カンボジアでの農地取得: 胡椒農地の取得の実際

2014年3月25日

カンボジアでの、農地取得は独特のノウハウが必要です。
我々は、現在新しい胡椒農地の取得に動いているので、それをレポートしながら、ノウハウの一端についてお話します。

<カンボジアの土地取得で特別なこと>
カンボジアでは外国人は土地が所有できません。所有する場合は、カンボジア人名義か、カンボジア人株主比率51%の会社を作って、その会社名義になります。

弊社は、代表者は私ですがカンボジア人株主比率51%ですので、土地を買うことができます。

また、土地の所有権には、Hard TitleSoft Titleの2種類があります。

Hard Titleは、州の役所(Cadastral Office)に登記された所有権で、他人に侵害されるリスクの少ない安全な所有登記のやり方です。
但し、多くのオーナーは税金等の問題で州に登記せず、州の下の行政単位の郡(Distrist)、コミューン(Commune)、村(Village)の首長に届けて承認をもらい、登記の代わりにします。これをSoft Titleと呼びます。

Hard Titleの場合は、州の役所で登記書類を確認してオーナーをすぐに特定できますが、Soft Titleの場合はそうはいかないので、オーナーのなりすまし等の不正が横行する温床になります。

実際、カンボジアではSoft Titleの場合に土地紛争があまりに多発して、政治問題となったので、昨年の総選挙前に、フンセン首相の大号令で、与党人民党の若手数千人が、全国の紛争地帯を測量して農民にHard Titleを与える活動を大々的に繰り広げました。

今回、我々がカンポット州(Kampot Province)、Kampot Pepperの地元で取得する土地は、この与党人民党の若手が測量して農民がHard Titleを獲得した場所になります。

以下は、農民がHard Titleを獲得した土地の地図の例です。番号が振ってある各領域が農民の所有地です。



<農地取得の手順>
実際の取得手順は以下のようになります。

1.オーナーまたはその代理人から土地の情報を得る
カンボジアには、未だ中々大手の不動産屋がないので、ほとんど知人を辿って紹介を受けることになります。
オーナーはよくその地方で顔の広い人間に代理人となってもらい、口コミで紹介を広げます。

2.現地を確認する。
多くの場合、土地はまだ開拓されていないので、ジャングルに分け入って傷だらけになりながらも、土壌の質が胡椒に向くのか、生えている草木から肥沃度、水没の有無、などを確認します。

今回は、全体が50ヘクタールの土地の中から、自分たちの好きな部分を約30ヘクタール切り出すので、全体を歩いて、GPSで緯度経度を測定して、欲しい部分の地図を作りました。

3.リアル・オーナーを特定する
代理人または、オーナー(と称する人)から登記書類のコピーをもらい、州の役所(Cadastral Office)で、オーナーの名前を特定します。

今回は、自分たちで作った欲しい土地の地図を州の役所に持ち込んで、その場所のオーナーを特定しました。

4.リアル・オーナーと値段等条件を交渉する
5.契約締結&登記

<外国人は値段 2倍!だけど方法が。。>
多くの場合、2.現地確認で、この土地は土壌が胡椒に向いていないとか、胡椒に向く良い土地だけれども雨季に水没してしまう等の理由で、オーナーとの交渉までには至りません。
安く売り出されていたり、良い条件で貸してくれるという土地は、何か理由があることが多いものです。

但し今回は、現地を見たところ、土地もまずまずで、3.リアル・オーナーの特定も順調に終わり、4.リアル・オーナーとの交渉に臨みました。

ところが、オーナーは最初に代理人が言ってきた値段の2倍を要求してきました。
代理人の言った値段は、近隣の相場の値段ですので、どう考えてもその2倍では売れないはずなのですが、頑として要求を曲げません。

そう言えば、カンボジア人は外国人とみると値段を吊上げる癖があります。
何故かといえば、カンボジアの常識では金持ち(=外国人)からはお金を一杯もらっても良いからだそうです。

しかし、客観的に言えば、売る方は周囲の土地との競争があるので、周囲とかけ離れた値段では売れないはずですが、カンボジア人は先ず自分の都合を考えるあまり、周囲が見えなくなる傾向があるようです。

ということで、当然我々も諦めて周囲の土地を探すことにしました。1.から振り出しに戻りました。
ところが、この地方は同じように総選挙まえに土地を獲得した農民が大勢いて、早く現金化しようと売り込んでいます。

結局、3KM離れた場所で、80ヘクタールの出物を発見。 1日かけて現地を歩き回って調査した結果、土地は上の中レベルで大変良く、州の役所での調査結果もOKでした。

そこで、今回は、オーナーとは直接会う前に、代理人経由で5%の手付金を支払ってしまいました。もちろん、代理人はオーナーには買い手の我々が外国人だとは伝えていません。

このように手付を打つと売値は固定されてしまいますので、値上げはできません。
なぜなら、代理人が一旦農民とその値段で(仮)契約してしまうからです。

変則的な方法ですが、農民から土地を買う場合には有効な手段だと思います。
以下の写真は、私が手付金の領収書に弊社のスタンプ(公印)を捺しているところです。