天然ゴム農園の雨季の悩み

2014年8月5日

前回の記事に引き続いて、天然ゴム農園の記事を書きます。

カンボジアは5月から本格的な雨季に入り、現在は雨季の真っ盛りです。天然ゴムの樹液採取(タッピング)のためには、雨で十分な樹液ができることが必要なので、本来は雨季の雨が欠かせないのですが、一方で都合の悪いこともあります。

その一つは、雨が降り過ぎてタッピングができない時があることです。
(タッピングの様子)

先ず、タッピングは樹皮を傷つけて樹液を出させる行為ですが、樹皮を傷つけるときには樹皮は乾いている必要があります。タッピングでは、樹液が取れる必要最小限に樹皮に傷を入れますが、樹皮が濡れているとそれが上手く行かず樹皮が壊れてしまうのです。

従って、雨が止んで1-2時間して樹皮が乾いてからタッピングをすることになりますが、雨が降る時間が長いと中々樹皮が乾いてくれずにタッピングができません。

また、激しい雨が降ると樹液を受け取る皿に雨水が入って樹液をはじき出してしまいます。
下の写真は、皿に樹液が入らずに雨水が入ってしまったものです。

このように、毎年雨季の盛りになるとタッピングが中々できずに収穫量にインパクトがでてきます。
昨年の9月中旬は特にひどく、週に3日程度しかタッピングができませんでした。1日タッピングできないと200-300ドルの損失になります。

そこで、私は当時の現場マネージャーのウドム君とサブマネージャーのチャンラ―君と話をしました。
私 「週3日しかタッピングができずに、売り上げがガタ落ちになっている。何か対策はないのか?」
ウドム、チャンラ―「雨が降っているから当然です。」
私 「雨が降っているからタッピングができないというのはおかしい。何か工夫をすべきだ。」

しかし、彼らは雨が降っているからできないの一点張りで、思考が停止して全く工夫をしようとはしません。
やはり、カンボジア人は日本人と違い、「カイゼン」といった様な考え方は全く経験しておらずわからないのです。

それで、私の方で調べた結果、スリランカのような特に雨が多い地方では下の資料のようなレインガードを付けていることが分かりました。

特に、最近はエプロンタイプで、タッピングする場所と皿を覆ってしまうのが主流のようです。
そこで、早速最寄りのSnoulのダウンタウンの市場でビニール、ゴム糊、針金を買ってきて下の写真のようなレインガードを取り付けました。

結果はやはり歴然で、これを取り付けた木では大雨でもタッピングが可能になり、レインガードをつけている木では収穫の無い日が激減しました。

ところが、良いことだけではありません。レインガードは1つ当たり約0.6ドル掛かります。従ってタッピングしている12,000本に全て取り付けると7,200ドルも必要で、利益が飛んでしまいます。
そこで、昨年は全体の40%付けるに留まりました。

今年も雨季の盛りになって、レインガードを増やすかどうかの議論になりました。
今年から天然ゴム農園のマネージャーをやっているチャンラ―君から意外な意見が出ました。「昨年取り付けたエプロン型のレインガードは今年は役に立たない。」というのです。

彼の説明によると、取り付けて1年経つとゴム糊で木とビニールを接続した部分(下の写真の白矢印)から水が漏れてレインガードの中に入ってしまい、タッピングをする黄色の矢印の部分が濡れて中々乾かず、タッピングができないと言うのです。

確かに、水が漏れてレインガードに入ってしまえば、ビニールに覆われているだけに逆に容易には乾きません。
そこで、今年はこの方式のレインガードを増やすのではなく、下の写真のようなタイプのレインガードを増やすことにしました。

このレインガードは直接雨を防ぐわけではなく、タッピングポイントや皿は雨にさらされて濡れたり、水が溜まったりするのですが、木の上部から木を伝って下方に流れてくる水がタッピングポイントに来るのを防ぎ、雨が止んだ後にタッピングポイントがすぐに乾くようにするのが目的です。

熱帯の雨はスコールと言われる、バケツをひっくり返したような雨が1-2時間集中的に降って後は止んでしまうものが多いのです。従って雨が止んだ後にタッピングポイントがすぐ乾けば、タッピングが出来ることになります。

また、このタイプは1つ当たり1/4ドルと安いので、大量の取り付けが可能です。
今年は、このタイプを取り付けますが、これでどこまで効果が出るのか検証していきます。

雨季の盛りの悩みには中々決定的な解決策が無く、試行錯誤の連続です。