キャッサバのペスト付き苗を売ったC社の顛末: キャッサバのペストとの戦い番外編

2014年6月3日

これまでに何回か書きましたように、弊社のキャッサバ・プランテーションでは5月初旬にキャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれるメーリーバグ(Mealybug, 粉カイガラムシ)が大発生して、大きな被害がでました。
下はメーリーバグの写真。クリックすると虫がはっきり確認できます。

メーリーバグに養分を吸い取られて黒死したキャッサバの茎

このメーリーバグは、卵の形で茎に付いてタイから運ばれてきたことは明らかで、専門家の話でもタイから多くの卵がくっ付いてきたのでなければ、こんな爆発的な大発生はあり得ないとのことです。

そこで、茎(苗)を売ったC社に、契約書の不具合時取り替え条項を基に 代替苗を要求しました。
しかしC社は、「社長が鼻の癌でタイの病院に入院していて、代理の社長が来るまで判断できない。」などと訳のわからない話で、グズグズと動きません。
そこで、我々はベトナムから代替の苗を輸入して、C社には損害賠償を求めました。

私とVP百津は5月16日にC社を訪れました。そこではいつもの営業担当役員と、「病気」の社長から引き継いだ新社長の秘書と称する人物が待っていました。

我々は、メーリーバグ被害の損害規模と、その損害を賠償して欲しい旨を要求しました。
新社長の秘書 「私はS.N. Group(仮名)社長の秘書で、S.N. GroupC社から会社を買って営業しているのです。」
私&百津 心中 「え!? ここはC社じゃないの? 事務所も表の看板も社員も同じじゃないか!」
C社から会社を買ったのであれば、営業を引きついでいるので、賠償義務もあるじゃないですか。」
新社長の秘書 「S.N. Groupは、C社の在庫を買ってそれを販売しているだけなので、C社そのものを買ったわけではありません。看板も今商業省に届を出して、変更している最中です。」

私 「それでも、ここはC社が借りている事務所で、(営業担当役員に向かって)あなたたちもC社の社員ですよね? なぜSNGroupのために販売活動をしているんですか??」

担当営業役員 「実は、C 社の社長はS.N. Groupに在庫・資産を売って行方知れずになってるんです。私も給料をもらってなくて、彼を探しているんですよ。それで当面、事実上引き継いだS.N. Groupの仕事をしているだけです。」 確かに、この営業担当役員、大分疲れた感じでやつれています。

私 心中 「C社の社長は、計画倒産して逃げたということか!? でもS.N. Groupが事実上営業を引き継いでいるから、先ず、S.N. Groupに損害賠償請求をするしかないかなあ...」

私 「それでは、S.N. Groupに損害賠償を求めますので、新社長に伝えてください。」
新社長の秘書 「わかりました。」
ということで、この時の話は終わりました。

翌日、カンボジアの民法作成に携わった日本人弁護士のK先生の元を訪ねて、法律上の手段について相談しました。
私 「C社の事務所でC社の社員が販売しているので、どうも在庫もC社のものに思えます。裁判所に在庫の仮差し押さえを申し立てられませんか?」
K
先生 「勿論可能ですが、本当にC社の社長が在庫をS.N. Groupに売ったとすれば、S.N. Groupは売買契約書を出してくるので、仮差し押さえもすぐ無効にされてしまいます。」

私 「それでは、もし仮にS.N. GroupC社から在庫を買っただけだとしても、C社の事務所でC社の社員が営業を継続しているので、事実上の営業譲渡になりますよね? 営業譲渡だとすると、損害賠償責任も引き継ぐはずじゃあないですか?」

K
先生 「日本の法律上は、確かに営業譲渡という考え方があります。しかしカンボジアにそれがあるのかなあ?」と言いながら、カンボジアの会社法を確認しました。
K
先生 「カンボジアの会社法には、営業譲渡の考え方が明文化されていませんね。そうすると裁判官は法律にないものを作る訳にはいかないので、営業譲渡の線で行くのは難しいと思いますが、もう少し調べてみます。」

数日後K先生から、「やはり営業譲渡の線では困難で、元のC社に対して損害賠償請求をするより他は無い」、との見解を頂きました。

そこで、私は現在C社の実態がどうなっているのか?社長が逃げて計画倒産のはずなのに、何故C社の事務所でC社の社員が以前と同じ営業活動をしているのか? 疑問点を明確にしたいと考えました。
また、 C社の社長が行方不明になっても、他の代表者(カンボジアでは、株主=Director)がいればその人間に損害賠償請求できるはずなので、他の代表者の有無も確認すべきです。

これらの調査のために、営業担当役員に再度問いただそうと何度も電話しましたが、電話はそれ以来不通です。
また、C社の事務所にも出向きましたが、国王生誕祝日の連休(1週間)と重なったためか事務所もシャッターが下りたままです。 本当にC社はどうなってしまったのか?

連休明けに、やっと営業担当役員との連絡が取れ、明日事務所に来るように言われました。
5月26日にC社を訪問しました。
果たして、C社の事務所は何もなかったかのように以前どおりの営業を続けています。
以下はC社のパテント(営業ライセンス)で、社長の写真付きです。これも以前と同じく事務所に掲げられています。(写真は肝心の部分はカットしてあります。)

しばらく待たされて、例の営業担当役員が少し前よりスッキリした感じで現れました。

私 「C社の現状についてもう少し詳しく聞きたい。また、C社とS.N. Groupの関係についても確認させてください。」
営業担当役員 「 連絡取れずにごめんなさい。あなたの意図はわかります。説明します。」

それから、彼女が語ったことは更に驚くべき内容でした。
次回に続きます。