50歳を過ぎて、カンボジアで農業を始めた理由 パート2

2014年11月23日

半年くらい前に「50歳を過ぎて、カンボジアで農業を始めた理由」を書きましたが、最近読んだ水野和夫氏(証券エコノミストとしての経済分析の一方、マクロ経済、国際金融を文明史論的な視野から見た著作で知られる:出典Wikipedia)の著書「資本主義の終焉と歴史の危機」に私の言いたかったことがスマートに整理して書かれていましたので、それを引用して、カンボジアで仕事をするわけをお話したいと思います。

水野和夫氏の上の著書の冒頭では、「日本では2.0%以下の超低金利が20年近く続いている。それは実は歴史的な重大事件で、「利子率革命」とも呼べる。金利は即ち、資本利潤率とほぼ同じであって、それが2%を下回るというのは、資本家が資本投資をして、工場やオフィスビルを作っても、満足できるリターンが得られなくなった。」と述べています。

また、「利潤率の低下は、裏を返せば、設備投資をしても、十分な利益を生み出さない設備、つまり「過剰」な設備になってしまうことを意味してしまう」とも述べています。

つまり、日本では工場やオフィスビルは十二分に行き渡り、これ以上投資する余地が残っていないのです。
従って、国内での経済成長の余地も無く、企業は国内ではゼロサム競争に明け暮れて、世の中に閉塞感が充満してしまっています。

アベノミクスで株価だけは上がり、株を持つ富裕層には実入りがありましたが、庶民は所得が上がらず円安で輸入物価が上がったこともあり、生活向上には結びついていません。

一方、日本のゼロ金利とは全く対照的に、カンボジアの金利は非常に高い状態が続いています。
一般の商業銀行でも、1年物の米ドル定期預金金利が5%、6%は当たり前で、一部のマイクロファイナンス銀行では米ドル3年定期で年率12%というものもあります。

一般的な説明では、「カンボジアは、カントリーリスクが高く、銀行格付けもできないため、高いリスクでお金を集めるために非常に高い金利が必要である。」と言われています。

確かにそれも事実の一部ではあると思いますが、私はそれだけではないと考えます。
何故なら、カンボジアの国家財政はひどい状態であることは事実ですが、逆にそのために自国通貨リエルが使われず、80%以上米ドルが使われています。

従って、預金は米ドルでなされるので通貨のリスクはアメリカと同じであることになります。
それでは、カンボジアのカントリー・リスクの為に、お金を預けた銀行が潰れるリスクが高いかというと、そうではありません。

例えば、年率8%の米ドル定期預金を持つ、あるマイクロファイナンス銀行の財務状態を確認してみると、財務状況はピカ一で、先進国の普通の銀行よりもはるかに上です。

私は、そこで、水野和夫さんの言う通り、カンボジアは日本と正反対に利益率の高い投資が可能であるために、金利が高いのではないか、と考えます。

つまり、工場やオフィスビルが十二分に行き渡りきっってしまった日本とは正反対に、そのような生産設備が全く不足している状態であるため、利益率の高い投資機会があふれている訳です。

このことは、カンボジアに暮らしてみると肌で感じます。ナショナル・ハイウエイと呼ばれる幹線国道ですら、いたるところ穴だらけ。 発電所もロクにないために停電が頻発します。
このように基本的な社会インフラさえ整える余裕がなく、生産設備どころではありません。

このように、生産設備が不足しているために、利益率の高い投資機会があふれていますが、カンボジアで現実的に可能な産業は、主に農業で、工業もせいぜい軽工業どまりです。

そこで、私はカンボジアで農業に取り組むことに決めて、50歳を過ぎて移住してきました。
確かに、インフラや法整備も遅れて、何かと不自由を感じることも多いのですが、それだけ将来の発展余地が大きいのも事実です。

閉塞感の大きい日本を離れ、カンボジアの発展と共に、自分も将来に希望を持って仕事をして行けたら良いと考えています。