キャッサバ植え付けの戦い: 雑草の「癌」、笹の駆除に苦戦!

2014年5月31日

前回の記事で、水害や害虫のメーリーバグの被害でキャッサバの植え付けが遅れ、遅れを挽回するためにワーカーの増員を図って苦戦していることを報告しました。
しかし、その間にも別のキャッサバの大敵、雑草は着々と農園にはびこり始めていました。

最初に農園の土地の木を伐採、抜根してトラクターで耕作すると、土地の表面はクリーンアップされて、一見何も無くなります。しかし、地中には雑草の種や根が残っており、本格的なスコールが降ると瞬く間に芽を出し成長して、1か月で花を咲かせるものもいます。

我々が植え付けに手間取っている間に、4月8日の最初の本格的なスコルールから1か月半が経ち、雑草も勢いを増しています。
特に、厄介なのは笹です。他の雑草は普通の除草剤で駆除できますが、笹はかなり強いものを使っても死にません。強烈なSodium Chlorateなどを使えば駆除できますが、その後土地に毒性が残るため食用作物は植えられなくなってしまいます。
また、笹は草刈をしても根が一部でも地中に残ると再生してきますので、根を全て取り切る必要があります。

正に、雑草の「癌」のような存在です。手術しても全て取りきらないといけませんし、化学療法(薬剤)も人体を傷めつけるほどのものでない効きません。

ところが、困ったことに、この農地を確保した時にはわからなかったのですが、この土地は元々笹の独占する土地だったのです。全250ヘクタール中80ヘクタールに笹が蔓延っています。
下は、開墾前の土地、木の間は笹だらけです。(スコールが降って笹が復活してきました)

笹が茂ったキャッサバ畑。キャッサバの苗はまだ芽もでていない(白矢印)一方、笹が大きくなっています。

このままでは、キャッサバが育つ前に笹に覆われてしまい、日光が届かなくなってイモが育たなくなってしまいます。
カンボジアの農薬会社に問い合わせても、有効な対策は出てきません。

そこで、カンボジアが農業技術を輸入している先のタイに、私が10日ほど前に飛び、大手の農薬会社を回りました。電話でアポを取って5件ほど回りましたが、日本人ということで概ね丁寧に対応してくれました。

最初のA社では、最初Marketing Managerが対応しましたが、私が「Sodium Chlorateが入手できないか?」と聞くと、Managing Directorが出て来て「どこで、そんな危険な薬品を知ったんですか?タイでは政府が規制していて一般には入手できませんよ。」
この方は、相当な農薬のプロですが、タイでは入手できないか、土地をダメにしてしまう薬しか思いつかないという結果でした。

4件目のE社は、電話で私が日本人でカンボジアで農園をやっているというと、Export ManagerのSさんが会社に来る様言ってくれました。
ところが、言われた住所は高級住宅地で大きな邸宅が並んでいて、中々E社を見つけられません。さんざん探し回り、大邸宅に小さくE社の看板を見つけました。

早速、中に通されると大きな会議室があり、Sさんと技術スタッフの他に、やけに目つきの鋭い1人のお婆さんが待っていました。実はこのお婆さんはE社の創業一族の重鎮でExecutive Director の肩書を持っています。

最初は、中央に座ったお婆さんから、私の仕事や家族のことをしつこく聞かれ、30分も話してやっと本題に入りました。
本題に入ってもこのお婆さんが仕切ります。農薬に付いてものすごく詳しいのです。時に大学の講義の様になりました。
結局わかったのは、一つの農薬で簡単に笹を退治できるようなものはないということでした。E社のレシピは、
1.トラクターで土地を掘り返し、根を地表に出させる
2.人手で根が抜けた笹を出来るだけとる。
3.万能薬と言われるGlyphsoteで、更に叩く。
4.それでも地表に残った根があるので、それに芽を出させないように、もう一つの薬品、Acetochlor 50%を撒く
という複雑なものでした。

その後、カンボジアに戻り、E社のレシピを基にVP百津を中心に検証しました。
上記3.のGlyphsoteはあまり効果が無いようです。それよりも、やはり1.トラクターで根を地表に出させるというのがかなり効果的です。
下は、その写真で、地表に出た根(白矢印)は強烈な日光を浴びて死んでしまいます。

しかし、この状態でも、地中にある反対側の根は生き延びます。そこで、先ほどと直角方向にもう一度トラクターで耕作すると、この状態の笹は反転して地中の根が今度は地表に出てきて日光を浴びて死にます。

この様な検証の結果、以下の対応に落ち着きました。
1.トラクターで土地を掘り返し、根を地表に出させる
2.数日して地表の根が死んでから、再度直角方向にトラクターで土を掘り起こし、反対側の根も殺す。
3.人手でできるだけ、笹を取り除く
もう一つの薬品、Acetochlor 50%も効果が数日しか持たないので費用対効果が低く使えません。

それから、既にキャッサバの苗を植え付けてしまったところでは、さすがにトラクターで土を掘り返す訳にはいかないので、人手で刈り取ります。笹はまた復活してきますが、その時にはキャッサバが先に成長して地面を覆って、笹に日光が届かなくなるというわけです。

というわけで、人海戦術の草刈作戦が始まりました。ワーカーはチョッカというクワを振るいます。

苗植え付けのための戦いは、まだまだ続きます。