2015年11月20日
前々回、前回からの記事の続きです。
2011年からの天然ゴムの大暴落によって、ついに10月初めに近隣のカンボジアの天然ゴム加工工場も操業をストップし、我々の農園も採れた樹液の売り先が無くなってしまう事態になりました。
操業停止の危機に見舞われた我々は、ベトナム国境で情報を収集し、ベトナムの工場に買い付けに来て貰うことになりました。
10月14日のプチュンバン(カンボジアお盆)明けから、ベトナムの工場からの買い付け部隊が農園に来て、我々の危機は去ったように思われました。(前回まで)
一方、カンボジアゴムの価格に最も影響するシンガポール天然ゴム市場は、10月中旬から11月にかけて連日下がり続けました。(下のシンガポール市場のチャートの赤丸部分)
嫌な予感がしていましたが、果たして、11月になって、このベトナム工場が買い付け価格をいきなり20%下げる、と言ってきました。
20%も下げられたのでは利益が出ません。下手をすると、赤字になってしまいます。
この買い付け部隊と値段を上げる交渉をしましたが、売渡価格は殆ど上がりません。
我々はまたしても、操業停止の危機に直面してしまいました。私は操業停止して従業員を大半解雇し、来年4月の雨季の始まりまで冬ごもりすることを覚悟しました。
例年2月には乾季の為生産量が下がって、値段が上がる傾向があるため、4月には再開できる公算が高いためです。
この様に覚悟を決めた上で、数日間は別の道がないかを探ることにし、再度ベトナム国境で情報を集めることにしました。
買い付けに来てくれる別のベトナム工場がないのか?我々がベトナムに直接売りに行く方法はないのか?という点です。
ベトナムの工場に直接売りに行った場合、価格は20%下げられる前のまともな価格だとわかりました。但し、国境を越えるときの税金と運搬のガソリン代がかなりかかります。
しかし、ゴムは樹液に蟻酸を加えて固めるので、保存ができて採取当日に売る必要もありません。
そこで採取した樹液を溜めて、1,2日おきに売りに行くことにすれば、国境の税金とガソリン代のコストを下げられ、ある程度の利益を出すことができる計算が立ちます。
こうなれば、やって見るしかありません。11月18日に、現地マネージャーC君に2日分の樹液を溜めて、オート三輪に載せ、ベトナムの工場に売りに行ってもらいました。
農園のあるスノールの町から、国道7号線でメモットの町まで来て、国境を越えます。
カンボジア人は、ベトナムへは1日であればパスポート無で入れます。国境で税金を支払って、ゴムも無事にベトナムに入国できました。
(但し、国境での写真撮影は役人に止められてできなかったとのことです。)
国境から更に40km入ったトムという町に、工場の倉庫があって、そこにゴムを納品しました。
(下は、工場の倉庫の写真。手前に弊社のゴムを載せたオート三輪)
売った値段は、10月の20%下がる前の価格から更に20%高く、11月初めの農園での価格の何と1.5倍にもなりました。
これで、何とか操業を続ける目途が立ちました。カンボジア国内のゴム工場がストップしたために、操業停止寸前に追い込まれて、ベトナムまで売りに行くことになりましたが、結果的に却って高い値段で売れることになりました。
メデタシ、メデタシと言いたいところですが、天然ゴムの価格は当面まだ下がる可能性があり、ベトナムの工場の買取価格も今後下落の恐れがあります。
中国の景気が回復して天然ゴムの価格が上向くまでは、予断を許さない状況が続きます。