2014年5月14日
Kratie州の弊社のキャッサバ・プランテーションでは、キャッサバの苗用に蓄えていた茎を食い荒らしていた害虫によって、茎の山の内側は下の写真のように養分を吸い取られて抜け殻になり、黒死しています。
キャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれるメーリーバグ(Cassava Mealybug、日本名 粉カイガラムシ)と判明した翌日、この茎を売ったC社の専門家D氏と現地に入りました。
私 「病気はメーリーバグだけですか? どう対処すればいいんですか?」
専門家D氏 「メーリーバグと他に2種類ある。 死んでいるのと、白い粉(卵)がかかっているのは焼くかないし、あとはこの薬を使ってください。」
私 (心中)「どう見ても100%近くの被害はメーリーバグだけの様なので、他の2種類は問題なのか? 白い粉がかかっているのを全部焼くとしたら、ほとんど全部焼くことになる。白い粉は洗えば取れるのに変だ。」
ということで、D氏はあまり信用できず、まともな専門家の診断が聞きたいと強く思いました。
並行して、カンボジアの農作物の病気の専門家として有名なT氏も呼んでおり、現地にその翌朝到着しました。
専門家T氏 「主にメーリーバグですね。その他の病気もあるけどこの際問題にはなりません。」
「まず茎を3種類に分けてください。①元気なもの(白い粉がかかっていても葉が勢いよく伸びているもの)、③死んだか死にそうなもの、②中間のもの。 この②中間のものは半分程度は回復して使えますよ。」
ということで、やっとまともな専門家に出会いました。
T氏と議論して以下の対応策を決めました。
1.茎をT氏の言う通り3種類に分ける。
2.①元気なものと、②中間のものは、先ず洗剤で洗って虫と卵を洗い落とす。
3.③死んだまたは死にそうなものは、焼却する。
4.①元気なものと、②中間のものは、洗ったあとに、殺菌剤+殺虫剤+肥料その他を混ぜた薬を万遍なく無くスプレーする。
5.①元気なものは、薬のスプレー後すぐに苗として植えることができる。
6.②中間のものは、最長2週間、3-5日おきに上記の薬をスプレーしながら様子をみる。回復してきたら苗として植えられる。回復したかどうかは白い粉が集中して付着している芽の部分の回復で判断する。
以下の写真は、②中間のもので、白矢印の芽のところに白い粉(卵)が集中的に付着しています。
被害の規模? 大損害には間違いありませんが、被害規模の特定には先ず①、②、③に仕分けしなければ分かりませんので、兎に角、作業に取り掛からなければ。
早速その日の午後から、ワーカー30人がかりで茎の選別、洗浄、殺菌・殺虫作業が始まりました。
ワーカーが、仕分けして茎の束を運んでいます。写真の左にいるのはアシスタントマネージャーで、仕分けを指揮しています。(こんな時に冗談を言っている場合ではないのですが、年齢・体型と命令するときのしぐさが北朝鮮の最高指導者そっくりなので、私は彼をキム・ジョンウンと呼んでいます。)
以下は洗浄の様子です。
1時間ほどすると、洗浄用プールが以下のような泡とメーリーバグの卵でいっぱいになりました。
こんな状態でも、キム・ジョンウン君はなおもこの洗浄液を使おうとするので、すぐに洗浄液を取り替えさせました。
こんな卵でいっぱいの洗浄液では逆に卵を茎に付着させているようなものなので。
次に、薬をスプレーします。
因みに、スプレーした薬(殺菌剤+殺虫剤+肥料その他)は以下のような毒々しいものです。
私も丸2日間40℃の炎天下、頭から滝の汗をかぶって作業に張り着いて指示を出しました。この作業に万が一にも不十分な点があるとメーリーバグの被害を抑えきれないので必死です。
そして3日目に悲しい作業です。死んだまたは死にかけの茎を焼却するのです。遥々タイから多収量品種を高いお金で買い、35トントラック10台以上で必死に運んだ虎の子に自ら火をかけなければなりません。
しかしながら、焼かなければ一部生き残っているメーリーバグがここからまた蔓延する恐れがあります。
上の写真のような茎の山を10山ほど焼きました。(涙)
お陰様で、このように緊急対応は何とか終わりましたが、まだ終戦処理は一杯残っています。虎の子の茎に火をかけて落ち込んでいる暇はなく、善後策の真っ最中ですが、この様子は次回に報告します。