天然ゴム農園もついにストップ!?

2015年11月1日

昨年来何回か天然ゴムの国際価格について記事にしてきました。

2011年初めに天井を付けて以来延々と暴落を続け、今年始めには天井から1/4にまで下がっていました。そろそろ底かというというところで、果たして今年前半の上海株の暴騰(その後暴落)であふれた資金が天然ゴム市場にまで流れ込んで来て、天然ゴム価格も一旦は上昇基調となりました。


ところが、それも束の間、ご案内のように上海株のバブルがはじけると、天然ゴムに流れ込んでいた資金も引き揚げられて、天然ゴムも再び暴落となってしまいました。
(下のシンガポールゴム先物市場のグラフの赤丸部分)

この再暴落で、我々の天然ゴム農園も大きな影響を受けました。
昨年までの暴落で、主産地のタイ、マレーシアでは生産価格を割って生産に支障をきたしていますが、カンボジアは人件費等が極めて低いために黒字の状態でした。

そこで、我々も農園を維持しながら、売値の戻りを待っていましたが、再暴落で異変が起きました。
10月の初めになって、我々が天然ゴムの樹液を売っていた工場が次々と操業を中止したのです。天然ゴムの価格が下がって工場が稼働できない状態になってしまったのです。

思ってもいない事態でした。売り先の工場が無くては、天然ゴムの生産が出来ません。
天然ゴム農園の方は、もう少し価格が下がってもやっていけるので、当面問題ないと思っていたのですが、不意を突かれました。

対応案は以下の2つしかありません。
1つは、タッピング(樹液採集)を続けるが、樹液を乾かして固形化して蓄えておいて、工場の操業が再開されたタイミングで売ることです。(今まではタッピングした直後に液体の状態で工場に持ち込んでいました。)

しかし、工場が再開されても、固形化されたゴムは安い値段でしか売れません。液体に比べて固体化されたゴムは加工しにくいためです。

また、工場がいつ再開されるのかもわからず、再開されるまで売り上げの日銭が入ってこないので、運営が苦しくなります。

もう一つの案は、工場が再開されるまで一旦樹液採取を中止することです。樹液採取を中止してもスタッフがいる限りは、最大のコストである人件費がかかり続けるので、スタッフも削減する必要があります。

しかし、以前の記事にも書きましたが、労働者が賃金の高いタイに流れるために、カンボジアは人手不足で一旦解雇してしまうと、再度スタッフを集めるのは至難の業です。

いずれの案を選ぶにしても、大変厳しい選択になります。
 

ところで、ここで少し話がそれますが、そもそもなんでこんなに暴落が続くのでしょうか?
一般的な説明では、慢性的な供給過剰基調が続いているため、と言われています。上記の価格グラフのように2009年、2010年に天然ゴム・ブームとなって多くのゴム樹が植えられました。

それから5,6年経ち、植えられたゴム樹が成長して樹液が出るようになり、天然ゴムが一気に増産されてきました。

一方、大消費地の中国の景気が減速して、思うように需要が伸びません。天然ゴムと競合する合成ゴムの原料の石油価格も、ご案内のように低迷しています。

この様な一般的な説明で、下落の背景はわかるのですが、それにしても下がり過ぎです。
というのも、相場の格言では、歴史的に見て大暴落時の最下値は、「半値八掛け二割引」と言われています。
つまり、最高値から32%になる、ということです。

しかし今回は、グラフからも明らかなように25%を下回ってきています。どうも普通の大暴落とは性質が違うようです。

そう言えば、この様なケースが過去にあります。石炭です。戦後石炭から石油への大転換が起こり、石炭価格が暴落を続けて、日本でも殆どの炭鉱が閉鎖されました。

天然ゴムも石炭同様に他のものに取って替られてしまうことを、市場が予見しているのでしょうか?
しかしながら、天然ゴムの需要の8割を占める自動車のタイヤには、現在の技術では天然ゴムが不可欠で、合成ゴムだけでは無理です。

つまり、天然ゴムが不要になることは今後10年単位で無いわけですが、相場の性質がこれまでと大きく変わってきたようです。

これまでの商品相場の前提として、「スーパーサイクル」と言われる、新興国を中心とする需要爆発がありました。しかしここに来て中国をはじめとして急ブレーキが掛かり、商品価格も値動きの全体が下にシフトして来ています。

今回の天然ゴムの大暴落もその流れの一環のように思えます。

さて、話を現実に戻して、我々の天然ゴム農園の身の振り方を決める必要があります。
我々の近くのカンボジアの工場は、ことごとく生産中止になりましたが、我々の農園から8kmにあるベトナムはどうでしょうか?

私は、農園マネージャーのC君を情報収集のためにベトナム国境に送りました。
(長くなったので、次回に続きます)