[本文末に追記あります] キャッサバのペスト付き苗を売ったC社の顛末 その2: キャッサバのペストとの戦い 番外編2

2014年6月13日

前々回の記事に書きましたように、弊社のキャッサバ・プランテーションでは5月初旬にキャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれるメーリーバグ(Mealybug, 粉カイガラムシ)が大発生して、大きな被害がでました。
そこで、茎(苗)を売ったC社に、契約書の不具合時取り替え条項を基に 損害賠償を要求しました。

しかしC社は、「在庫をS.N. Group(仮名)に売却し、計画倒産して、社長が失踪してしまった」とのことで、一筋縄では行きません。また、計画倒産したにも関わらず事務所も社員もそのまま営業を続けていることも不可解です。

そこで、C社の実態を調べるために、再三営業担当役員に連絡を取りましたがしばらく電話の不通が続きました。やっとのことで連絡がつき、再度5月26日にC社を訪れました。

まず、C社の社長が行方不明になっても、他の代表者(カンボジアでは、株主=Director)がいればその人間に損害賠償請求できるはずなので、他の代表者の有無を確認するために、事務所の壁に貼ってある営業ライセンス等の書類を調べました。

以下はC社のパテント(営業ライセンス)で、社長の写真付きです。これも以前と同じく事務所に掲げられています。(写真は肝心の部分はカットしてあります。)

(後日、この営業ライセンスをもとに調査した結果、C社の代表者は社長のみで、他には損害賠償請求ができないことが分かりました。)

しばらく待たされて、例の営業担当役員が少し前よりスッキリした感じで現れました。

営業担当役員 開口一番「 TG0475。社長は4月のカンボジア正月(Khmer New Year)の後、タイに行きました。その後5月18日にTG0475便(タイ国際航空0475便)でオーストラリアのシドニーに逃げたんです。それで私はインターポールに彼を国際手配してもらいました。」

私 心中 「インターポール!? 正気かよ!? 何を言っているんだ?」

営業担当役員 「彼は、実は私の友人から5万ドルを借りたのを手始めに、社員や知り合いから合計100万ドルを会社の名義で借り、更にタイの取引先からの商品代金120万ドルを踏み倒して逃げたんです。」
(傍らにいたC社の農業エキスパートの D氏に向かって) 「Dさん、あんたも彼にお金を貸したわよね?」
D
氏 「XXXXドル貸したよ。」

「それで私たちは、彼を警察に告発してインターポールにも国際手配してもらったんです。」
「オーストラリアの警察も動くので、彼はそのうち捕まるわよ。」

私 「でも、なんでまた社員までが彼にそんなに大金を貸したんですか?」
営業担当役員 「これが借用書なの。C社は相当儲かっていたから、C社の事業拡大資金を貸して高い利息がもらえると、みんな信じたんです。」
(下は借用書の写真。証人(Witness)の弁護士の署名・スタンプもあります。但し肝心の部分はカットしています。確かに借用書の金額は5万ドルです。)

私 「ということは、社長個人に貸したのではなく、C社に貸したのですね?」
営業担当役員 「そうです。だから、みんな以前のように働いているのよ。以前のように働くために、S.N. Groupの社長がお金を出して商品を調達してくれているのよ。」 

私 心中 「そうだったのか! お金はC社に貸したのだから、C社が潰れたらお金が返って来なくなる。お金を貸した社員はC社を潰さないように、以前同様に働きながら社長を捕まえて、お金を取り戻そうとしているんだ!」

私 「でも何故、S.N. GroupC社社員のためにお金を出して商品調達するんですか?」
営業担当役員 「S.N. Groupの社長は以前C社で働いていた関係で、同じようにC社(社長)にお金を貸しているんですよ。」

私 「S.N. GroupとしてもC社が潰れると貸したお金が返ってこないので、潰さないように協力しているわけですね。でもC社にはもともと商品在庫がかなりあったはずですが、なぜS.N. Groupが商品調達しないとならないんですか?」
営業担当役員 「C社社長が逃げる際に、2人の経理担当者に命じて在庫を全て売って、その代金40万ドルを社長に送金させたんです。かわいそうに、その2人も幇助で刑務所行きよ。」

にわかには信じがたい話ですが、話の筋は通っています。社長が逃げたのに同じ事務所で社員が以前同様に働いている訳も説明がつきます。

私 「しかし、C社は儲かっていたんでしょう? 何故社長は詐欺をしてまで社員からお金をかき集めて逃げる必要があったんですか?」

営業担当役員 「ホントに彼はずる賢いけど馬鹿です。C社は6年間も営業して利益もかなりだったのに、ギャンブル狂で借金を抱えてたんですよ。あちこちのカジノで大金を使ってVIPだったのよ。」

カンボジアではカジノが合法で、国境地帯を中心に多くのカジノがあります。これまでにも、昼間からカジノにのめり込んで横領した人が、身近にもいました。

この営業担当役員は、誰かにこの話をしたくてしようがないと感じで、聞きもしないのに話し続けます。

「以前、彼はアメリカのカリフォルニア州とマサチューセッツ州で、全く同じ詐欺を働いてカンボジアに逃げてきたんです。大手デリバリーのU社よ。そこの代理店で同じことをしたんだけど、彼の上に2人オーナーがいたから、その2人が詐欺で刑務所に入り、彼はまんまと逃げて騙し取ったお金をもとにカンボジアでC社を設立して6年後にこうなったわけ。」

私 「よくそこまでわかりましたね?」
営業担当役員 「私の親類がポルポト時代にアメリカに逃げて市民権を取り、今はカリフォルニア州の役人で、一時州知事の補佐をしていたぐらいだから。」

確かに以前、この営業担当役員はポルポト時代にアメリカに逃げて、本人だけカンボジアに戻り、他の一族はほとんどアメリカに居るという話を聞きました。

私 「でも何故アメリカの時と同じようにC社のオーナーを別に作って責任をかぶせようとしなかったのだろうか?」
営業担当役員 「そうしようとしたんです。先ず今年2月に私に会社の経営を譲ると言ってきたの。でも私は経営はできないので、断ったんです。」
「その後、S.N. Groupの社長に経営を譲る話がまとまったのだけど、彼(S.N. Group社長)にとってラッキーだったことに、C社の代表者変更登記に時間がかかっている間に、彼の詐欺行為が発覚して彼が逃げざるを得なくなったわけ。」

しかし、社長が合計220万ドルも詐欺を働いて、持っているお金が経理担当者が送金した40万ドルだとすると、我々の数万ドルの損害賠償請求などは霞んでしまいます。お金がない相手からは取れませんし。。
いずれにしても、社長が捕まらないと請求の相手がいません。

私 「社長は捕まるんですよね。動きがあったら知らせてください。」
営業担当役員 「すぐに捕まるはず。知らせます。」

ということで、チープな犯罪小説のようになってしまいましたが、C社との戦いはまだ続きます。

<追記>
今日、例の営業担当役員と連絡が付いて最新の状況を聞けました。
C社社長はまだ捕まらずに、相変わらずオーストラリアのシドニーに逃げているそうです。

カンボジア政府経由のインターポールの国際手配は、「カンボジア政府の動きが遅すぎて上手くいっていない」とのことです。
カンボジア政府の動きが遅いのはいつものことで、私なども、いい加減遅い日本政府の1/10くらいのスピードだと感じます。カンボジア政府への働きかけを通常ルートで(庶民が)行うと普通は役所内で申請書が〇〇晒しにされます。(差しさわりがあるのでこれ以上のコメントは差し控えます。。)

また、C社社長は実はアメリカのパスポートも持っていて、そのアメリカ・パスポート上の名前はカンボジア・パスポートの名前とは異なります。
5月18日にタイからオーストラリアのシドニーに逃げた際には、その2つの国籍の2つの名前で同時刻にシドニー行きと、別の便をそれぞれ予約して追跡を混乱させようとしたそうです。
そこで、営業担当役員はアメリカ大使館に訴え出て、彼のアメリカ・パスポートを無効にさせようと動いています。

この営業担当役員は、当然ながらずっと給料をもらっていないので、既にC社の仕事をするのは止めたとのことです。この様にC社は解体に向かっているようです。

彼女は、弊社も彼女たち騙された社員達と一緒に訴訟に加わってくれ、と言っていますが、思案のしどころです。
C社には既に差し押さえるべき在庫等の財産も無く、会社も解体するのは時間の問題です。一方、シドニーに逃げた社長の方は、カンボジア政府の遅い動きの為もあって、いつ捕まるのかわかりません。
また、たとえ捕まっても直前に持ち出した40万ドル以外に幾ら持っているのか? カジノ狂なので所持金がすっかり無くなっているかもしれません。債権者は100万ドル以上いますので、訴訟しても我々の取り分があるのかどうか?

ということで、我々の方はC社の賠償金をあてにして訴訟等に労力を割くのではなく、その分の労力をキャッサバ栽培に振り向けて、収穫量・販売額を増やすように頑張った方が結果的には割りが良いと考えています。