カンポットペッパー 有機JAS認証の難しさ

 前回、有機JAS認証取得の経緯をお話ししました。審査を受けるための資料作りや現地審査の苦労談でしたが、本当の難しさは、有機栽培そのものにあります。

<「有機」・「オーガニック」の定義>

 日本で「有機」や「オーガニック」を名乗るには、農水省の有機JAS認証が必要ですが、認証されてJASマークの付けられる「有機」・「オーガニック」の定義は、

・胡椒など多年草は3年間、作付け前に畑に農薬・化学肥料を使わない

・栽培中も農薬・化学肥料を使わない

・遺伝子組み換え種子を使わない

・病害虫の駆除に農薬を使わない

など、厳しい基準があります。

この基準を守っているかどうかを、認定機関が生産行程記録や現地を毎年審査して確認します。

<安心・安全な有機栽培が広がらない原因>

 日本でも海外でも、多くの農家が身体や環境に影響があると言われている農薬や化学肥料を使って栽培しています。

 「有機栽培」は農薬(除草剤や殺虫剤など)や安い化学肥料が使えない為、除草や害虫駆除などの人件費が余計にかかってどうしてもコスト高になり、経営が難しい。

 現在、有機JAS認定されている農産物は日本全体の0.2%と言われています。

<有機栽培カンポットペッパーの難しさ>

 カンポットペッパーの場合、実は更に難しさがあります。

  • クメール種

 カンポットペッパーは、カンボジアに特有の味の良いクメール種を限定栽培しています。

 ところがクメール種は、他のインド種やマレー種に比べて、成長が遅い、病害虫に弱い、収量が少ないという欠点があります。良いのは味と香りだけです。

 特に病害虫に弱いことは、農家にとって致命的に近いですが、例えばスコールが続いて数日水に浸かったりすると、すぐに根腐れ病が出てきます。

 それを防ぐために、排水溝を沢山掘って排水に努めたり、良い微生物の多い土づくりをして病原菌の増殖を防いだりと、大変に手間がかかります。

 Cedar Farmでも、良い土づくりの為に、牛糞堆肥、ゴム葉の堆肥、カニ殻などの有機肥料に取り組んでいます。

 葉を食べる害虫には、殺虫剤を使えないので、クレンスレングという毒の木の実やタバコなどを使って虫よけの散布剤を作りますが、殺虫剤のようには簡単には効きません。

ミニパワーショベルで排水溝を掘る 良い土づくりの為の牛糞堆肥
  • カンボジアの気候

 熱帯で雨期には豊富な雨が降り、強烈な日光に恵まれているので、雑草が見る見るうちに育ってしまいます。日本の数倍の雑草の成長速度です。ところが、除草剤が使えないので、除草は全て手作業になり、日本の有機栽培以上に大きな工数がかかります。

人手による除草作業の様子 手作業での選別

 上の写真のように選別作業もすべて人手ですから、カンポットペッパー栽培には、膨大な人手がかかり、人件費の安いカンボジアでなければとてもできません。

 このように多くの労働力をかけて病害虫と戦いながら、味と香りの良いクメール種の胡椒を、安心・安全のために有機栽培しているのが、カンポットペッパーです。

カンポットペッパーと黒生姜の有機JAS認証取得の経緯

 海外で農園などをやっていると、どこで見つけて頂いたのか、農水省から海外農業事業者向けのセミナーや視察旅行の案内などをメールでいただくようになりました。

 2018年の農水省メールの中に有機JAS認証取得費用の補助金の案内があったので、お金が出るならと割と気軽に応募してみました。色々やり取りした結果採択になったので、真剣に取り組まざるを得ない状況になってしまいました。

 カンボジアの農園まで来て現地審査してもらえる認定機関なんてあるのかな? と探したところ、1件福岡市の認定機関で海外審査していただけるとのことだったので、お願いをしました。

 審査料金を前払した後、認定機関さんの方から、現地審査前に大量の資料作成をするよう指示が来ました。

 質・量共に大変な内容なので半分後悔しましたが、後の祭り。大枚の審査費用を無駄にできないし、農水省の手前もありますので、作るしかありません。

(資料の例)

農園地図 概要図と詳細地図(隣との境界含めてメートル単位のサイズ付き) 全農地、倉庫、作業場
生産行程管理記録 耕作、播種、除草、施肥、収穫等の作業日付、数量、使用した農機具記録。全部の農地について4年以上分を整理。
農機具洗浄記録 鋤、シャベル、籠、はしご、各種作業機械、等々全部です。
種、肥料の入手記録、肥料の有機証明を取得。…等々

 2018年12月、2019年1月は、昼間農園で汗を流してから毎晩眠気と戦いながら、過去の記録をひっくり返しながら資料作成です。何しろ現地の日本人は私1人ですので、半分泣き!という感じで、折角作った資料を認定機関に送ると、ダメ出しの嵐で心折れそうになります。

 何とか資料の形を付けて、2月初旬に福岡から審査員さんを首都のプノンペン空港に出迎えました。夕刻にプノンペンからカンポット州まで約150kmをタクシーで戻ろうとしましたが、旧正月休みでタクシーがいない! 仕方がないので、普通は数km程度しか乗らないトゥクトゥクを無理やり雇って150km走破しました。オープンカー状態なので、到着時には道路の土埃で全身ドロドロです。

 翌日から、農地や加工場などの現地審査です。事前に提出した地図を手に土地の形、サイズ、農園内部の状況、隣との境界でドリフトがないか、農具は事前申請通りか、等々を1週間かけて細かくチェックされました。連日35℃以上の暑さの為、真冬の日本から来た審査員さんもグッタリ。

 やはりというか、事前作成の地図が不充分だったので、現場で大汗をカキながら数百メートルの距離を何度も測り直して修正作業です。

 最後にやっと有機JAS行程管理者用の講習も終わり、これで終了!と ヌカ喜びしたところで宿題が出ました。農園で使っている井戸水が「飲料適」である証明がないとダメとのこと。

 審査員さんを日本にお帰しした後、「カンボジアで水質検査してくれる検査機関なんてあるのかな?」と思いながらも、プノンペンの端まで行って探し出して、何とか検査を終わらせました。

 結局、2019年3月初旬にやっと有機JAS認証書が届きました。

 そのあとに農水省の補助金申請ですが、独特の申請書の書き方に苦戦して2回差し戻しの末、最後は先方があきらめて、1行ずつ書き方を教えて頂きました。

 このように紆余曲折ありましたが、カンポットペッパー協会に確認したところ、カンポットペッパー農園で最初の有機JAS認証とのことです。

 何事も最初にやるのは大変ですね。

黒生姜(ブラックジンジャー)の飲み方

 黒生姜(ブラックジンジャー)は、タイでは古くから滋養強壮剤として珍重されてきましたが、代表的な飲み方は、以下のようなものです。

◆飲み方1:煎じて飲む

 タイの最も伝統的な飲み方です。

 1リットルの水に数片の黒生姜ドライチップを入れて煎じます。少なくとも2時間、できればあと2時間くらい水を足しながら、黒生姜ドライチップが沢庵の硬さになるまで煮ます。

 これを煎じたものを飲みますが、できればドライチップも一緒に食べると効果覿面です。

 但し、「良薬は口に苦し」でかなり苦いので、ハチミツ、甘味料などを入れると飲みやすくなります。

 黒生姜の主成分ポリメトキシフラボノイドは、この苦味に入っているため、苦味成分が無いと効果がありません。(写真は黒生姜を煎じたものと黒生姜ドライチップ)

◆飲み方2:お酒に漬ける

 焼酎(ホワトリカー)5kg、黒生姜ドライチップ1kg、ハチミツ1kgを一緒にして1週間漬け込みます。

 黒生姜特有の苦みが無くなり、かなり美味しく有効成分を摂ることができます。

◆飲み方3:黒生姜ドライチップをパウダーにして熱湯に溶かす。

 最も手軽に摂るためには、黒生姜パウダーを熱湯で溶かせば、すぐに効果的に飲むことができます。

 1リットルの熱湯に小さじ半分を入れて5分間冷めるまで待つだけです。

 但し、苦いので甘味料を入れて頂くか、飲みやすくなるまで濃度を調整してください。

 黒生姜(ブラックジンジャー)の多くの有効成分を丸ごと摂ることができます。

(弊社もこのパウダーをご提供しています)

◆その他の飲み方 

「良薬は口に苦し」を克服するため、ビールに入れたり、黒酢に漬けたりという試みもあります。試作サンプルもありますので、ご興味があればお問い合わせください。

カンポットペッパーは今収穫の最盛期です。

 カンポットペッパーは、例年3月から5月の乾季の真最中が収穫時期です。

 前年の天候によって胡椒の実が熟す時期が数か月ずれる年もありますが、今年は3月中旬から十分に熟して例年通りに収穫が始まりました。

 3月には地元のカンポット州、ケップ州でも新型コロナの感染者が出始めたため、日雇いワーカーも大量に雇って特に収穫作業を急ぎました。病気が蔓延して作業が止まると、熟した胡椒の実が木から落ちて無駄になってしまうので、熟した実をタイムリーに摘んでしまう必要があるからです。

 収穫の手順は以下のとおりです。

  • 手で熟した房を摘み取る。熟した房のみを摘み取り、未熟なものは熟すまで待ち、2巡目の収穫作業で摘み取ります。

  • 同じ房に赤、黄色・橙色、緑の実が付いているので、赤と黄色・橙色の実を1粒ずつ手作業で取り外して分ける。赤の実はカンポットペッパー特有の赤胡椒に、黄色・橙色の実は皮を剥いて白胡椒にそれぞれします。
  • 房に残った緑の実を足で踏んだり、分離機を使ったりして房から外す。これは黒胡椒になります。(下は分離機の様子)
  • 赤、緑の実は一旦煮て天日乾燥させます。黄色・橙色の実は煮た後皮を剥いてやはり天日乾燥させます。雨が降って十分乾燥できない場合は、乾燥機で乾燥させます。
  • 十分乾燥した実は、更に1粒ずつ手作業で1級から3級に選別します。十分な大きさ、色、形、香りをもつものだけを1級品として、「カンポットペッパー」のブランドで出荷します。選別中には、時々農協にあたるカンポットペッパー協会の会長も、自らうちの農園に顔を出して正しく選別が行われているかチェックします。

 幸いなことに、新型コロナで中断も無く一巡目の収穫が4月一杯で終わりました。今後2巡目の収穫作業に入っていきます。

黒生姜(ブラックジンジャー)の「痩せる」成分特許

 先回の黒生姜(ブラックジンジャー)のご紹介の記事で、日本の大手サプリ原料メーカーが

 「痩せる」主成分ポリメトキシフラボノイドについての特許を取っているお話をしました。

 今回は、具体的なその特許の例をご紹介します。

 以下の記事は、弊社も黒生姜(ブラックジンジャー)を納入している、丸善製薬様の特許についての新聞記事です。

 「黒生姜抽出成分のポリメトキシフラボノイドに、脂肪分解(特許5863721号)、筋肉疾患予防、治療および筋機能改善 特許(特許5903191号、特許5931309号)を取得。」とのこと。効果が科学的に検証されています。

 お聞きしたところでは、タイの山奥の少数民族の間で、「1日山歩きをしても、黒生姜を飲めば疲れない」という話を聞いて、タイの大学がそれを実証する研究をして検証事例を積み上げ、そこに日本の製薬会社が加わって、このような特許につながったとのことです。

黒生姜(ブラックジンジャー)とは

 黒生姜(ブラックジンジャー)は、生姜やウコンの仲間で、元々タイやカンボジアの山奥に自生した野生種でした。

 この塊根を地元の少数民族(モン族)が煎じて飲んだところ、1日山歩きをしても疲れない、ということがわかり、タイでは数百年前から「クラチャイダム」と言われて、珍重されてきました。

 山歩きをしても疲れないのは、アミノ酸(アルギニン)をたっぷり含んで疲労回復効果があるだけでなく、脂肪を筋肉に変える効果もあるためです。

 その為、痩せる効果もあります。

 主な効能は、

  • 強精・強壮効果(アルギニンをマカの2倍含む)
  • 痩せる効果

 日本の大手サプリ原料メーカー数社が、各々痩せる効果のあるポリメトキシフラボノイド類を抽出して、特許を取得しています

  • アンチエイジング効果

 冷え性・むくみ改善作用,筋肉増強作用による歩行障害改善,抗疲労作用など、同じくポリメトキシフラボノイドによるもの。

 これからの日本社会に非常に役に立つ農産物ですね。

 ここ数年、抽出されたポリメトキシフラボノイドが、大手サプリメーカーのサプリの成分として使われたり、塊根を乾燥パウダーにして錠剤として販売される商品が増えてきました。

 

カンボジアの農産品のウンチク(その3)

■カンボジアの胡椒(カンポット・ペッパー)の赤、白、黒胡椒

  前回までカンボジア内戦前の1960年代までは、世界的ブランドであったカンボジアの胡椒が内戦終了後21世紀になって復活してきた歴史や、特徴についてお話しました。

 今回は、赤、白、黒胡椒の違いに焦点を当ててお話しします。

 実は、赤、白、黒の3種類の乾燥胡椒は、全て同じ木の同じ房から取れます。同じ房で赤い実は赤胡椒になり、黄色や橙色の実は皮を剥いて白胡椒に、緑色の実は黒胡椒になります。右下の収穫後の多くの房の写真に、赤、黄、橙、緑の実が見えます。

赤、白、黒になる実が混在した房から、1粒ずつ手作業で実をより分けます。

 1.カンボジアにしかない赤胡椒

 フランス人が植民地であったカンボジアの胡椒で、赤い実が独特の「旨味」を持つことを発見し、黒胡椒から赤い実だけを集めて珍重しました。

全体の10%程度しかできないので、現在もパリでも最高値で売られています。

通常日本で「赤胡椒」や「ピンクペッパー」と言われているものは、西洋ナナカマドの仲間で、胡椒とは味と香りが異なります。

 2.白胡椒

 黄色、橙色の実は、暫く水に浸けて皮をふやかしてから手作業で皮を剥き、白い種だけにしたもので、種の純粋な辛味が特徴です。他の色の実は皮を無理に剥いても皮が一部種にくっ付いてしまい、きれいな白色になりません。

 3.黒胡椒 

 定番ですが、種と皮の両方の味と香りが絡まって、複雑な味わいを楽しめます。

 収穫・乾燥後に手作業で1粒1粒、1級から3級に選別します。カンポット・ペッパー協会(現地農協にあたる)で決められた、大きさ、色、形でないと1級品にならず、カンポット・ペッパーのブランドでは出荷できません。

 他の黒胡椒と比べて頂くと、味・香りだけでなく外見にも違いが出てきます。

カンボジアも非常事態

新型コロナウイルスで日本も危機に直面していますが、カンボジアも非常事態です。

3月30日には、事実上の国境封鎖で外人の入国ができなくなりました。

カンボジアの生活必需品の多くが、隣国のタイ、ベトナムからきていますが、荷動きが悪くなり、生活用品が高騰しています。

海外へのフライトも大半キャンセルとなり、日本に帰れるほぼ唯一のANA便も数が激減してチケットが高騰したため、多くの邦人が帰国を断念しました。

海外フライトがほぼ無くなったため航空貨物も飛べず、弊社が予定していた航空便(郵便のEMS)での出荷がストップして、船便に切り替えました。

このため、日本のお客様へのお届けが大幅に遅れています。

更に4月10日零時から、16日24時まで,プノンペン都と他州間の移動,州内の市,郡等の行政区画内の移動を禁止(一部例外条件あり)する政府命令が出ました。

これは、例年この時期にカンボジア正月で多くの人の帰省による大移動が起こりますが、それによるコロナウイルスの拡散・感染爆発を防ぐ狙いです。

それにしても、カンボジア人たちは何があっても年2回のカンボジア正月とカンボジアお盆には、仕事を放り出して帰省していましたから、前代未聞の事態と言わざるを得ません。

カンボジア農産品のウンチク(その2)

カンボジアの胡椒(カンポット・ペッパー)の特徴

 前回は、カンボジア内戦前の1960年代までは、世界的ブランドであったカンボジアの胡椒が内戦終了後21世紀になって復活してきた歴史についてお話ししました。 現在もパリの一流レストランやスパイス専門店で高級品として扱われていますが、他にない特徴がいくつかあります。

1.カンボジアにしかない赤胡椒

 フランス人が植民地であったカンボジアの胡椒で、赤い実が独特の「旨味」を持つことを発見し、黒胡椒から赤い実だけを集めて珍重しました。 通常日本で「赤胡椒」や「ピンクペッパー」と言われているものは、西洋ナナカマドの仲間で、胡椒とは味と香りが異なります。

 因みに、乾燥胡椒は赤、白、黒の3種類ありますが、全て同じ木の同じ房になります。同じ房からこれら3種類を1粒1粒手作業でより分けて作ります。

2.クメール種

 カンボジアのカンポット州で栽培される胡椒は、「クメール種」という種類で、日本で通常使われるインド、スリランカ産の「インド種」、マレーシア、ベトナムの「マレー種」に比べて、病気に弱く、育ちが遅く、収量も少ないという特徴があります。

 悪いことだらけですが、唯一味と香りに優れている、という良さを持っています。辛味成分は他より平均20%多いといわれています。

3.100年前からの栽培方法を守る完全有機栽培

 現地の農協にあたる「カンポット・ペッパー協会」は100年前からの栽培法を厳格に踏襲するガイドラインを決め、それに従う農園だけに「カンポット・ペッパー」ブランドを許しています。 「カンポット・ペッパー」はWTOのGI(地域特産品)ブランドで、フランスのボルドー地方の特産品「ボルドーワイン」と同様、この地域限定ブランドです。

 100年前には化学肥料もなかったので、完全有機栽培であり、肥料は牛糞、こうもり糞、牛骨粉、カニ殻などです。除草剤も使えないので、全て人手の作業です。カンボジア胡椒が味と香りにこだわり、困難な完全有機栽培にこだわっていることが見て取れます。

※20193月 シーダーアグリビジネスは、カンボジアでは初めて日本の有機JAS認証を取得しました。

カンボジア農産品のウンチク(その1)

■ 実は1960年代は世界的ブランドであった、カンボジアの胡椒

 日本とカンボジアの繋がりは古く戦国時代に遡る。16世紀には、プノンペンには日本人町があった。勿論、カンボジアだけではなく、安南(ベトナム)の順化(フエ)、シャム(タイ)のアユタア、マラッカ、ジャカルタ、モルッカ緒等の東南アジアには日本人が住んでいたのである。

  1887年フランス領インドシナが成立し、フランスの植民地であったカンボジア及びベトナムでは20世紀に入り、良質の胡椒が栽培され、フランス始め欧州各国に輸出されていた。特にカンボジアのカンポット州産の胡椒は、「カンポット・ペッパー」と呼ばれ、最高級品としてパリの高級レストランで使われていた。

  1960年代のカンボジアの胡椒の総生産量は、約1万5千トンであった。(因みに日本全体の胡椒輸入量は年間8千トン)

 ところがその後、1975年(昭和50年)のポルポトによるカンボジア統治が始まり、虐殺及び極端な共産化政策により、カンポット州だけではなく、カンボジア全土の胡椒生産は壊滅してしまった。  

 平成3年(1991年)のパリ和平協定により、やっと内戦が収まり、農業に従事する国民がカンボジアに戻ってき出した。1990年代後半には、生き残っていた昔の職人の指導の下、胡椒の生産が再開されたが、その時には既に、「カンボジア産高級胡椒」というブランドは、過去のものとなっていたのである。

 しかしながら、その後の努力により、2008年(平成20年)にはWTOのGI(地理的表示)を取得して世界的な地域ブランドとして認められ、我々のような外資も参入し生産が拡大しつつある。(GIとは世界貿易機関(WTO)協定に基づく一種の知的財産。製法や品質基準などを満たした特定産地の農水産物に、産地名を付けてブランド化し、他の農産物との差別化を図る。ワインの「ボルドー」がその一例。)

  TIME誌(2012年1月16日)は復活を祝い「普通の胡椒はテーブルワイン、カンポット・ペッパーは上質のボルドーワイン」と述べている。

その後、年々生産量が増加し、昨年度には100トン以上となり、パリの一流レストランやスパイス専門店にも復活してきているが、まだまだ昔の栄光を取り戻す道の途中である。