パリのカンポットペッパー

 欧米、特にフランスではカンポットペッパーは胡椒のトップブランドです。

 これは、カンポットペッパーの歴史にも関係があります。

<カンポットペッパーが欧米でトップブランドになった経緯>

 1887年にフランス領インドシナが成立し、カンボジア、ベトナム、ラオスはフランスの植民地になりました。

 フランスは、胡椒原産地のイギリス植民地のインドやマレーシアに対抗して、20世紀に入るとカンボジアやベトナムで盛んに胡椒を栽培しました。そのため、フランスで使われる胡椒はカンボジア、ベトナム産が主流になり、また他のヨーロッパ諸国にも大いに輸出しました。

 1960年代のカンボジアの胡椒の総生産量は、約1.5万トンで、現在の日本の胡椒の年間消費量の約2倍にもなります。

 カンボジア、ベトナムで栽培される胡椒のうち、カンボジアのカンポット州産の胡椒は、「カンポットペッパー」と呼ばれ、その特別の味と香りにより最高級品としてパリの高級レストランで使われていました。

 これが、カンポットペッパーが、フランスをはじめとする欧米でトップブランドとなった経緯です。

<内戦による荒廃と復活>

 ところがその後、1975年のポルポトによるカンボジア支配が始まり、虐殺や極端な共産化政策により、カンポット州をはじめ、カンボジア全土の胡椒生産は壊滅してしまいました。

 例えば、弊社のケップ州(元のカンポット州ケップ郡)の農園もポルポトの内戦前は、フランス人経営の胡椒農園だったとのことですが、2013年に私が再開するときには深いジャングルになっていました。

 このあたりはすごい田舎で、今は牧歌的な景色が広がっていますが、実際に戦闘の舞台になっていたという話が伝わっています。

 平成3年(1991年)のパリ和平協定により、やっと内戦が収まり、1990年代後半には、生き残っていた現地の人々により、胡椒の生産が再開されたが、その時には既に、「カンボジア産高級胡椒」というブランドは、過去のものとなっていました。

その後の努力により、2008年(平成20年)にはWTOのGI(地理的表示)を取得して世界的な地域ブランドとして認められ、参入し生産が拡大しつつあります。

(GIとは世界貿易機関(WTO)協定に基づく一種の知的財産。製法や品質基準などを満たした特定産地の農水産物に、産地名を付けてブランド化し、他の農産物との差別化を図る。ワインの「ボルドー」がその一例。)

 前のブログでも述べましたが、TIME誌(2012年1月16日号)はカンポットペッパーの復活を祝って「普通の胡椒はテーブルワイン、カンポットペッパーは上質のボルドーワイン(ファイン・ボルドー)」と。書いています。

<現在のパリのカンポットペッパー>

 現在もパリではカンポットペッパーはトップブランドで、高級スパイス専門店でも高値で売られています。

 特に、フランス植民地時代にフランス人が発見した、カンポットペッパー特有の「赤胡椒」は、Poivre Kampot rouge と呼ばれ、その独特の旨味の為に最高値で販売されています。

(以下は、パリの高級スパイス専門店のインタネット販売ページの抜粋)

Epices Roellinger】

Albert Menes】

Sur Les Quais】

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