カンボジアの残念な面

2014年12月20日

カンボジアは活気に満ちて発展が期待できる、現代のニューフォロンティアですが、発展途上国ゆえの残念な面も数多くあります。

そのうちの1つは、上は政府高官から下は一般の会社員に至るまで横領が横行していることです。
政府高官の件に関しては、多くの公共事業のお金がよくわからないままに消えて行って、道路工事などの予算が無くなってとん挫してしまうことが日常茶飯です。

我々に身近な従業員による横領は、私の知っている殆ど全てと言っていい企業が悩まされています。
これまで弊社にはそのようなことは起こらなかったのですが、今回発生してしまいました。

私が日本に一時帰国した期間に、留守番役の日本人社員がカンボジア人女子社員にオフィスの家賃を払いに行かせたところ、その女子社員が翌日から出社しなくなりました。

連絡が中々取れず、2,3日後に連絡が取れた時には、女子社員は「トラブルに巻き込まれて、頭を殴られて気を失い、気が付いたら病院のベッドに居た。しばらく休みたい。」と言ってきました。

それで、留守番役の日本人は2,3日様子を見たようです。その後私がカンボジアに帰ってきて、その女子社員に電話で連絡を取ろうとしましたが、携帯電話が2つともクローズされていて何日も連絡が取れません。
メールで連絡するように催促しても何の返答も帰ってきません。

そこで、私は彼女の家に行ってみるしかないと考えましたが、会社に届けられた住所がプノンペン市内の大きな郡名とその番地名だけで、ストリート名がありません。これでは、そこの郡に行ってみても探すのは事実上不可能に近い状態です。

住所だけでは家を探せないため、彼女の友人を当たって行き、2日がかりで何とか彼女の家を突き止めました。
プノンペン市内のカンボジア人だけが住むスラムに近いような住宅街の奥の家を訪ねた時、彼女は不在で母親が家にいました。

母親は、「(彼女は)仕事に行っている。夜9時ころに帰る。」ということでした。まだ夕方5時でしたので、一旦引き揚げて9時に再び来ることにしました。
すると、6時頃に留守番役日本人から電話があり、「彼女から今電話があった。預かったオフィスの家賃をついつい使い込んでしまい、怖くなって会社に来れなくなった」とのことでした。

9時に家に行くと、果たして彼女がいました。夕方に日本人が家に来たと母親から聞いて、英語を話す彼女の姉も待っていました。
彼女に事情を説明させると、「家賃を使い込んだのではなく、失くしてしまい、怖くて会社に来れなかった。入院は本当だ。」と言います。
先程留守番役日本人に話した内容と違うので、信用できません。簡単に都合の良い嘘をついているようです。

姉に話すと、大変驚いて「彼女の給料から月々差し引いて返済させてほしい。」と言います。
私の方は、彼女が電話までクローズして隠れようとしたので、「もう信用できないので解雇します。ただ、まだ若いので警察沙汰にはせず、次の仕事を見つけて来月から毎月返済してください。」と話しました。

結局、彼女の姉を保証人として、返済する旨の文書を作り一件落着となりました。

「カンボジア人は(お金が目の前にあると)我慢できない。」、「後先考えずすぐバレルことや、嘘を簡単についてしまう。」とよく言われますが、自分の会社でこんなことが起こり、大変残念です。

彼女の場合は大学まで出ていますが、子供時代に基本的な道徳観念の躾がなされていなかったようです。
カンボジアでは、ポルポトの数百万人の虐殺によって社会秩序や道徳観念までが完全に崩壊してしまい、今もその再建途上にあると言われています。

カンボジア人全体にこのような道徳観念が行き渡り、横領が減って社会がより良くなることを願っています。

50歳を過ぎて、カンボジアで農業を始めた理由 その3

2014年12月10日

以前もブログに書きましたが、知人や新しく知り合った方々からも良く「なぜカンボジアで農業を始めたのですか?」と聞かれます。最近もお会いした方から聞かれて、理由を説明したのですが、あまり納得顔ではありませんでした。 
なぜ納得されないのかと言うと、やはりこの方の質問に十分に答えていなかったのです。
つまり、この質問は実は以下の3つの疑問を1つの文で表しているのに、3つの疑問全てには答えていなかったのです。
①なぜ、50歳を過ぎて起業したのか? (仕事人生終盤でそんなにリスクを冒さずとも良いのに)
②それもなぜ、カンボジアのような(カントリー・リスクの高い)国で始めたのか?
③しかも、(それまでITの世界にいたのに全く違う)農業なんかを始めたのか?

いつも、なぜカンボジアで、なぜ農業かは、これまでブログに書いてきたように、カンボジアでの農業の投資効率の高さを説明して答えてきたのですが、①のなぜ50歳を過ぎて起業したのか、にはあまり的確に答えてきませんでした。
どう答えれば分かってもらえるかと考えた時に、同じように50代、しかも後半で起業された出口治明・ライフネット生命保険会長兼CEOが日経産業新聞(2014年10月2日)に書かれた「50代、起業も人生の選択肢」という記事がかなり明確に答えていて、思わず膝を打ちました。

主要部分を引用します。
「50代で起業なんて……」と思う人もいるだろうが、実は50代ほど起業に向いた年代はない。50代には幅広い交友関係があり、資金調達の手段も知っており、ある程度目利きの能力も備わっている。20代や30代なら、どれもまだ持ち得ないノウハウだ。

 また、50代ともなれば、ある程度プライベートのライフスタイルも見えてくる。つまり、起業するには、はるかに50代の方が条件が整っており、その分リスクが低い。50代は自分がやりたいことにチャレンジしやすい年代なのだ。」

この記事は、非常に明快に50代の起業の利点を述べていますが、自分のケースでも20代、30代のうちはまだ起業に必要な様々なスキルや資金調達力も無く、客観的に見ても起業は無理でした。 第一、自分でもそのようなリスクを冒す能力があるとはとても思えませんでした。

やはり40代までに多くのビジネス経験を積んだ結果、自然に起業に必要な条件が満たされるようになったのだと思います。

自分の周囲を見渡してみても、実は、50代でそのような起業に必要な条件を満たしている方はかなりおられると感じますが、多くの方が起業するわけではありません。
恐らく、多くの方が(現在の仕事とは別の)自分のやりたいことを持っておられると思いますが、チャレンジする方は少ないのが現状です。

‘起業の国‘アメリカでは、MBAの中に「起業家コース」というのがあって、文字通り起業の仕方を勉強するのだそうですが、近年は優秀な学生が集まってくるそうです。

但し、そのコースを出た優秀な学生が起業するかというと、必ずしもそうではありません。
起業するのは、優秀か否かに関わらず、性格的にリスクを取るタイプだということだそうです。このコースでは起業のリスクの実態も重点的に教えるので、優秀な学生がとてもリスクを冒せないと起業を止めるケースも多いそうです。

確かに、自分の場合も「エイ!」と清水の舞台から飛び降りるような気持ちで始めてしまったので、リスクを取る性格というものに当てはまるのかもしれません。

50代で会社人生の終盤に差し掛かり、今後何をしていこうかと考えている方の中で、リスクを取れるタイプの方には、起業も十分に一つの選択肢だと思います。

50歳を過ぎて、カンボジアで農業を始めた理由 パート2

2014年11月23日

半年くらい前に「50歳を過ぎて、カンボジアで農業を始めた理由」を書きましたが、最近読んだ水野和夫氏(証券エコノミストとしての経済分析の一方、マクロ経済、国際金融を文明史論的な視野から見た著作で知られる:出典Wikipedia)の著書「資本主義の終焉と歴史の危機」に私の言いたかったことがスマートに整理して書かれていましたので、それを引用して、カンボジアで仕事をするわけをお話したいと思います。

水野和夫氏の上の著書の冒頭では、「日本では2.0%以下の超低金利が20年近く続いている。それは実は歴史的な重大事件で、「利子率革命」とも呼べる。金利は即ち、資本利潤率とほぼ同じであって、それが2%を下回るというのは、資本家が資本投資をして、工場やオフィスビルを作っても、満足できるリターンが得られなくなった。」と述べています。

また、「利潤率の低下は、裏を返せば、設備投資をしても、十分な利益を生み出さない設備、つまり「過剰」な設備になってしまうことを意味してしまう」とも述べています。

つまり、日本では工場やオフィスビルは十二分に行き渡り、これ以上投資する余地が残っていないのです。
従って、国内での経済成長の余地も無く、企業は国内ではゼロサム競争に明け暮れて、世の中に閉塞感が充満してしまっています。

アベノミクスで株価だけは上がり、株を持つ富裕層には実入りがありましたが、庶民は所得が上がらず円安で輸入物価が上がったこともあり、生活向上には結びついていません。

一方、日本のゼロ金利とは全く対照的に、カンボジアの金利は非常に高い状態が続いています。
一般の商業銀行でも、1年物の米ドル定期預金金利が5%、6%は当たり前で、一部のマイクロファイナンス銀行では米ドル3年定期で年率12%というものもあります。

一般的な説明では、「カンボジアは、カントリーリスクが高く、銀行格付けもできないため、高いリスクでお金を集めるために非常に高い金利が必要である。」と言われています。

確かにそれも事実の一部ではあると思いますが、私はそれだけではないと考えます。
何故なら、カンボジアの国家財政はひどい状態であることは事実ですが、逆にそのために自国通貨リエルが使われず、80%以上米ドルが使われています。

従って、預金は米ドルでなされるので通貨のリスクはアメリカと同じであることになります。
それでは、カンボジアのカントリー・リスクの為に、お金を預けた銀行が潰れるリスクが高いかというと、そうではありません。

例えば、年率8%の米ドル定期預金を持つ、あるマイクロファイナンス銀行の財務状態を確認してみると、財務状況はピカ一で、先進国の普通の銀行よりもはるかに上です。

私は、そこで、水野和夫さんの言う通り、カンボジアは日本と正反対に利益率の高い投資が可能であるために、金利が高いのではないか、と考えます。

つまり、工場やオフィスビルが十二分に行き渡りきっってしまった日本とは正反対に、そのような生産設備が全く不足している状態であるため、利益率の高い投資機会があふれている訳です。

このことは、カンボジアに暮らしてみると肌で感じます。ナショナル・ハイウエイと呼ばれる幹線国道ですら、いたるところ穴だらけ。 発電所もロクにないために停電が頻発します。
このように基本的な社会インフラさえ整える余裕がなく、生産設備どころではありません。

このように、生産設備が不足しているために、利益率の高い投資機会があふれていますが、カンボジアで現実的に可能な産業は、主に農業で、工業もせいぜい軽工業どまりです。

そこで、私はカンボジアで農業に取り組むことに決めて、50歳を過ぎて移住してきました。
確かに、インフラや法整備も遅れて、何かと不自由を感じることも多いのですが、それだけ将来の発展余地が大きいのも事実です。

閉塞感の大きい日本を離れ、カンボジアの発展と共に、自分も将来に希望を持って仕事をして行けたら良いと考えています。

 

天然ゴムは長期暴落から3年8か月ぶりの復活?!

2014年11月5日

以前の記事で天然ゴム価格が2011年2月を天井として最近まで1/4に暴落したことをお伝えしました。

この価格が10月は上昇に転じてきており、何と3年8か月ぶりに反転し上昇に転じた可能性が高くなりました。
本当に反転したとすれば、我々カンボジアの天然ゴム農園にとっても大きな朗報です。
天然ゴム価格の暴落の為に、主産地のタイ・マレーシアでは生産価格割れとなり、経費が極端に安いカンボジアでも経営に大きな悪影響が出てきました。

上のチャートで、2011年2月天井を付けて、赤丸で囲んだように今年10月に反発しています。

なぜ、反転した可能性が高いのかは、これまでの下落の主な原因となっていた需給の緩みが解消に向かうことが鮮明になってきたからです。

先ず需要の面です。これまで最大の自動車生産・販売国である中国の景気減速に伴って、自動車生産増加がが鈍り、自動車のタイヤで使われる天然ゴムの需要も伸びないと考えられてきました。

ところが、9月頃から北米、中国、欧州の主要国で自動車の販売台数の伸びが顕著になってきました。
特に、景気が弱いと考えられている欧州で9月の販売台数が6.1%増となり、13か月連続で増加しました。
このように、今後は天然ゴムの需要が伸びる方向が明確になってきました。

また、供給サイドの変化も大きく、供給が伸びない状況が明らかになってきました。
特に、世界No1の生産量で全世界の30%を生産するタイが、10月の増産期に入っても現地生産量が増えず逆に少し減ってきています。

さすがに生産原価割れの未曾有の暴落によって、農家がゴム離れしてきているのではないかとの見方が有力です。タイ政府も補助金を出して天然ゴムからパームヤシへの転作を促していることもあり、天然ゴム農園が減る傾向にあります。

これに拍車をかける動きとして、アセアンの主な産地が1.5ドル以下では売らないという一種の価格カルテルが成立したことが伝えられています。
インドネシアの提唱に、タイ、マレーシアも同調して世界の70%を生産する3国が、1.5ドル以下では売らないことに合意したわけです。

当然、この価格カルテルが100%守られるわけではないはずですが、このカルテルを見て国際マーケットの投機資金の売りポジションが減る傾向が明らかになってきました。

また、別の動きとして、タイ政府が580億円もの資金を投入して、ゴム農家から現在の2割高の1kg=60バーツで買い上げるという発表をしています。
これは、農家から政府への突き上げへ対応したものですが、農家は市場に売らずに2割高い政府に売ることになり、市場への供給が減る要因となります。

話がそれますが、タイ政府がなぜ東京市場等の国際市場に介入せずに、農民から買い上げるのかが甚だ疑問です。国際市場に介入すれば、はるかに少ない資金で価格を持ち上げることができるのに、ただ農民から買い上げるのでは大量の在庫を積み上げるだけになり、将来その在庫が放出されて価格低下する問題の種になります。

タイの軍事政権は経済オンチで 、農民の不満が爆発しないように、補助金を農民にばら撒く単純な対応をしているように見えてしまいます。

いずれにしても、このように需要と供給の両面で改善の方向が鮮明になっており、3年8か月間の暴落で1/4になった価格の修正が起こる模様で、我々天然ゴム農園も何とか一息つける日が来そうです。
(まだ来ていませんが)

キャッサバ農園の近況

2014年11月1日

弊社のカンボジア東北部クラチェ州にある250ヘクタールのキャッサバ農園では、4-7月にかけて苗を植え付けました。苗の植え付けは、害虫、水害、雑草などとの戦いで七転八倒しましたが(このブログにも散々書きましたが)、何とか植え終わって一息つき、現在は雑草取りや病気を監視しながら世話をして育てている段階です。

(上は今の キャッサバ農園の遠景)
来年1月から大きなイモが収穫できるかどうかは、この時期にいかにキャッサバの成長を助け、且つ成長を妨げるものを取り除けるかにかかっています。

成長を助けるという点では、7月以降250ヘクタール全体に追肥を施しました。

また、成長を妨げるものを取り除くと言う点ですが、主な成長阻害要因は、水害、病害虫、雑草の3種類です。
先ず水害についてですが、キャッサバは3日程度水につかった状態になると、根が呼吸できずに死んでしまいます。

当農園はまだ雨季の真っ最中で、毎日のようにスコールが降ります。6,7月にはこの連日のスコールの為に
幾つか水没エリアができました。しかし、最近はパワーショベルで排水路を多く作ったために水没エリアは無くなり、水害から免れるようになりました。下は排水路掘りの様子

病害虫について。5月にはメーリーバグ(Mealybug、粉カイガラムシ)という害虫が、山積みした苗の山の中で大発生して、多くの苗を失いました。その後はその教訓を生かし、効果的に殺虫剤を使って殆ど発生を抑えています。

病気に付いてはごく一部にですが、気になる病気が見つかりました。ウィッチーズブルーム(Witch`s Broom) です。これもメーリーバグと並んでキャッサバのペストと呼ばれています。
元々木の病気で、下の写真のように枝が変形して文字通り魔女のほうきのようになってしまいます。

キャッサバでは、全体が小さくなる、葉が小さくなるという症状が出て、結果として根に十分なでん粉が溜まらず収穫量に大きな影響が出ます。
残念ながら、現時点で有効な治療法が無く、発見次第その木を焼却して拡散を防ぐしか対処法がありません。

昨年近隣のタイ、ベトナムで問題になり、今年カンボジアに入ってきて大流行となる可能性が指摘されています。雨季が終わったところで広がるとも言われており、今後警戒が必要です。
我々の農園では、スタッフに発見法を伝えて兎に角早期に発見して対応する体制になっています。

もう一つの成長阻害要因の雑草は、放置するとすぐキャッサバの背丈を超えて日光を奪うので、どうしても対処が必要です。連日のスコールの為に育ちが早く、切っても切っても生えてくるため、現在も30-40人体制で草刈に追われています。

さて、肝心のキャッサバの育ち具合は、場所によってバラつきがあります。植えた時期が早いものはやはり大きな木が多いですし、土壌や雑草の状況にもかなり左右されてしまいます。
ただ、全般的にはまずまずと言えます。中には既に下の写真のように3mになるものもあります。

イモを掘って確認してみると、ひとまずは順調に育ってきています。下は中程度の木のイモ。2kg前後です。
あと数か月で平均3kgくらいまで育つことが目標です。

来年1月の収穫まで、このような病害虫や雑草への対応を地道に続けてイモの成長を待つことになります。

キャッサバ用農機を探しにタイに行ってきました!  その2 タイ現地編

2014年10月21日

前回の記事で、キャッサバの収穫には300人もの人手がかかり、とても集めて上手くは管理できないので、機械化が必要になること。そこで比較的機械化の進んだタイに調査にくることになったところまでお伝えしました。

最初の調査は1か月ほど前です。収穫機を提供でき、バンコクから日帰りで行ける距離の3社の農機メーカーを回りました。
最初のT社は、大手でバンコクの郊外に工場があります。そこではかなり整然としたプレゼンテーションをしてくれ、タイの多くの農園で使っている収穫機を教えてくれました。

下の写真のように、トラクターの後ろに地面を掘り返すバーや板を付けます。

これで、下の写真のようにトラクターを走らせて地面を掘り起して、イモを地表に浮き上がらせます。

浮き上がってきたイモを人手でかき集めるのです。このやり方の利点はトラクターに簡単な付属品を付けて走るだけなので、機械の費用が安く、シンプルなため壊れにくい(壊れてもすぐ取り替えられる)ことです。

但し、結局は浮き上がってきたイモを人手でかき集めねばならず、あまり省力化できません。また、地面を掘り起こす際にイモを傷めてイモの端が約10%程度欠ける場合が多く、その分損になります。
つまり、タイが機械化されていると言っても、現時点ではこのように簡単なレベルが大半ということです。

2件目に尋ねたのは、バンコクから3時間走ったチョンブリ県という場所にあるC社です。
ここは中堅メーカーで、タイの中堅農機メーカーで作っているアライアンスに加盟してかなり情報を持っています。
ここで紹介されたのは、キャッサバを超大規模に生産しているブラジルで使われている機械です。CP社等タイの数千ヘクタールの超大規模農園で導入されています。

イモを10本ほどの小さな棒で地中から掻き出して、ベルトコンベヤーで機械の上まで運んで集めます。掘り出しから集約まで自動で行うので、相当に人手を省くことができます。
ただ、かなりガッチリしていて大がかりな機械なので、費用もそれなりにするため、弊社の規模ではペイしません。

3件目は、バンコクから北西に100kmほど行ったスパンブリ県にあるN社です。
ここは、個人経営の自動車工場から発展したメーカーですが、現実に使える機械を安く作るので、200件以上の出荷実績を持っています。

ここの機械は、ブラジル製の機械を改良してシンプルにし、壊れにくく値段もブラジル製の1/10以下にしていました。
実際のキャッサバ農園で使う様子も確認し、私は、これしかない!と直観しましたが、詳細を確認する必要があるので、一旦資料を持ってカンボジアに戻りました。

先週末、再度この工場を弊社のエキスパートの米司さんと訪れ、収穫機等の詳細を1日かけて確認しました。
下は、ディスカッション風景

収穫機の原理は下の写真のようになっていて、日本で使われるゴボウ収穫機と同じ原理です。
2つのゴム製の回転ベルトで挟んで、キャッサバを地中から引っ張り出して上に集めます。

散々詳細を詰めて米司さんも納得し、導入の方向を決めました。
記念写真です。(右から、N社社長、米司さん、私、N社営業)

今回、一応収穫機は決まりましたが、それだけでは機械化は完成ではありません。
キャッサバを地中から掘り出して一旦集めるところまではこの機械でできますが、それを裁断してまた集めて農場の出荷場所まで運ぶまでを、工場のベルトコンベヤーのようにシステム化する必要があります。

来年1月の収穫開始を目指して、我々の戦いはまだまだ続きます。

キャッサバ用農機を求めてタイに行ってきました!

2014年10月20日

しばらくキャッサバ関連の記事がありませんでしたので、今回は久々に復活したいと思います。

弊社のKratie州の250ヘクタールの農園で、今年の4月から6月にかけて苗の植え付けをしました。
苗の植え付けは、害虫、水害、雑草などとの戦いで七転八倒しましたが(このブログにも散々書きましたが)、何とか植え終わって一息つき、現在は雑草取りや病気を監視しながら世話をして育てている段階です。

次の大仕事は収穫作業です。これまで多くのお金を土地開拓や苗の植え付けに費やしましたが、収穫して売れなければ一銭にもならず、これまでつぎ込んだお金は全てパーになってしまいます。
何としてでも、全て収穫してお金を無事に土の中から掘り起こさなければなりません。

さて、キャッサバは植えてから収穫まで少なくとも8か月程度育てないとイモが十分大きくなりませんので、収穫は早くとも来年1月以降の開始になります。

一方、収穫後の次の植え付けは4月中旬には開始が必要です。さもないと本格的な雨季がきて植え付け用のトラクターが動かなくなります。

従って、収穫作業は来年1月から4月中旬という短期間で終わらせなければならず、そのためには事前に十分な作業計画を練る必要がある訳です。

キャッサバは250ヘクタールで6,000-7,000トン程度の収量になるので、2か月半で収穫するには、1日当たり100トンの収穫が必要です。
これを毎日滞りなく行うためには、農園を一種の工場のように考えて、土の中からの掘り出しから出荷までベルトコンベヤーに乗せて行うようなシステムが必要です。

また、こういった作業を人手で行うか、機械を導入するかということも大きな考慮点です。
例えば、我々の試算では、全ての作業を人手で行った場合、毎日300人のワーカーが必要になります。
(他の日本人経営のキャッサバ農園では、昨年500ヘクタールで600人以上が必要だったとのことです。)

上は棒のような道具でひっかけて人手でキャッサバイモを収穫している様子。(代表的なやり方)

上の場合はあらかじめ、茎を切っておいてからイモを人手で収穫するやり方の様子。

上は、茎を切っておいて人手で収穫されたイモ

ただ、毎日300人のワーカーと言っても第一に現実に集められるかどうかが問題です。集められずに要員不足になると作業がその分遅れて、後工程の苗植え付けができなくなります。
また、たとえ集められても彼らを効率的に管理して働かせることができるかどうかも大きな問題です。

そのため、どうしても機械化して人手を無くしていくことが大きな課題となります。
我々は、これらを考えるために、手分けしてカンボジア国内、近隣のベトナム、タイの農園を見て回りました。

概してカンボジアは後進の為、機械化しているところはほとんどありません。一部の大農園が機械化にチャレンジしているだけです。

ベトナムは、全般に土壌が柔らかいために人手の作業がしやすく、機械化のメリットが出る大規模農園が少ないために、機械化が進んでいません。
タイでは、ベトナムより土が固く、東北部を中心に大規模農園があるので、機械を取り入れる農園が比較的あります。

そこで、我々はタイをレファレンスケースにして、機械化を考えることにして、タイの農機メーカーを尋ねることにしました。
但し、一言でタイの農機メーカーを尋ねるといっても一苦労です。

先ず、インターネットのイエローページでタイの農機メーカーを洗だします。また、インターネットでキャッサバ収穫機の記事を片っ端から抜き出して、メーカーを特定していきます。

このようにして、メーカーを洗い出したのですが、タイでは200社ほどの小さなメーカーがあり、多くは首都バンコク以外に拠点があります。
バンコクでは当然キャッサバ栽培はしていないので、バンコクには大手のメーカー本社があるだけで、そこに聞いてもトラクターに付ける備品等一般的な装置だけで、産地地元ではないので収穫機の情報は得られません。

そこで、地方のメーカーを当たる訳ですが、多くはバンコクから百~数百キロも離れた場所にあるため、簡単には訪問できません。先ず英語は困難なのでタイ語で電話で問い合わせて当たりを付けます。

このようにして、どうにかこうにかキャッサバ収穫機を持っていて、比較的バンコクから近い3社を選んで訪問することにしました。
長くなりましたので、訪問については次回の記事にします。

天然ゴム価格の暴落 「傾向と対策」

2014年10月1日

前回の記事で書きましたように、天然ゴムの国際市場価格はこの3年間で1/4に暴落しました。

主産地のタイ・マレーシアではすでに生産原価を割り、大きな政治問題になっています。
さて、天然ゴムの生産は、タイ、マレーシア、インドネシアで世界の70%を占め、そのうちタイがNo1.で1国で世界の30%を生産しています。
この主要3か国の中で、マレーシアは十数年来価格の比較的不安定な天然ゴムを、パームヤシに転換する政策を進めてきており、現在は十数%程度のシェアになっているため価格決定をリードできません。

また、インドネシアは作付面積ではタイの1.5倍もあるのに、生産量はタイの90%に留まる前近代的な生産体制で、とても価格決定のリーダーになれる状態ではありません。

従って、タイの動向が天然ゴムの国際価格に大きな影響を与え、価格決定(立て直し)のリーダーの役割を担っている訳です。実際、天然ゴムの国際マーケットで現物価格を決めるのは、タイの現物市場です。

タイでは小規模農家が大半を占め、生産原価を割る低価格に苦しんで、10月8日に1万人規模のデモが計画されて大きな政治問題となっていました。騒乱を避けたいタイ軍事政権は、首相が自ら天然ゴム価格対策のための「天然ゴム政策委員会」の委員長に就任して、農家から天然ゴムを買い上げる資金300億バーツ(10億ドル)の拠出を決めました。

この価格対策を受けて、一旦は1万人デモは回避されることになりました。 しかしながら、依然として天然ゴム価格は改善されない状態なので、小規模農家の怒りと苦しみは治まらず、10月8日に向けて緊張が高まっています。

一体全体、この天然ゴム価格大暴落の根本原因は何かというと、生産の過剰です。

2014年の供給過剰量は、約40万トンです。しかしながらこれは天然ゴムの世界全体の年間生産量1160万トンのわずか3.5%程度にしかすぎません。

非常に単純化して言うと、この「たった」3.5%を何とかしさえすれば、供給過剰は解消されて暴落は収まるのです。
一方で、タイ政府は価格のテコ入れのために上記のように10億ドルを用意しています。

例えば、極端な話ですが、供給過剰量40万トンをタイ政府が買ってしまうと幾らかかるかというと、1kg=1.8ドルで買ったとすれば、わずか7.2億ドルで買えてしまいます。タイ政府の既に用意した10億ドルで十分間に合います。

実際には、国際マーケットに介入して買い上げることになるので、7.2億ドルも使わなくとも相場を反転させれば十分に目的を果たせます。

このように、タイ政府による早期の市場介入が重要な対策となりますので、「価格対策委員長」のタイ首相の決断が待たれるところです。

カンボジアでは、人件費をはじめとする経費が極端に安いので、この値段でもまだ利益が出るので大きな問題にはなっていませんし、カンボジア政府には市場介入するような資金力もありません。

従って、他人任せになってしまうのですが、我々カンボジアの農家もタイ政府の動向を固唾を飲んで見守っているところです。

天然ゴム価格の暴落

2014年9月28日

天然ゴムの国際価格が暴落しています。ただし、3年間をかけて徐々にですが3年前の高値の
1/4にまでなりました。

主産地のタイ、マレーシアではすでに生産原価を割っており、大きな政治問題になっています。
実際、タイ現地の農民からのゴム樹液買取価格は、50バーツ(165円)を割ってきており、天然ゴム生産者の大半を占める零細農民には死活問題です。

何故そんなに暴落したのか? 根本原因は需給が緩んで供給過剰気味になっているためです。
先ず、供給サイドですが、グラフでご覧になられるように2008年に天然ゴム価格が高騰しました。

そのため、各国で天然ゴムの新規植え付けが激増したのですが、その時の苗木が成長して5、6年後の去年から今年にかけて樹液が取れ始め、大増産となった訳です。
(天然ゴムは苗の植え付けから5-6年で樹液が取れるようになります。)

次に、需要サイドです。天然ゴムの80%は自動車タイヤに使われます。現在自動車の最大の生産国は中国で、年間2000万台以上が生産されます。かつて最大の生産国だったアメリカは今年1600万台程度に回復した程度です。

中国はご案内の通り近年まで急速な経済の拡大を続けてきました。一昨年くらいまでは「保八」と言われ年率8%の成長率を確保するのが基本政策でした。ところが、昨年からはそれを放棄して身の丈に合った成長速度にするように政策を変更して来ています。

そこで、急速に増産されて来た自動車数に急ブレーキがかかってきました。加えてPM2.5の原因をなくすためにも自動車の増加に規制がかかってきています。

以上のような理由で、需給が緩んで価格も弱くなってきたところに、国際投機マネーが徹底的に売り浴びせてきたために大暴落となったのです。

さて、この暴落の弊社天然ゴム農園への影響ですが、幸いなことにこの状況の下でも利益が出ています。
主産地のタイ、マレーシアでは、上記のように既に生産原価割れの状態ですが、カンボジアでは人件費をはじめとする経費がタイの数分の1と極端に安いために、まだまだ利益が出るわけです。
(弊社の天然ゴム農園)

このように経費が極端に安いことが、私がカンボジアに来た大きな理由の一つです。
ただ、適正な利益を得るためにも天然ゴム価格が早期に戻ることを願っています。

タイ・マレーシアでは、価格を戻すための対策が徐々に取られてきており、価格の底打ちが近いとも言われています。
次回はタイでの現在の対策や、価格を戻すための方策について書く予定です。

オクラの初出荷です!

2014年9月25日

一昨日日本から3週間ぶりに帰国し、ブログの方も1か月半のご無沙汰でしたが、今日から再開します。

元々弊社は天然ゴム、胡椒、キャッサバの大規模なプランテーションを行ってきましたが、今年6月からはプノンペンから100Kmほどのカンポット州チュムキリー郡の数ヘクタールの土地で近郊農業を始めました。
カンボジアでも、プノンペンを中心に有機栽培野菜の需要があるので、弊社も下の写真のような有機肥料を使って有機栽培野菜を提供しています。

さて、弊社の近郊農業の最初の柱はオクラです。 オクラは熱帯原産なので、日本から取り寄せた種がカンボジアでも良く育ちますし、日本の品種はカンボジア在住の日本人に評判が良いのです。

7月中旬から下旬に植えた0.2ヘクタールほどのオクラが、下の写真のように順調に生育し、今日初出荷の日を迎えました。現地マネージャーのマライ君を先頭に3人が1時間をかけて収穫作業をしました。

実は、オクラは放っておくと実の大きさが20cm以上になってしまいます。大きくなるのは良いのですが、同時に固くなってしまい、オクラを主に生で食べる日本人にとっては不味くて食べられなくなってしまいます。

カンボジア人も最近はオクラを食べるのですが、主にスープ等にして火を通すので、生では固い状態のものでも十分に食べられます。
しかし、上記のように生食の日本人向けは10cm程度の大きさでなければなりません。そこで、それ以上大きくなる前に摘み取ってしまう必要があります。

今日の収穫では、残念なことに育ちすぎのジャンボサイズの実が半分以上を占めました。実は昨日、一昨日はカンボジアのお盆に当たるプチュンバンという連休にあたり、出荷ができなかったのです。そのため今日は収穫のタイミングを逃して大きくなり過ぎた実が続出したのです。
(下の写真は大きくなりすぎたもの)

それでも何とか出荷できるサイズのものを集めて、9.5kgが収穫できました。
次は荷造りして首都プノンペンへの輸送ですが、実はこれにもちょっとしたノウハウが必要です。

オクラは数キロ単位で集めると、かなりの発熱をして自分で茹ってしまいます。何故ならオクラの実は、摘まれると自分の位置を直そうと動こうとするので、発熱してしまうのです。
それを防ぐためには、冷やすしかありません。15℃くらいになるとオクラの生理活性が無くなって、動こうとしなくはなくなるので発熱が無くなります。

従って、以下の写真のように運送箱の真ん中に氷を入れた小バケツを入れて冷やしながら輸送します。

カンボジアでは、冷蔵車のようなものはほとんど無く、このような場合は氷を使わざるを得ません。
氷は電気が無いところでも使えて、しかも非常に安いので、50ー60年前の日本がそうだったようにいたるところで冷却に使われます。

話がそれますが、カンボジアでは冷蔵しての輸送がほとんどできないので、食肉用の動物や魚は生きたまま輸送されます。殺してしまうと日本の真夏同様の気候の為に、あっという間に腐ってしまうのです。
実際、国道を走ると身動きできないように縛られた豚や、半死半生状態の鶏を大量に縛り付けたバイクに毎回遭遇します。

さて、今日は初出荷ができ、野菜で初めての売り上げが立ちました。今後は毎日安定した収穫ができるようにスタッフをガイドしていきます。