日本人がカンボジアで農業をする2つのパターンと大規模な土地取得

2014年3月31日

先日の記事に対して、カンボジアで野菜を作りたいとコメントを頂いたのですが、コメント欄ではお答えし切れないので、話を膨らませて記事にします。

日本人がカンボジアで農業をする場合には、2つのパターンがあると思います。
この2つのパターンでは、作る作物、売り方・売り先、農地の場所と広さ、個人事業か会社で事業をするかが異なります。

<パターン1 プランテーション>
第1のパターンは、私のやっているようなプランテーションです。
プランテーションでは、主に輸出用の商品作物、米、天然ゴム、キャッサバ、胡椒、トウモロコシ等を作ります。

輸出用に、国際市場価格が決まっているものを作るので売値は保障され、カンボジアの安い労働力や土地代を生かして利益を上げることができます。

売り先は、最終的にはタイ、ベトナム、中国等海外に届いて消費されますが、多くの場合、仲買人を経由して売ることになります。 プランテーション農園には、多くの仲買人が買い付けにやってきます。
勿論、国境近くの農園からは自分でベトナム等に運んで、仲買人の買値よりも高く売ることも可能です。

米、天然ゴム、キャッサバ、トウモロコシ等では、1ヘクタール当たりの売上額は低いので、ある程度の売り上げの為には大きな土地が必要で、従業員も当然大勢必要になります。

従って、会社組織にするのが向いている訳です。

<大規模な土地の取得法>
実際、大きな土地の取得のためには、会社を作る必要があります。
カンボジアでは土地は国有地、民有地がありますが、安く広い土地を確保するためには、国有地の取得(長期借地)が妥当です。

現在民有地の価格は、1ヘクタールあたり数千ドルですが、大規模な国有地は1ヘクタールあたり数百ドルです。
この国有地は1000ヘクタール以上は、Economic Land Concessionという制度、1000ヘクタール以下の場合は、ダイサハッコムという制度で取得します。

このどちらの制度を利用する場合にも、会社でなければなりません。
また、どちらの制度でも土地の所有権を買えるわけでは無く、70年程度の長期借地になります。

Economic Land Concessionを利用して、多くの中国、ベトナム、韓国企業が進出してきています。
弊社も2011年8月にKratie州の2000ヘクタールを申請して、2013年1月に一旦承認が下りましたが、その直後に制度自体が凍結されています。
このEconomic Land Concessionの経緯については、別途記事を書きます。

Economic Land Concession制度はかなり知られていますが、ダイサハッコムの方はカンボジアでもその存在を知っている日本人はカンボジア・ブログで有名なG氏と私くらいだと思います。(同じときに聞いたので)

Economic Land Concessionは、国の政府に申請して農林水産省、環境省、国土開発建設省等の役所と地元の州政府の合意を経て、最終的にフンセン首相が認可判断を下します。

一方、ダイサハッコムは、州政府に管理が任されている1000ヘクタール以下の国有地を対象にしており、最終的には州知事の認可で使用可能になります。
Economic Land Concessionでは、多くの場合土地代として支払ったお金と仲介者の手数料の区別がつかず、どの金額が国庫に入るのかはっきりしませんが、ダイサハッコムでは国庫に入るお金が明確になっています。

野党にその弊害を攻撃されて凍結されたEconomic Land Concession制度を改善するために、この制度をダイサハッコムに統合する改善策が、現在国会で討議されているとのことです。
但し、実際に改善されて凍結が解除されるのは、与野党合意によって国会が正常化した後になる公算です。

<パターン2 近郊農業>
プランテーションに対してもう1つのパターンは、野菜等をプノンペン近郊で作る、近郊農業です。
消費者のプノンペン市民に新鮮な野菜を届けるためには、プノンペンの近くに農地を持つ必要があります。

また、大きな土地で大量に作ってもそんなには売れないので、土地の大きさも1ヘクタールから数ヘクタール程度になります。従業員数もそんなに必要ないので、会社組織にする必要もありません。

実際、会社を設立すると、設立の一時費用2000ドル程度の他に、毎月の事務所賃貸料、経理費用500~1000ドル、売上税1%、毎年の決算、パテント(営業ライセンス)更新費用1000ドル程度がかかります。

また、税務署は外国企業(代表者が外国人の企業)を集中的に狙ってきますので、税務署対応も相当の負担です。
これも、カンボジア人は金持ち(=外国人)とみると値段を吊り上げる癖の一種かもしれません。

カンボジアの税制はまだ整っていない部分が多いので、税務署に上手く対応しないと相当額の税金を取られてしまい、利益が全く上がらなくなります。
一方、会社にせず個人事業の形にすると、例え外国人でも税務署はチェックの仕様がなく、事実上税金負担も無くなります。

従って、個人でカンボジアに進出される場合は、そんなに費用が掛かって大変なことをする会社での事業はお薦めしません。
土地を取得するには借地にすれば、外国人でもカンボジア人株主51%会社を作る必要がなく、農地を確保できますので。
それでは、会社を作らない場合に、土地をどうしても買いたい時にはどうするか? 以下の手順を踏みます。
1.その土地を、カンボジア人かカンボジア人株主51%企業に買ってもらう。
2.土地を買った、カンボジア人か会社と長期借地契約(30年~99年間)を結ぶ。
  万一転売しても(所有者が変わっても)借地契約が有効である条文を契約に入れておきます。

日本胡椒協会の林さんも、弊社がケップ特別市の農地を買って、林さんが弊社から99年間借りる形で農地を確保しました。(林さんのブログ記事はこちら→https://blog.goo.ne.jp/kosyou1
実用上は、土地の所有も、30年~99年の長期借地も変わりはないからです。

因みに、胡椒栽培を1ヘクタール程度個人でやる場合も、この近郊農業パターンに近いと思います。農地の場所は、プノンペン近郊ではなく、カンポット州かケップ特別市になりますが。