カンポットペッパーは、カンボジア南西部カンポット州・ケップ州で栽培される、世界的なブランドの有機胡椒です。
今回は、うちのケップ州のカンポットペッパー農園で起こった出来事を通じて、そこで働くカンボジア人の心情についてのお話しです。
<スタッフの怪死と幽霊事件>
2019年1月始めの日曜日、うちの農園スタッフの1人が結婚披露宴に招待され、かなり酔って帰宅し、翌朝早く亡くなっているのが奥さんに発見されました。
実は、その前の週の日曜日にも隣の農園のスタッフが、同じように結婚披露宴の翌朝無くなっていたのです。
この小さな村で、立て続けに同じような死に方が相次いだので、妙な噂が駆け巡りました。
「パーティーでお酒に毒を入れられたのではないか?!」
カンボジア版「林ますみヒ素カレー事件」という感じでしょうか?
「根が素朴でいいやつが多いカンボジア人にも、そんな心の闇があるのだろうか?」という感想でしたが、兎に角スタッフには当面極力結婚披露パーティーには出ないようにお触れを出しました。
それから数日経って早朝、農園のカンボジア人マネージャーから「例の怪死したスタッフの幽霊が出るとのことで、農園に宿直するスタッフが逃げ出して、だれも宿直者が居なくなってしまいます。どうしましょうか?」と言って来ました。
夜の農園の静けさと怪死の恐怖からの錯覚か、誰かが盗みに入るために流した噂におびえたのかわかりませんが、夜誰も農園に居ないと泥棒のやりたい放題になってしまいます。
<切り札はお坊さん>
「どうしたものか?」と思案したところ2013年のことを思い出しました。
2013年にこの農園をジャングルから開拓した時のことです。
ある時、夜にトラクターが無人で勝手に動き出すことが頻発し、開拓していたワーカーが全員逃げ出してしまった事件がありました。
この時は、トラクターの上に豚の丸焼きをお供えしてお線香を立てて、ワーカー全員で改めて地鎮祭のようなことをやりました。
その後、無人トラクターが勝手に動き出すことは無くなりました。
そこで、今回もそれに似た対策が必要と考え、カンボジア人マネージャーには、「すぐにお坊さんを呼んでお祓いをしてもらえ」と指示しました。
その日の昼間にお坊さんを呼んでお経を上げて頂き、スタッフ全員で慰霊のお祈りをしました。(以下の写真)
みんな真剣な表情でお祈りし、お祓いを受けました。
その晩は、カンボジア人マネージャーと主なスタッフが農園に泊まり込んで、幽霊が出ないことを確認しました。
これにて一件落着。
お坊さんへのお布施は20ドル(2000円余り)でした。
お坊さん曰く「幽霊なんていないよ。」それでも、今回のことで、農園で働く普通のカンボジア人の非常に素朴な心の一端が垣間見れたような感じがしました。
<追記:幽霊事件の真相>
さて、幽霊を信じるような普通のカンボジア人の素朴なこころについてのお話しでしたが、
その後1週間くらい経って、幽霊事件の真相がわかってきました。
お坊さんを呼んでお祓いをした直後に、農園の仕掛品保管庫に誰かが穴を開けようとしていた形跡が発見されました。
下の写真は、ブリキ板が切られているところです。
幽霊騒ぎで誰も居なくなった夜間に、保管庫を切り裂いたわけです。
保管庫の場所がわかっているので、内部の者の犯行かと思われました。
兎に角、当面警戒を怠らないようにして、休日の日曜日にもカンボジア人マネージャーを見回りに行かせました。
すると、次の日曜日の昼に留守番役のスタッフが、仕掛品保管庫の壁のブリキ板を切っているところを発見しました。現行犯逮捕です。やはり内部の犯行でした。
このスタッフは、年を取って力もそんなにないのでブリキ板を切るのに時間がかかります。
幽霊の噂をばら撒いて、夜中に誰も居なくなった間にゆっくりとブリキ板を切って、お宝を頂戴しようと計ったわけです。
このスタッフを懲戒解雇・出入り禁止にして、農園に平和が戻りました。
それにしても、今回の事件のように普通のカンボジア人は非常に純朴ですが、残念ながらそれを利用して悪いことをしようとする輩もいるのがカンボジアですね。