2015年1月15日
カンボジア東部クラチェ州スノール郡にある弊社の天然ゴム農園は、2011年の運営開始以来天然ゴム価格の暴落に悩まされてきました。価格が3年間下落し続け、ピーク時の1/4になりました。
これが昨年10月に底打ちして若干上向きになり、やっと一息ついたと思っていたら、今度は交通事故が起きてしまいました。
1月4日に天然ゴム農園のマネージャーのC君から、「前日に交通事故が起きて、天然ゴム農園のワーカーが巻き込まれた。ワーカーは無事だが、相手は生死がはっきりしない状態。ワーカーが運転していたオート三輪が警察に差し押さえられて、収穫したゴムの樹液が運べない。」という連絡がメールで入りました。
私は、驚いてすぐにC君に電話を入れて状況を確認しようとしましたが、
C君は「 ワーカーが収穫したゴムの樹液をゴム工場に運んだ帰り路に交通事故に会った。運転していたオート三輪が警察に持って行かれて、明日からゴムの樹液が運べない。警察がいつオート三輪を返すかわからない。至急運搬用にバイクを買いたい。バイクを買っていいですか?」
「バイクを買って良いですか?」と繰り返すばかりで要領を得ません。
事故の状況を確認したいのに、ゴム樹液運搬用バイクを買う話になってしまっています。
確かに、毎日収穫したゴムの樹液をその日に工場に持って行って販売しているので、折角収穫しても工場に持って行けなければ売ることができず大損害です。
私は、取りあえずC君に「わかった。まずどこかで運搬用のバイクを借りられないかを探してみて、もし借りられなければ買ってもいいから。 ただ、先ず事故の原因を整理して報告してください。また、事故の現場や相手の状況の写真を送ってください。」と話しました。
翌日、C君から事故の原因報告と現場状況の写真を送ってきました。
写真では、Aのオート三輪がセンターラインを越えて自転車に追突したことを表しています。事故の原因は明らかに弊社のワーカーのオート三輪にあります。
最初生死がはっきりしないと言っていた事故の相手は、頭を打って気を失っていたが、幸いなことに気が付いて頭と手に怪我をして病院のベッドで寝ていました。
軽傷とは言えないが、命に別状があるとまでは言えない程度の様です。写真を見て一先ずほっとしましたが、問題はオート三輪を運転していたワーカーが何故センターラインを超えたのかです。
再び、C君に電話を入れて、居眠り運転だったかどうかを確認しました。
C君「居眠りです。運転していたワーカーは、午前3時からにタッピング(樹液採取作業)をした後、疲れて寝不足の状態で運転したんです。」
私「それじゃあ、マネージャーの君の責任じゃないか。なぜ、そんな危険なことをさせたの?」
ゴムのタッピング(樹液採取)は、まだ陽の出ない早朝から行われます。陽が出ると樹液の出が悪くなるためですが、暗いうちからのきつい作業なので疲れがたまりやすくなります。
一方、ゴム樹液の運搬は20km以上を運ばなければならないので、疲れていると居眠り運転になりやすくなります。そこで、運転するワーカーの疲労度合を確認して、無理な場合は早朝タッピングをしていないワーカーに運転させる必要があります。
C君「オート三輪はもう警察から返ってきました。でも、事故の相手に賠償金600ドルを払わないと、また取り上げられてしまいます。ワーカーには支払い能力がないので、会社が賠償金を払ってください。」
こちらのワーカーに事故の直接の責任があるし、増してマネージャー(会社側)がしっかりワーカーを管理できていなかった責任があるので、賠償金を払うのは仕方ありません。
しかし、ここであっさり支払ってしまったのでは、C 君が問題点をハッキリ認識しないままで終わってしまう恐れがあります。
そこで、私「マネージャーとして、再びワーカーが交通事故を起こさない方策を考えて報告してください。そうしないと、賠償金は支払わないよ。」
その翌日、C君は再発防止策を簡単にまとめてメールしてきました。彼が今後ワーカーの居眠り運転を無くすように管理しようと考えているようなので、賠償金の支払いを許可して一件落着となりました。
新年早々から事故が起こり、幸先の悪いスタートになってしまいましたが、不幸中の幸いで大事には至らず、逆に組織としての問題点が浮かんで、私も反省する機会を持つことになりました。
災いを転じて福として行きたいと思います。