天然ゴム価格の暴落 「傾向と対策」

2014年10月1日

前回の記事で書きましたように、天然ゴムの国際市場価格はこの3年間で1/4に暴落しました。

主産地のタイ・マレーシアではすでに生産原価を割り、大きな政治問題になっています。
さて、天然ゴムの生産は、タイ、マレーシア、インドネシアで世界の70%を占め、そのうちタイがNo1.で1国で世界の30%を生産しています。
この主要3か国の中で、マレーシアは十数年来価格の比較的不安定な天然ゴムを、パームヤシに転換する政策を進めてきており、現在は十数%程度のシェアになっているため価格決定をリードできません。

また、インドネシアは作付面積ではタイの1.5倍もあるのに、生産量はタイの90%に留まる前近代的な生産体制で、とても価格決定のリーダーになれる状態ではありません。

従って、タイの動向が天然ゴムの国際価格に大きな影響を与え、価格決定(立て直し)のリーダーの役割を担っている訳です。実際、天然ゴムの国際マーケットで現物価格を決めるのは、タイの現物市場です。

タイでは小規模農家が大半を占め、生産原価を割る低価格に苦しんで、10月8日に1万人規模のデモが計画されて大きな政治問題となっていました。騒乱を避けたいタイ軍事政権は、首相が自ら天然ゴム価格対策のための「天然ゴム政策委員会」の委員長に就任して、農家から天然ゴムを買い上げる資金300億バーツ(10億ドル)の拠出を決めました。

この価格対策を受けて、一旦は1万人デモは回避されることになりました。 しかしながら、依然として天然ゴム価格は改善されない状態なので、小規模農家の怒りと苦しみは治まらず、10月8日に向けて緊張が高まっています。

一体全体、この天然ゴム価格大暴落の根本原因は何かというと、生産の過剰です。

2014年の供給過剰量は、約40万トンです。しかしながらこれは天然ゴムの世界全体の年間生産量1160万トンのわずか3.5%程度にしかすぎません。

非常に単純化して言うと、この「たった」3.5%を何とかしさえすれば、供給過剰は解消されて暴落は収まるのです。
一方で、タイ政府は価格のテコ入れのために上記のように10億ドルを用意しています。

例えば、極端な話ですが、供給過剰量40万トンをタイ政府が買ってしまうと幾らかかるかというと、1kg=1.8ドルで買ったとすれば、わずか7.2億ドルで買えてしまいます。タイ政府の既に用意した10億ドルで十分間に合います。

実際には、国際マーケットに介入して買い上げることになるので、7.2億ドルも使わなくとも相場を反転させれば十分に目的を果たせます。

このように、タイ政府による早期の市場介入が重要な対策となりますので、「価格対策委員長」のタイ首相の決断が待たれるところです。

カンボジアでは、人件費をはじめとする経費が極端に安いので、この値段でもまだ利益が出るので大きな問題にはなっていませんし、カンボジア政府には市場介入するような資金力もありません。

従って、他人任せになってしまうのですが、我々カンボジアの農家もタイ政府の動向を固唾を飲んで見守っているところです。