「味の手帖」誌でディーン&デルーカの横川代表が、カンポットペッパーを「世界一の胡椒」と書いておられます!

 雑誌「味の手帖」2020年11月号の記事で、ディーン&デルーカ横川代表が「世界一の胡椒との出会い」という題名でカンポットペッパーのことを「世界一の胡椒」と書いておられます。

(出典:味の手帖11月号)

 ディーンアンドデルーカ様では、うちの農園の生胡椒の塩漬けをオリーブオイルと共にアンコールペッパー様がペーストにしたものを扱っていただいています。

 記事では、横川代表のカンポットペッパーとの出会いのいきさつと、カンポットペッパーの歴史や、なぜ他の多くの胡椒と味がそれほど違うのかが説明されています。
ついでに、生産者として私の名前も記事に入れて頂いています。

(出典:味の手帖11月号P63)

 カンポットペッパーの過去の栄光、ポルポト内戦による荒廃と近年の復興の歴史等はこれまでこのブログで取り上げてきた内容と同じです。

 横川代表がこの記事を書くにあたり、アンコールペッパー様経由で「他の国の胡椒とどうしてここまで風味や香りが違うのか?」という質問があり、「カンポットペッパーが固有の「クメール種」であるため」、という回答をしましたが、これも記事に載せて頂いています。

 人種に大きく3種類あるように、胡椒にもインド種、マレー種、クメール種があります。クメール種は、成長が遅く、収量も少ない、病気にも弱いという悪いことだらけですが、唯一味と香りがずば抜けています。

 カンポットペッパーの「世界一の胡椒」と言われる由縁は、このクメール種を手のかかる完全有機栽培で栽培しているこだわりにあります。

 今回、「味の手帖」という歴史ある雑誌でこのように書いていただけたことで、大変感謝、感激しました。

JETRO共催オンラインBtoB展示会「Saladplate」に出展しました。11/2-15のJapan Festivalにカンポットペッパーが登場します!

 コロナ禍でお客様を訪問する営業活動ができにくい中、「オンラインで何かできないものか?」 と考えていたところ、JETRO(日本貿易振興機構)が海外バイヤーとビジネスをするためのオンライン展示会出展社を募集していたので、早速応募しました。

<Saladplateとは>

 世界最大のイベント主催企業Informa Marketsが主催している、「Saladplate」というオンラインBtoB展示会があります。

 アジア最大級の食品&ホスピタリティ業界のオンラインBtoB展示です。

 このオンライン展示会の中に、JETROがJAPANパビリオンを出すことになり、そこに出展する100社の中小企業、大企業を募集したわけです。

 海外企業とのビジネス取引経験を重視されたのか、何とか補助金付きで採用されて10月下旬から出展しています。

(SaladplateのHP:https://www.saladplate.com/)

(Saladplate内弊社サイト)

<1st JAPAN FESTIVAL “Hot Plate Edition”>

 このSaladplateの中で、日本祭、Japan Festivalとして、11/2-11/15に鍋具材、魚介類、調味料に焦点を当てた、「Hot Plate Edition(鍋料理編)」が開かれます。

 鍋料理編ですから、実際に参加企業の具材・調味料を使って寄せ鍋を作って、ビデオプロモーションをします。

 うちのカンポットペッパーも調味料に属するので、プロモーション用寄せ鍋のつけ汁に生胡椒の塩漬けに使うことを提案しました。

 お料理の専門家の先生がうちから送ったサンプルを評価して、「うまい!」とのお墨付きを頂き、寄せ鍋に採用していただきました。

 私も15秒ほどZoom経由で生胡椒の塩漬けの紹介に参加しています。

 寄せ鍋プロモーションビデオはまだ編集中とのことですが、来週からのJapan Festivalが楽しみです。

コロナ禍下の国際郵便事情

 弊社は、カンボジアのカンポット州・ケップ州で、カンポットペッパーという世界的ブランド胡椒を作って、日本を始め海外に出荷しています。

<コロナ禍下のカンボジア→日本への輸送>

 海外出荷の際には、大量であれば船便を使いますが、多くは航空便の国際スピード郵便EMS(Express Mail Service)を使ってきました。

 ダンボール1箱30kgまでの荷物をリーゾナブルな費用で、カンボジアのカンポットから直接日本のお客様の会社まで運べるので大変便利でした。

 ところが、今春からコロナ禍で各国とも鎖国のようになり、国際間の人の行き来が激減したため、航空便も激減しました。

 例えば、東京―プノンペン(カンボジアの首都)直行のANA便は4月から運航停止になり未だ再開の目途もありません。

 このため、航空便で運んでいた貨物も運べなくなり、カンボジアから日本へのEMSも4月から停止になってしまいました。

 そうすると、折角日本のお客様から注文を頂いても、出荷が出来なくなってしまいました。

 日本の4月、5月の緊急事態宣言でレストランが休業したため、胡椒の注文が来ない上に、やっと受注出来ても出荷できない、という泣きっ面にハチ状態です。

 ご注文を頂いたお客様にご迷惑をおかけしましたが、何とか長期間待っていただき、注文をまとめて6月に船便で日本に発送しました。

 9月にカンボジアから日本へのEMSが再開された! という情報が来ましたが、段ボール1箱20kgまででの制限があり、(その後10月に30kgまでに戻りましたが)値段も倍くらいになってとても使い物になりません。

 カンボジアからの出荷が、非常にしにくい状態が続いています。

<コロナ禍下の日本→アメリカの輸送>

 さて、8月末にアメリカのテキサスから、カンポットペッパーに関する問い合わせメールが舞い込みました。弊社ホームページは日本語だけなので、どのようにして見つけて頂いたのか不思議ですが、何度かメールのやり取りをして、「胡椒のサンプルを送ってくれ」、という話になりました。

 早速、サンプルをまとめて小包にして日本の郵便局へ持って行き、EMS発送を頼みました。

 ところが驚いたことに、日本からアメリカの小包EMSは停止になっていて発送できません。(書類EMS発送はオーケーですが。)

 他の航空便DHL等は、基本的に食物は受付けないので、郵便しかありません。

 先方に断って船便にしましたが、昨日時点1か月半以上経ってもまだ届いていません。

 サンプルが届かないことには、その先のビジネスの話も進みません。

 世界一の大国、アメリカと航空貨物のやり取りができず、サンプル輸送も1.5か月以上かかるとは、(文字通り)飛んでもないことですね!

 コロナ禍で数十年前の世界に戻ったようになって、ビジネスのスピードも酷くダウンしてしまいました。

カンボジアは今大洪水

 世界的な高級胡椒カンポットペッパーの産地、カンボジアが大洪水に見舞われています。

 カンボジアでは、10月後半から11月の雨季の最後に大雨が続く年があるのですが、今年は10月に入ってから、日本でいう集中豪雨が連日のように続いています。

 昨年は、反対に珍しく9月末から翌年3月までさっぱり雨が降らず、干ばつ状態になりました。

 そのため、特に黒生姜の成長がストップしてしまう事態になり大きな被害を受けました。

 黒生姜は11月の最後の1か月に急に塊根が大きくなり、内部の有効成分が増すので、昨年は成長ストップの為に収穫量、品質ともに大打撃でした。

 今年は、10月に入っても雨が続いていたので、昨年のような被害は出ないだろうと安心していましたが、逆に雨量が多すぎて被害がでそうです。

 カンポットペッパーは、味と香りは良いのですが、病気に非常に弱く、2-3日根が水に浸かると根腐れ病が出てきます。

 そこで、先日のブログにも書きましたが畝と畝の間を深く掘り、畝を高くして降った雨水がすぐに排水されてしまうように、雨季のピーク前に準備します。

 9月まではそのように準備した排水路だけでうまくいっていたのですが、最近は雨量が多すぎて排水が追いつきません。

 そこで、雨が上がった直後にワーカー総出で、水が溜まっている場所に排水路を追加したりして排水作業に努めます。

 全て人手でチョッカと呼ばれる鍬を振るう作業なので、かなりの人手がかかりますが、放って置くわけにはいきません。

 放って置くと、病気が出て来月からの塩漬け用の生の実の収穫量や、来年3月からの乾燥胡椒用の収穫量が激減してしまいます。

 下の写真の排水路に水が溢れそうになっていますね。

 さて、今は農園以外の場所もこの大雨の被害を受けています。

 トンレサップ川が氾濫して、道路が川になったり、家中に水が溢れたりしています。

 また、幹線道路が寸断されて、隣の州に移動できず孤立する地方が出てきたりしています。

 下の写真は寸断された道路です。道路の片側から水が溢れてもう片側に流れ込みます。道路の下の地盤もコンクリ―ト等で固められていないので、流れ込む水で道路の下が抉られ、道路の一部も流されてしまいます。

 カンボジアは今、至る所水だらけです。

 乾季には数か月間一滴も雨が降らず、道路も土埃が舞って見通しが悪くなるほどですが、雨季のピークには、長い時は1-2か月もこのような状態が続きます。

 カンポットペッパーはこのような苛烈な自然環境の場所で栽培されているのです。

黒生姜(ブラックジンジャー)の成分特許の内容

<黒生姜(ブラックジンジャー)の由来>

 タイでは、黒生姜は「クラチャイダム」と呼ばれ、古来よりメンズ・サプリや女性の美容サプリとして珍重されてきました。

 タイ・ラオス国境の険しい山奥の少数民族の間で、古くから「1日中山を歩き回っても、このクラチャイダムを飲めば、すぐに足の疲れが回復して次の日も問題無く山歩きできる」と言い伝えられていました。

 これを伝え聞いた一般のタイ人の間にも広く使われるようになったとのことです。
 近年、タイの大学が、黒生姜の効果を科学的に検証するためのデータを集め、そこに日本企業が協力して、日本での特許となりました。

 日本の大手サプリ原料メーカーが取得した、中高年の歩行についての黒生姜の効果を記述した、特許文書を抜粋して要約してみます。

(特殊な専門用語ばかりなので、太字以外は気にせず読み飛ばしてください。)

<特許第5931309号、特許第5903191号の抜粋要約-黒生姜の効果>

一般的に65〜70才の人口のうち、約24%は老化による筋委縮を経験しており、20%程度が筋機能が喪失されていることで知られている。身体が老化に伴い、

 ① 各種ホルモン分泌が低下することで、タンパク質を合成する「同化作用」が低下
「タンパク質を合成する作用である同化作用(anabolism)に関与する成長ホルモン、性ホルモン、インスリン様成長因子等のホルモン分泌が減少して、筋肉のタンパク質合成が低下」

 ② 筋肉内のタンパク質を分解する「異化作用」を促進して筋力が低下
「循環炎症性サイトカイン(cytokine)、特に、腫瘍壊死因子−α(tumor necrosis factor-;TNF-)の数値が増加することになる。筋繊維の再生能力を低下させる要因として、炎症性サイトカインの一つであるTNF-αは破損した筋繊維と融合したり、分化を抑制したりして、筋肉内のタンパク質を分解する作用である異化作用(catabolism)を促進して、最終的に骨格筋組織の損失を生じさせることができる」

 ③ 筋肉細胞を増やす「分化」を促進することで、老化で損傷された筋肉細胞を再生可能
「筋肉細胞の分化は、myoD、myf5、myogenin、mrf4等の多様な筋肉調節因子(muscle regulatory factors;MRFs)によって調節される。MyoDは、筋肉の特異的遺伝子の発現を開始することにして、間葉幹細胞(mesenchymal stem cells)が筋肉細胞の系列に分化することを誘導する。Myogenin発現の誘導は、myoD活性によって調節される。損傷された筋肉細胞の再生は、老化または慢性炎症により発生した筋委縮症を予防または治療することができる」
 黒生姜(学名:ケンペリア・パルウィフローラ)により筋肉細胞を減らす「異化作用」を減らし、筋肉細胞を増やす「同化作用」と「分化」を活性化させることが判明した。

「天然物由来の筋機能の調節物質を探索した結果、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora Wall. ex Baker)抽出物及びこれに含まれたフラボン系化合物が筋肉内のタンパク質異化作用を減らし、筋肉細胞の分化及び同化作用を増加させる活性があることを見付けて本発明の完成に至った。」

<特許第5863721号の抜粋・要約-黒生姜の効果>

抗酸化剤、抗老化剤、抗炎症剤、育毛剤、抗肥満剤、及び美白剤について本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ブラックジンジャーの抽出物が、

(1)優れたスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)様作用、一重項酸素による膜脂質の過酸化抑制作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有し、抗酸化剤として有用であること、

(2)優れたマトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)活性阻害作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)mRNA発現上昇抑制作用、及び表皮角化細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有し、抗老化剤として有用であること、

(3)優れたヘキソサミニダーゼ遊離抑制作用、一酸化窒素(NO)産生抑制作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)活性阻害作用の少なくともいずれかを有し、抗炎症剤として有用であること、

(4)優れたアンドロゲンレセプター拮抗作用及び毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有し、育毛剤として有用であること、

(5)優れたサイクリックAMP−ホスホジエステラーゼ活性阻害作用及びラット副睾丸脂肪細胞を用いた脂肪分解促進作用の少なくともいずれかを有し、抗肥満剤として有用であること、

(6)優れたエンドセリン−1mRNA発現上昇抑制作用及びSCFmRNA発現上昇抑制作用の少なくともいずれかを有し、美白剤として有用であることを、それぞれ知見した。」

 科学的に検証され、特許にまとめられた黒生姜の効果は様々なものがありますね。黒生姜には、この様にいろいろと良い働きをする成分が数多く含まれています。

 <黒生姜の有効成分の効果的な摂取方法>

 さて、世の中に出ている黒生姜サプリには、以下の2種類があります。
 ① 黒生姜から幾つかの有効成分だけを抽出したもの
 ② 黒生姜全体をパウダーなどにして全て摂れるもの

 本当に黒生姜の効果を全て摂取するためには、黒生姜全体をパウダーなどとして摂ることが大切です。

 黒生姜パウダーはそれ自体苦いもので、この苦味に有効成分が入っています。
苦味を感じずに飲む方法としては、次のやり方があります。
 ① 熱湯に溶かして、砂糖、ハチミツ、パームシュガー等の甘味料を加える。
 ② 黒生姜パウダー1g、モリンガパウダー3gを1リットルの熱湯に溶かす。
モリンガの芳しい味と香りで大変飲みやすくなります。
 ③黒生姜パウダーを、バター紅茶、バター珈琲に加える。
脂肪分が苦味を抑えてくれます。

 また、サプリになっていない、黒生姜の塊根のドライチップもあります。
 ①これをお湯で煎じて飲む
 ②これをハチミツと一緒に焼酎(ホワイトリカー)に漬け込んで飲む
(黒生姜1kg、ハチミツ1kg、ホワイトリカー5kgで、1週間漬ける)
というのも黒生姜の発祥地タイで行われていて、有効です。

カンポットペッパーの生の胡椒の塩漬けが、カルディ様で発売に!

 弊社のカンポットペッパー、生の胡椒の塩漬けが、カルディ様の店頭で販売開始になりました!

 弊社が生産・輸入したものを、「クレージーソールト」で有名な日本緑茶センター様のブランドでの発売です。

 「KAMPOT PEPPER」のパッケージが目印です。

 まず東京地区中心の販売の模様で、カルディ様が東京に97店舗もあるので、弊社日本の販売会社のある調布市の調布パルコ店様にあるかな? と確認しましたが、下の写真のように発見されました。 

 日本緑茶センター様とお話を始めてから4年越しで発売に漕ぎつけたので、感動もひとしおです。

 約5年前に前職の元上司の方の紹介で、日本緑茶センター様の前の社長さん(現社長の父上)にお会いして商品をご紹介しました。昨年再度別の方の紹介で現社長にお会いし、紆余曲折の末にカルディ様での販売に至りました。

<生の胡椒の塩漬けとは>

 生の胡椒の塩漬けとは、ブラックペッパーの生の実を塩漬けにしたもので、胡椒本来の味と風味をそのまま堪能できます。

 有機JAS認証を取得している、カンボジアの自社農園Cedar Farmで無農薬・完全有機栽培したブラックペッパーの実を房ごと収穫し、1粒1粒手で房から外し、実に付いているヘタの部分も完全に取り去ります。

 その後、地元カンポット州の天然の海塩を使って、完全無添加で塩漬けにしたものです。

(下の写真は、カンポットの塩田風景)

 カンボジアの首都プノンペンのイオンモールにある外国人向けお土産屋さん、Amazing Cambodiaさんでも(外人観光客の来たコロナ禍前は)売れ行き好調で、試食した方のなんと7~8割はお買い上げになったそうで、洋の東西を問わず人気です。

<生の胡椒の塩漬けの食べ方>

 粒のままで、または刻んでお料理に添えます。

 肉料理、魚料理、パスタ、サラダ、コーンスープなど多くのお料理に合います。面白いところでは、納豆や卵かけご飯も絶品です。

 (下の写真の黒い粒が生の塩漬け胡椒です) 

 だんだん寒い季節に向かっていますので、時節柄鍋料理に焦点を当ててみます。

世界の鍋料理の多くと相性が良いですが、例として
中華 火鍋 (大骨火鍋(豚)、魚头火鍋(魚)、海鮮火鍋、羊骨火鍋(羊)、牛肉火鍋)のつけ汁用に、刻んで、辣油、麻辣、パクチーまたは大葉、ネギ(大・小)などと。
イタリアン カルボナーラ鍋トマトソース・チーズを使った鍋 そのままか刻んで添える。
和食 水炊き、寄せ鍋 食べる直前に、そのままか刻んで鍋の中に適量入れる。またはつけ汁に刻んで加える。
ロシア ボルシチ そのままか刻んで鍋の中に適量入れる。
フランス ポトフ

 皆様もぜひお試しください。意外なお料理に合う発見があるかもしれません。

カンポットペッパー農園は、連日集中豪雨です。

 カンポットペッパーは、カンボジア南西部カンポット州・ケップ州で栽培される、世界的なブランドの有機胡椒です。

 カンポット州・ケップ州にある弊社のカンポットペッパー農園は今、雨季のピークを迎え、過酷な自然と闘いながら胡椒の木を守り育てています。

<カンボジアの雨季のピーク>

 カンボジアは、北緯約14度の熱帯にあり、年間雨季と乾季の2シーズンがあります。

 大体毎年5月~10月の半年が雨期、11月~4月の半年が乾季です。

 この雨季の中でも、毎日雨が降っているわけではなく、年ごとにかなり異なりますが、何週間か雨が集中したかと思うと、その後2週間くらい全く降らない時期もあります。

 ところが不思議なことに、毎年9月中旬のプチュンバン連休(カンボジアお盆)時期には必ずといっていいほど大雨が集中します。

 果たして、今年も毎日のように豪雨です。

 この豪雨は、「スコール」と呼ばれ、直前までよく晴れていても、急に冷たい風が吹いてきて空が暗くなり、にわかに大粒の雨が叩きつけてきます。

 特徴は、日本の集中豪雨のような大雨だけでなく、台風のような強風も吹き荒れることです。

 スコールは、1、2時間ほどで上がりすぐ晴天になる日もありますが、1日中降り続く日もあります。

<スコールのカンポットペッパー農園への影響>

 9月中旬のピークには、この1日中降り続く日が1週間から3週間くらいも連続することがあり、日本の集中豪雨の比でない水量で、カンポットペッパー農園も溢れ返ることになります。

 しかし、胡椒の木は2,3日間根が水に浸かると根腐れなどの病気が出てしまいます。

 特にカンポットペッパーは、クメール種という味と香りは良いが病気にすこぶる弱い品種を栽培していますので、冠水しないように一刻も早く排水することが大切です。

 その為に、毎年雨季ピーク前には、左下の写真のように畝ごとに排水路を掘り、胡椒の根の上に土を盛って小山のようにして、雨が降るそばから流してしまうようにします。

 また、スコール直後には農園全体を見回って、水溜まりができていないかを確認し、万一できていればすぐに排水路を掘って排水します。

 右下の写真は、スコール直後に大量の水が排水されてしまった様子です。

 このように排水路を掘ると、雨水をすぐ排水するだけでなく、スコールで畝に浸み込んで胡椒の根の近くの地中に溜まった水も、大雨が上がった後にすぐに排水路まで押し出されてきます。

 このため、根が長期間水に浸かった状態を避けることができます。

 スコールのもう1つの脅威、強風も農園を破壊します。

 左下の写真は、スコール後に強風で胡椒の添え木がくの字に折れてしまった状態、右下は農園ハウスの屋根が壊れた様子です。

 左上のように、胡椒の添え木が折れてしまうと、胡椒が引っ張られてストレスを受けたり、最悪は胡椒も折れてしまうこともあります。

 今日の午前中は晴れたので、昨日・一昨日のスコールで折れた添え木の取り換え作業を行いました。下の写真は交換用の新しい添え木を運んでいる様子です。

 一滴の雨も降らない炎天が数か月間続く乾季だけでなく、このように雨季も熱帯の自然は大変過酷です。

 私たちは、過酷な自然と闘いながら、病気に弱くとも味と香りが最高級のカンポットペッパーを作り続けています。

カンポットペッパー農園の出来事

 カンポットペッパーは、カンボジア南西部カンポット州・ケップ州で栽培される、世界的なブランドの有機胡椒です。

 今回は、うちのケップ州のカンポットペッパー農園で起こった出来事を通じて、そこで働くカンボジア人の心情についてのお話しです。

<スタッフの怪死と幽霊事件>

 2019年1月始めの日曜日、うちの農園スタッフの1人が結婚披露宴に招待され、かなり酔って帰宅し、翌朝早く亡くなっているのが奥さんに発見されました。

 実は、その前の週の日曜日にも隣の農園のスタッフが、同じように結婚披露宴の翌朝無くなっていたのです。

 この小さな村で、立て続けに同じような死に方が相次いだので、妙な噂が駆け巡りました。

 「パーティーでお酒に毒を入れられたのではないか?!」

 カンボジア版「林ますみヒ素カレー事件」という感じでしょうか?

 「根が素朴でいいやつが多いカンボジア人にも、そんな心の闇があるのだろうか?」という感想でしたが、兎に角スタッフには当面極力結婚披露パーティーには出ないようにお触れを出しました。

 それから数日経って早朝、農園のカンボジア人マネージャーから「例の怪死したスタッフの幽霊が出るとのことで、農園に宿直するスタッフが逃げ出して、だれも宿直者が居なくなってしまいます。どうしましょうか?」と言って来ました。

 夜の農園の静けさと怪死の恐怖からの錯覚か、誰かが盗みに入るために流した噂におびえたのかわかりませんが、夜誰も農園に居ないと泥棒のやりたい放題になってしまいます。

<切り札はお坊さん>

 「どうしたものか?」と思案したところ2013年のことを思い出しました。

 2013年にこの農園をジャングルから開拓した時のことです。

 ある時、夜にトラクターが無人で勝手に動き出すことが頻発し、開拓していたワーカーが全員逃げ出してしまった事件がありました。

 この時は、トラクターの上に豚の丸焼きをお供えしてお線香を立てて、ワーカー全員で改めて地鎮祭のようなことをやりました。

 その後、無人トラクターが勝手に動き出すことは無くなりました。

 そこで、今回もそれに似た対策が必要と考え、カンボジア人マネージャーには、「すぐにお坊さんを呼んでお祓いをしてもらえ」と指示しました。

 その日の昼間にお坊さんを呼んでお経を上げて頂き、スタッフ全員で慰霊のお祈りをしました。(以下の写真)

 みんな真剣な表情でお祈りし、お祓いを受けました。

 その晩は、カンボジア人マネージャーと主なスタッフが農園に泊まり込んで、幽霊が出ないことを確認しました。

 これにて一件落着。

 お坊さんへのお布施は20ドル(2000円余り)でした。

 お坊さん曰く「幽霊なんていないよ。」それでも、今回のことで、農園で働く普通のカンボジア人の非常に素朴な心の一端が垣間見れたような感じがしました。

<追記:幽霊事件の真相>

 さて、幽霊を信じるような普通のカンボジア人の素朴なこころについてのお話しでしたが、

 その後1週間くらい経って、幽霊事件の真相がわかってきました。

 お坊さんを呼んでお祓いをした直後に、農園の仕掛品保管庫に誰かが穴を開けようとしていた形跡が発見されました。

 下の写真は、ブリキ板が切られているところです。

 幽霊騒ぎで誰も居なくなった夜間に、保管庫を切り裂いたわけです。

 保管庫の場所がわかっているので、内部の者の犯行かと思われました。

 兎に角、当面警戒を怠らないようにして、休日の日曜日にもカンボジア人マネージャーを見回りに行かせました。

 すると、次の日曜日の昼に留守番役のスタッフが、仕掛品保管庫の壁のブリキ板を切っているところを発見しました。現行犯逮捕です。やはり内部の犯行でした。

 このスタッフは、年を取って力もそんなにないのでブリキ板を切るのに時間がかかります。

 幽霊の噂をばら撒いて、夜中に誰も居なくなった間にゆっくりとブリキ板を切って、お宝を頂戴しようと計ったわけです。

 このスタッフを懲戒解雇・出入り禁止にして、農園に平和が戻りました。

 それにしても、今回の事件のように普通のカンボジア人は非常に純朴ですが、残念ながらそれを利用して悪いことをしようとする輩もいるのがカンボジアですね。

カンポットペッパー 有機JAS認証の難しさ

 前回、有機JAS認証取得の経緯をお話ししました。審査を受けるための資料作りや現地審査の苦労談でしたが、本当の難しさは、有機栽培そのものにあります。

<「有機」・「オーガニック」の定義>

 日本で「有機」や「オーガニック」を名乗るには、農水省の有機JAS認証が必要ですが、認証されてJASマークの付けられる「有機」・「オーガニック」の定義は、

・胡椒など多年草は3年間、作付け前に畑に農薬・化学肥料を使わない

・栽培中も農薬・化学肥料を使わない

・遺伝子組み換え種子を使わない

・病害虫の駆除に農薬を使わない

など、厳しい基準があります。

この基準を守っているかどうかを、認定機関が生産行程記録や現地を毎年審査して確認します。

<安心・安全な有機栽培が広がらない原因>

 日本でも海外でも、多くの農家が身体や環境に影響があると言われている農薬や化学肥料を使って栽培しています。

 「有機栽培」は農薬(除草剤や殺虫剤など)や安い化学肥料が使えない為、除草や害虫駆除などの人件費が余計にかかってどうしてもコスト高になり、経営が難しい。

 現在、有機JAS認定されている農産物は日本全体の0.2%と言われています。

<有機栽培カンポットペッパーの難しさ>

 カンポットペッパーの場合、実は更に難しさがあります。

  • クメール種

 カンポットペッパーは、カンボジアに特有の味の良いクメール種を限定栽培しています。

 ところがクメール種は、他のインド種やマレー種に比べて、成長が遅い、病害虫に弱い、収量が少ないという欠点があります。良いのは味と香りだけです。

 特に病害虫に弱いことは、農家にとって致命的に近いですが、例えばスコールが続いて数日水に浸かったりすると、すぐに根腐れ病が出てきます。

 それを防ぐために、排水溝を沢山掘って排水に努めたり、良い微生物の多い土づくりをして病原菌の増殖を防いだりと、大変に手間がかかります。

 Cedar Farmでも、良い土づくりの為に、牛糞堆肥、ゴム葉の堆肥、カニ殻などの有機肥料に取り組んでいます。

 葉を食べる害虫には、殺虫剤を使えないので、クレンスレングという毒の木の実やタバコなどを使って虫よけの散布剤を作りますが、殺虫剤のようには簡単には効きません。

ミニパワーショベルで排水溝を掘る 良い土づくりの為の牛糞堆肥
  • カンボジアの気候

 熱帯で雨期には豊富な雨が降り、強烈な日光に恵まれているので、雑草が見る見るうちに育ってしまいます。日本の数倍の雑草の成長速度です。ところが、除草剤が使えないので、除草は全て手作業になり、日本の有機栽培以上に大きな工数がかかります。

人手による除草作業の様子 手作業での選別

 上の写真のように選別作業もすべて人手ですから、カンポットペッパー栽培には、膨大な人手がかかり、人件費の安いカンボジアでなければとてもできません。

 このように多くの労働力をかけて病害虫と戦いながら、味と香りの良いクメール種の胡椒を、安心・安全のために有機栽培しているのが、カンポットペッパーです。

カンポットペッパーと黒生姜の有機JAS認証取得の経緯

 海外で農園などをやっていると、どこで見つけて頂いたのか、農水省から海外農業事業者向けのセミナーや視察旅行の案内などをメールでいただくようになりました。

 2018年の農水省メールの中に有機JAS認証取得費用の補助金の案内があったので、お金が出るならと割と気軽に応募してみました。色々やり取りした結果採択になったので、真剣に取り組まざるを得ない状況になってしまいました。

 カンボジアの農園まで来て現地審査してもらえる認定機関なんてあるのかな? と探したところ、1件福岡市の認定機関で海外審査していただけるとのことだったので、お願いをしました。

 審査料金を前払した後、認定機関さんの方から、現地審査前に大量の資料作成をするよう指示が来ました。

 質・量共に大変な内容なので半分後悔しましたが、後の祭り。大枚の審査費用を無駄にできないし、農水省の手前もありますので、作るしかありません。

(資料の例)

農園地図 概要図と詳細地図(隣との境界含めてメートル単位のサイズ付き) 全農地、倉庫、作業場
生産行程管理記録 耕作、播種、除草、施肥、収穫等の作業日付、数量、使用した農機具記録。全部の農地について4年以上分を整理。
農機具洗浄記録 鋤、シャベル、籠、はしご、各種作業機械、等々全部です。
種、肥料の入手記録、肥料の有機証明を取得。…等々

 2018年12月、2019年1月は、昼間農園で汗を流してから毎晩眠気と戦いながら、過去の記録をひっくり返しながら資料作成です。何しろ現地の日本人は私1人ですので、半分泣き!という感じで、折角作った資料を認定機関に送ると、ダメ出しの嵐で心折れそうになります。

 何とか資料の形を付けて、2月初旬に福岡から審査員さんを首都のプノンペン空港に出迎えました。夕刻にプノンペンからカンポット州まで約150kmをタクシーで戻ろうとしましたが、旧正月休みでタクシーがいない! 仕方がないので、普通は数km程度しか乗らないトゥクトゥクを無理やり雇って150km走破しました。オープンカー状態なので、到着時には道路の土埃で全身ドロドロです。

 翌日から、農地や加工場などの現地審査です。事前に提出した地図を手に土地の形、サイズ、農園内部の状況、隣との境界でドリフトがないか、農具は事前申請通りか、等々を1週間かけて細かくチェックされました。連日35℃以上の暑さの為、真冬の日本から来た審査員さんもグッタリ。

 やはりというか、事前作成の地図が不充分だったので、現場で大汗をカキながら数百メートルの距離を何度も測り直して修正作業です。

 最後にやっと有機JAS行程管理者用の講習も終わり、これで終了!と ヌカ喜びしたところで宿題が出ました。農園で使っている井戸水が「飲料適」である証明がないとダメとのこと。

 審査員さんを日本にお帰しした後、「カンボジアで水質検査してくれる検査機関なんてあるのかな?」と思いながらも、プノンペンの端まで行って探し出して、何とか検査を終わらせました。

 結局、2019年3月初旬にやっと有機JAS認証書が届きました。

 そのあとに農水省の補助金申請ですが、独特の申請書の書き方に苦戦して2回差し戻しの末、最後は先方があきらめて、1行ずつ書き方を教えて頂きました。

 このように紆余曲折ありましたが、カンポットペッパー協会に確認したところ、カンポットペッパー農園で最初の有機JAS認証とのことです。

 何事も最初にやるのは大変ですね。