今年の生姜収穫と植付の顛末

2015年6月18日

前回の記事の続きです。昨年植えた生姜は1月下旬に地中で一部が枯れてきたので、急いで収穫して、2月に種生姜として再度植え付けました。

この間約1か月、毎日炎天下の農園に張り付いて、インプラント手術の痕が膿んで顔が腫れ「コブ取りじいさん」の様な顔になりながら、植付を進めました。(ここまで前回の記事

2月下旬に植え付けが終わり、ホットしたのも束の間、今度はすぐに水の手当に追われました。
生姜は植付直後は特に大量の水が必要です。地中の生姜の表面全体に十分な湿り気がないと、発芽せずに枯れてしまいます。

今年は植付面積を拡大したので、2月の植付中に井戸を追加で掘りました。昨年までの常識では、この井戸追加で十分な水が得られる予定でした。

しかし、一部の畑では水が十分に地中の生姜まで届きません。下の写真は水やり後に掘り返して、水がどこまで届いているかを見た様子です。

黄色の矢印が地表面で、湿っています。一方、白矢印は地表から数cm下の部分ですが、水が入っていません。この様に、昨年と同じ水のやり方では水が十分な深さまで入って行きません。

「生姜の専門家」の話では、この水の入って行かない場所は「まさ土」という土質で、乾燥するとセメントのように固くなり、水をはじいてしまいます。
確かに、乾いても固くならないように燻炭を加えてはいますが、前回の記事のように2月に急遽植えたために、十分な燻炭の準備ができていませんでした。

そこで、至急もう一本の井戸堀を掘って、更に多くの水をやることにしました。そこで、業者に発注するのですが、待てど暮らせど農園に来てくれません。「明日行きます」でドタキャンの嵐です。

エルニーニョ現象のお蔭で、カンボジア中で乾季に大変な水不足に陥り、あちこちから井戸掘り業者が引っ張りだこになっていたためです。

仕方がないので、井戸が掘れるまで既存の全ての井戸から水を24時間汲み上げて、十分に水の入って行かない場所に集中的に撒きました。

3月の下旬にやっと井戸掘り業者が来てくれて、やれやれと思いましたが、またまた問題が発生しました。
2月に、コブ取り爺さんになって植えた生姜の芽の出方が悪いのです。やはり水の入って行かなかった場所は極端に悪い結果です。

2月の連日炎天下の悪戦苦闘が報われない結果となり、一時呆然となりました。不運の連続に、お祓いをしたいような気分にもなりました。

どうしたら良いのか? 2月の植付分が上手く行かなかったので、このままでは収穫量は少なくなり、売り上げも不足します。「播かぬ種は生えぬ」なので、どう考えても、芽の出なかった分を補てんするための再植え付けが必要です。

しかし、芽の出なかった場所に再度植え付けても、同じやり方では結果は同じになるでしょう。

「生姜の専門家」の日本人の方々は、「まさ土」なので、大量の燻炭等で土質改良するしかない、と仰います。
しかし、本当に土を改良するためには、莫大な量の燻炭等が必要になり、時間的にも、費用的にも現実的ではありません。

数日考え込んで、中々眠れない日が続きました。ある時、ふと気が付きました。「今まで自分は「専門家」に頼って、自分であまり考えずにそのガイドに従ってきた。しかし、「専門家」もほぼ教科書どうりのことしか言わず、現実的な解決策が出てこない」

「それならば、自分の頭で解決策を考えるしか外に道はない。」と自分の思考停止を反省しました。
すると、薄々気が付いていた現象が頭に浮かびました。

水の入って行かなかった場所では、最初は1畝に1株を植える1条植えをしていましたが、途中から土地の節約のために、1畝に2株植える2条植えに変更しました。

ところが、1条植えに比べて2条植えの芽の出方が極端に悪いのです。
1条植えの方が水が地中に入りやすい、と言うことですが、何故か?

すごく下手なポンチ絵で恐縮ですが、上の図の左は1条植えで、種生姜が1つ畝の中心に植わっています。畝のトップは少し平たいので、水をかけると、水がある程度は中心部分に留まり、やがて地中に入って行きます。

図の右は2条植えで、生姜が2つ端近くに植わっています。水をやっても畝の下にすぐ流れ去ってしまい、地中に入りません。畝の形が凸型になっているためです。

下の写真は2月の植付の様子です。黄色矢印の黒い(燻炭の)部分に生姜を植えていますが、畝のトップがこの形では、水をやってもすぐ流れ去ってしまいます。

それでは、いっそのこと畝のトップを凹型にすれば、水が流れ去らずに留まって地中に入るはずです。
極端な話、畝を作らずに、逆に穴を掘れば水は確実に溜まります。しかし雨が多い時期の水はけを考えるとやはり畝は必須ですから、畝のトップ部分だけを凹の形にすべきです。

芽が出た後の雨が極端に多ければ、凹型の一部を切って水が流れ出るようにすれば良いわけです。

芽の出なかった原因は、土質の問題もあるが、主には畝の形が悪かったためでした。「生姜の専門家達」の教える普通の畝では、ここの土質に合わなかったのです。

そこまで考えが至ると、現実的な解決策が見えてきました。畝のトップを凹にして、更に畝の生姜の根が太る部分に出来る限り多くの燻炭を入れて、土質も柔らかくします。

実際には、下の写真の赤い円内のように、畝の上部をへこませて、生姜をその凹みの中に植え、生姜の周りに水が溜まるようにします。

この様に、4月下旬に再植え付けを行い、結果を固唾を飲んで見守りました。

結果は、植えてすぐに表れました。通常よりも早く多くの芽が出て元気よく育ち始めました。(下の写真)

後になって見てみると全く当然の結果で、つい、なぜ最初にあんな形の畝にしてしまったのかと悔やまれます。
自分の頭でしっかり考えなかったために、「普通のやり方」を鵜呑みにして損失につながってしまいました。

カンボジアでの七転八倒は続きますが、一歩一歩改善しながら進んで行きます。