2014年3月4日
カンボジアで農業を始めるにあたっては先ず農地の取得が必要ですが、これには特有のノウハウが必要です。私が最初に農場を始めた時には、このノウハウが分からず、大変に苦労しました。
先ず、重要なのは、カンボジアでは外国人は土地を所有することができないことです。日本人でこのことを知らずに、土地を取得しようとして詐欺に引っ掛かるる人も多いそうです。
土地を所有できないので、農地を確保する方法としては以下の3通りがあります。
1.信頼できるカンボジア人の名義を借りて土地を買う。
2.カンボジア人株主比率51%以上の会社を設立して、その会社名義で土地を買う。
3.借地する。
1.については本当に信頼できるカンボジア人が見つかればよいのですが、名義人に悪意があって勝手に土地を処分されても、カンボジアの法律上は外国人には全く何の権利もないので、泣き寝入りになります。
2.については、株主のカンボジア人は信頼できる人に頼み、更に複数にして各人の持ち株比率をできるだけ下げ、出来ればお互いに知らない人同志にして、万が一にもお互いが共同で51%以上の権利を行使できないようにする工夫が必要です。また、名義上株主となるカンボジア人とは、株主としての権利と義務を放棄する旨の契約書を結びます。
会社を設立するとなると、多くの費用や工数がかかります。会社設立の一時費用だけでなく、毎月経理処理をして税務署に報告して税金を払う必要があります。カンボジアの法律では、利益の20%または売り上げの1%を税金として支払う必要がありますので、例え赤字であっても売り上げがあれば税金を納めなければなりません。カンボジアの税務署は外国企業(外国人が代表者の企業)を集中的に狙って税金を取りに来ますので逃れるのはほぼ不可能です。また、毎年決算費用や営業ライセンスの更新費用というのもかかります。従って、会社を作るのはある程度の規模の農園でなければ割りにあいません。
3.の借地は外国人であっても法律上当然全く問題なくできますので、個人レベルでは最も現実的かもしれません。借地と言っても、30年間とか70年間という超長期も場合によって可能で、事実上買収と同じことになります。
これらの3つの土地確保に共通する最も大切な点は、買ったり借りたりしようとする土地の本当のオーナーを特定することです。
日本の常識では「オーナーの特定なんて何が問題なの?」となりますが、カンボジアでは事情が違います。カンボジアでは各州の役所に土地所有登記が可能ですが、大半のオーナーは州の役所に登記をしていません。
州に登記するためには一般に多額の登記費用が必要で、しかも登記すると固定資産税にあたる税金を払う必要がでてきます。そこで、大半のオーナーは州の下の行政単位の郡(District)、コミューン(Commune)、または村(Village)の長に届け出てその承認文書をもらうことで、登記の代わりにします。州レベルに登記した所有権を「Hard Title」、それより下の地方首長の承認のみの場合を「Soft Title」と呼びます。
問題はこの「Soft Title」の場合、誰がオーナーなのか中々分からないことです。
分からないのをいいことに、オーナーになりすまし勝手に(無効な)売買契約を結び、お金をだまし取るケースが多発しています。
また、「Soft Title」の場合、同じ土地をその上の州レベルで他の人が登記してしまった場合には、法律的には「Hard Title」が優先されるので、土地を取り上げられてしまうことになります。実際、この「Soft Title」と「Hard Title」の矛盾によって、無数の土地紛争が起きています。
従って、最初はなるべく「Hard Title」の土地のみを対象にするのが無難です。しかし、多くの土地が「Soft Title」なので、時としてこの対応も必要になってきます。この場合は、現地に行って地方首長に会って土地の所有状況を確認することが不可欠です。
以下の写真は、「Soft Title」の登録書類です。この場合は郡長と都市化計画省の担当者のサインが入っており、他の人が事実上州に登記できないので、「Hard Title」並の効力があります。