2015年2月16日
先日の記事(今年の野菜作り)で述べましたように、今年は収穫販売までに長期間かかる天然ゴム、胡椒、キャッサバなどに加えて、日銭の稼げる野菜にも力を入れていきます。
カンボジアでは、乾季の中心となる 2-3か月間はほとんど雨が降りません。そのためその時期には市場に出荷される野菜が極端に少なくなり、値段も上がります。 野菜でコンスタントに日銭を稼ぐためには、年間を通じて野菜を作って出荷する体制を作る必要があります。
特に、野菜畑を作るカンポット州の土地では、乾季には極端に雨が少なくなりますので、何らかの方法で水を確保する必要があります。
最初にトライしたのは、溜池による地下水の利用です。我々の農園の隣は水田ですが、周囲に比べて特に低くなっていて地下水が溜り易い地形になっています。そこで、その場所に溜池を掘れば地下水が湧きだすのではないかと考えました。
隣の水田のオーナーにお願いして、試に少し掘らせてもらいました。
果たして、ほんの3mばかり掘ったところで上の写真のように、地下水が湧きだしました。地下2mの所に粘土層があって地下水が大量にその上に溜まっているのです。
ここに10m四方ほどの溜池を4m位の深さで掘れば、十分な地下水が利用できることが分かりました。
そこで、隣の水田のオーナーにこの土地を使わせてもらうように交渉しました。しかし「この土地を買わなければ使わせない」とのことでしたので、非常に小さい土地ということもあり、買うことにしました。
土地買収のために、お金を用意してオーナーに土地の権利証を見せてもらうように依頼しました。ところが、オーナーからは「土地の権利証は借金の担保として銀行に渡してある」とのことです。
カンボジアの農家は土地があると、それを担保に銀行から返済が困難な金額のお金を借りて、車などを買うケースが非常に多く、返済できずに土地を失う事例が多発しています。
カンボジア人は、先のことを考えずに目先の大金に飛びつく人が多いので、多くは中華系の銀行の餌食になってしまいます。この水田のオーナーもそんなケースかと思いながら、銀行に行って、オーナーに土地代を支払うために、土地の権利証を確認させてくれるように頼みました。
ところが、意外なことに銀行の答えはノーです。実は借金の担保にはこの土地だけではなく、何枚かの権利証もまとめて預けてあるとのことで、この土地の権利証1枚だけを単独で扱うことはできない、とのことでした。
つまり、この土地の土地代だけをオーナーに支払っても、銀行からの借金全ては返済できないので、銀行はこの土地だけを分離してその分の借金だけを返済することには応じられない、ということでした。
仕方ありません。折角水の在り処が分かったのに、指をくわえて諦めるしかありません。
次に、我々の農園内で、地下水の湧く水田の近くを試し掘りしました。すぐ近くなので水が湧くかもしれないと考えたのです。結果は下の写真のようにNGでした。
同じように地下2mの所に粘土層があって、地下水が少し溜まってはいるのですが、隣の水田よりも高いために十分な量が湧きません。これもダメです。
次は最後の手段です。井戸を掘ることにしました。カンボジアではほとんどの場所ではある程度の深さまで掘ると地下水脈に当たると言われています。そこで、井戸業者を呼んで先程掘った池の近くを調べてもらい、井戸で水が得られるかどうかを確認しました。
井戸業者の調査結果は水が出そうとのことだったので、井戸を掘ってもらいました。下の写真のように50m掘ったところで地下水脈にあたりました。青いビニールパイプが井戸の出口です。
これでやっと念願の水の確保に成功です。
さて、深く掘れば大抵の場所から水が出るならば、なぜ最初から井戸を掘らないかについては2つの理由があります。
第一に、井戸を掘っても水を汲み上げるためにはポンプを動かすことが必要で、そのためにはポンプ用の電気を起こすために発電機用のディーゼルオイルが必要となります。もし溜池を掘っただけで水が確保できるならば、井戸用ポンプのディーゼルオイルの費用が削減できるので、その方が良いのです。
第二に、カンボジアでは多くの井戸水はヒ素を含んでいます。そのため井戸水を直接作物にやることはできません。一旦溜池に溜めて、ヒ素を沈澱させる必要があります。
従って、井戸があっても溜池が必要なのです。逆に言うと溜池を掘っただけで地下水が利用できれば、井戸を掘る必要がありません。そこで先に溜池にトライしたと言うわけです。
野菜農園作りは、水の確保も試行錯誤の連続です。