を見つけると周囲の木も含めて早急な対応が必要になります。従って、天然ゴム農園のマネージャーは毎日農園内を歩き回って異変をすぐに察知しなくてはなりません。我々の現地マネージャーのチャンラー君も毎日50ヘクタールの農園を巡視しています。天然ゴムの木の世話もかなり手がかかるのです。
天然ゴムの病気を見つける主な方法は、木の葉や枝を見ることです。多くの病気の症状は葉に出て来て、葉が黄色くなったり、白い斑点ができたり、うどん粉病の白い粉が付いたりします。ただ、今回のカビは主に枝に症状が出ています。
さて、対応方法は具体的には薬を散布するのですが、大規模な感染の場合は1000ℓのタンクに水で薄めた薬を入れて、トラクターで引っ張りながら、薬をスプレーします。
今回は、それほど感染が拡大していなかったので、感染した木だけをターゲットに薬を付けました。やり方は、下の写真の様に人が木の枝に上って、感染箇所に薬を塗っていきます。(写真をクリックして頂くとはっきり見えます。)
地上5m位の高い枝にも登って作業をするので、見ている方がハラハラします。この薬を塗っているのは我々の従業員ではなく、専門の業者なので実に手慣れた感じで次々と病気の木に登っていきます。カンボジアには労災の制度もないので、こんな危険な作業はどうかとも思うのですが、本人たちはいたって平然と作業しています。日本のトビ職のようなものかもしれません。
天然ゴムは、植えてから樹液が取れるまでに5年もかかり、その5年間は1銭の収入も入ってきません。従って、5年間の投資を無駄にしないために、折角育って樹液が取れるようになった木は死なせないように大切に世話をしていく必要があります。
そこでこのように毎年雨季には、カビの病気等と闘いながらゴムの木を守っているのです。