2015年11月1日
前回の記事の続きです。
2011年からの天然ゴムの大暴落によって、ついに10月初めに近隣のカンボジアの天然ゴム加工工場も操業をストップし、我々の農園も採れた樹液の売り先が無くなってしまう事態になりました。
天然ゴム価格がもう少し下がっても、天然ゴム農園自体は低コストのお蔭でやっていけると高をくくっていただけに、不意打ちを食らった形になり、一瞬どうしたものかと途方に暮れました。
しかし、混乱して悩んでいる暇はなく、明日からどうするのかを決める必要があります。天然ゴム農園の操業をこのままの形で進めるわけにはいかず、何かの対応が必要です。
その時に先ず考えたのは、最悪どうなってしまうのか?ということです。
このまま長期間工場が止まるのであれば、我々の農園運営も止めざるを得ません。
しかし、常識的に考えてみると、天然ゴム生産国の中で最も生産コストの安いカンボジアで生産できなくなるとすると、一体どこで生産できるのか?世界中どこも天然ゴムを作らない、などという事態は起こるはずがない。
従って、やはりそれほど時間が経たずに工場も再開されるのではないか、というのが結論でした。
そうすると、次に問題なのは、一体いつまでこの低価格が続いて工場が止まり続けるのか?という点です。
天然ゴム価格が大きく影響を受ける中国の景気も、今年年末あたりから景気対策効果が少しは出てきそうに見えます。
また、天然ゴムは例年1月が生産ピークですが、その後乾季の為に生産が落ち2月以降価格が上がるのが常です。
その様に考えると、少なくとも例年乾季明けに主産地の生産が再開される4月には、カンボジアでも工場が再開されると予想できます。
その場合、我々の農園の取る対応としては、農園の操業を停止して従業員の大半を解雇して冬籠りに入り、来年の春に再び従業員を集めて操業再開する、ということになります。その場合でも毎月幾分かの費用は掛かりますが、耐えられない程度ではありません。
これが、起こりうる最悪のシナリオということになります。
ここまで考えて腹をくくると、落ち着いて状況を分析出来るようになりました。もうそれ以上悪い事にはならないはずなので、後はもっと状況を詳細に把握して少しでも良い方向に持って行くだけです。
そこで、最悪にまでは至らない、来年乾季明けまで操業停止しなくてすむ別のシナリオは無いのか?を探りました。
1つの案は、操業停止せずに、採集した樹液を固体化して保存しておき、工場が再開した時点で売ると言うことです。
将来売る時点で多少の利益が出ますが、仮に来年4月まで従業員を抱えて収入が入って来ないとすると、それまで負担に耐えられません。
2つ目は、近隣のカンボジアの工場は停止してしまったが、農園から8kmにあるベトナムの工場はどうか?
カンボジアの工場は、ベトナム経由でゴムを売るケースが多いので効率が悪く利益が出にくいのですが、ベトナムの工場は操業しているのではないか?
そこで、私は農園マネージャーのC君をべトナム国境に情報収集に行かせることにしました。
農園の方は、情報が集まるまで数日間は固形化ゴムを作って貯蔵する作業をすることにしました。
果たして、ベトナムの工場はいくつも稼働していました。価格も操業停止前のカンボジアの工場以上でした。
しかし、ベトナムに輸出する際に国境で、カンボジア側の役人からかなりの手数料を取られるとのことでした。
何とかならないのか?という時に、耳よりな情報が得られました。
ベトナムの工場が、カンボジアまでゴムの買い出しに来てくれる、値段もまともです。国境の役人に特別なコネがあるようです。
但し、売り方は樹液をそのままではなく、樹液に蟻酸を加えて若干固めた状態にして売ります。
我々は、プチュンバン(カンボジアお盆)明けの10月14日から、このベトナム工場に売ることにしました。
ベトナム工場からの買い付け部隊が、我々の農園にも来てくれました。(下は売るときの重量測定と、それを見る買い付けのおばさん(下の写真右))
これでやっと一安心です。天然ゴム農園の操業を止めずに、毎月ある程度の利益を出して行ける目途が立ったと思われました。
しかし、11月に入ってそれが甘かったことを思い知らされました。
(長くなったので、次回に続きます)