2014年4月11日
よく知人から、「なんで?カンボジアで農業なんかをはじめたの?」と聞かれます。
理由は、一言でいうと「カンボジアの農業には大きな夢が描けるから」ということになります。
私は、大学卒業後外資系の大手IT会社で24年間会社人間として仕事の事だけを考えて働き続け、退社時にふと気が付くと50歳近くになっていました。
そこで、これから何をやろうかな? と考えた時に思うのは、日本にいて感じる閉塞感でした。別の言い方をすると、日本にいても夢がないということです。
お金の神様と呼ばれた、邱永漢さんは、「魚を釣るには、魚の沢山いる池で釣れ」と言われましたが、日本の特にIT業界にいて感じたのは、「魚がほとんどいない池で、多くの釣り人が釣り糸を垂れている状態だ」ということでした。
下手をすると、`釣り人`が多すぎてリストラの嵐に巻き込まれます。
そこで、「自分は50歳になって、もう残り時間も少ないので、すぐに`魚の沢山いる池`に引っ越して、働けば働いただけの成果がでる、夢のある仕事をしたい。」 と考えた次第です。
それでは、どこに`魚が沢山いる`のか? 日本やアメリカのような先進国よりも新興国の方が可能性がありそうで、調べれば調べるほど、日本人にあまりなじみのないカンボジアに、実は取り切れないほどの`魚がいる`ことが分かりました。
カンボジアで国際市場価格の決まっている天然ゴム、キャッサバ、胡椒等を作ると、売値は国際市場価格並に高く、経費は人件費や土地代等が極端に低いので、大きな利益を上げることができます。
例えば、天然ゴムは本場のタイ、マレーシアで作っても売値は国際市場価格で、カンボジアとほぼ同じですが、人権費や土地代が数倍します。従って、タイ、マレーシアではカンボジアのような利益は上げられない訳です。
実際、先進国よりもチャンスが多い新興国の中国、韓国、ベトナムの企業が大挙してカンボジアで農業プランテーションをやるために押しかけてきています。
蛇足ですが、人は時として将来についてある確信を抱く時がありますが、私が2010年に始めてカンボジアを訪れた時も、「これは大変な可能性がある」と確信しました。
丁度1999年に上海を訪れた時にも中国の将来について同様の確信を抱き、中国の株を買い始めました。
この時も、よく周囲から「危ないから中国株なんて止めなさい。」と言われ、「でも利益が出ているよ。」というと、「利益の出ているうちに早く売れ。」と言われたものです。
その後2008年にリーマンショックが起きるまでに、多くの中国株が数十倍になったのはご案内の通りです。
<カンボジアで農業をやる5つの理由>
さて、なぜカンボジアで農業なのかを、もっと具体的にお話します。
第一に、広大な農地が安く利用できること。
カンボジアの国土面積は日本の約半分ですが、ほとんどが平地で農地に利用でき、内戦の影響もあって未開拓の土地が数百万ヘクタールも残っています。
例えば、近隣のタイ、ベトナム、マレーシアなどでは、農地が枯渇し、新しく農業プランテーションを始めることがほとんどできませんし、地価も3倍、5倍はします。
カンボジアでは、独特のノウハウは必要ですが、その気になれば数百、数千ヘクタールの農地が格安で利用できます。別の記事にも詳しく書きましたが、民間所有地よりも一ケタ安い国有地をEconomic Land Concessionや、ダイサハッコムという制度で70年程度の長期借地として利用できます。
第二に、安い労働力が豊富なこと。
最低賃金は81ドル。農園労働者の賃金は100ドル前後です。
カンボジアでは、肥沃な土地と気候に恵まれているため、日本などと比べると非常に簡単に食糧が生産できます。主食の米も手を掛けずにできるし、川魚、果物なども簡単に入手できます。
また、衣料も一年中この暑さなので、あまり必要ではありません。家も地震も無いし冬の寒さも無いので非常に簡単な作りです。
つまり、衣食住にあまり金が掛からずに生活できるので、低賃金が実現できる訳です。
第三に、熱帯農業に最適な気候風土であること。
熱帯の商品植物に不可欠の強烈な太陽と、天水に恵まれて、一般に灌漑の必要がありません。
つまり、大きな利益を生む天然ゴム、キャッサバ、胡椒などを作るのに最適な気候風土だということです。
第四に、災害が滅多にないこと。
日本では、農業というとすぐ自然災害のリスクを思いますが、カンボジアではほとんどありません。
台風も私がカンボジアに来た2011年以来、一度も来ておらずこれといった被害に会っていません。また、一部のメコン川流域地帯を避ければ、洪水もありません。
地震は過去100年間に1度だけ震度2のものがあったそうですが、これはインドの大地震が伝わったものだそうです。また、津波もあり得ません。海岸線はシャム湾に面している内海のみです。
第五に、資本主義国で、政治的に安定していること。
実はカンボジアは、ラオス、ベトナムや以前のミャンマーと違って、外国人でも自由に会社を作って、労働者を雇い、事業を運営することができます。
通貨は事実上アメリカドルで、海外にも原則自由に持ち出せるので、稼いだ成果を享受できます。
最近は、フンセン政権も与野党対立で大変ですが、例えば隣国タイのような騒ぎはありません。
ということで、意外にもカンボジアは、安くて広い肥沃な土地があり、気候も農業プランテーションに適していて、労働力も格安で利益が上げやすい。その上農業に付き物の災害もない。更に自由に事業が行えて稼いだお金もアメリカドルで利益が享受できるという、「魚が豊富な池」である訳です。