2015年7月31日
弊社のKampot州の農園では、天然ゴム、キャッサバ、胡椒に次ぐ第4の柱として、生姜の栽培を今年から開始しました。
実は、生姜の原産地はインドからマレーシアにかけての南アジアと考えられ、25℃-28℃が最も生育に良いと言われていますので、カンボジアの気候にピッタリです。
また、カンボジア国内でも料理に不可欠の食材として大量の需要がありますし、加工すれば日本でも高く売れます。
ところが、カンボジアでは生姜栽培は盛んではありません。理由は、主に作り方が難しく、特有のノウハウが必要なことです。過去にも多くの人が生姜栽培に挑みましたが、失敗に終わったケースが多いそうです。
弊社でも、利益率が高いので何とか生姜栽培ができないのかと模索していましたが、スリランカ、カンボジアで生姜栽培を20年行ってきたエキスパートの技術指導を受けられることになったので、今年から栽培に踏み切ることにしました。
生姜栽培で特に重要なのは植付方法です。多くの人たちがこの方法を間違えて失敗したそうです。
植付時には、燻炭が必要です。燻炭は稲のもみ殻を蒸し焼きにしたもので、土壌のペーハーを整えたり、有用なバクテリアの住処を提供したりする役割を果たします。
上の写真は燻炭作りの様子で、煙突を中心にモミ殻を山盛りにして蒸し焼きにします。写真の上部はできた燻炭で、このように黒くなったところで水をかけて燃焼を止めます。止めないと灰になるまで焼けてしまいます。
畝を作り、タイから輸入した種生姜を切り分けて燻炭、肥料とともに畝の中に植え付けます。(下は種生姜)
下の写真は植付が完了したところです。
畝に稲わらを敷き詰めて土壌の水分を保つようにします。
3月後半から植付を始めました。元来生姜は中々発芽しなくて、通常は発芽まで3週間から1か月かかるとのことです。ところが、弊社の場合1か月掛かっても中々発芽せず、焦りが募りました。
掘って中を見てみると、意外なことが分かりました。下の2枚は掘った種生姜の上の部分と下(裏側)の部分です。
一目瞭然、1枚目の種生姜の上の半分は乾いていて土が付いていませんが、2枚目の裏側の半分は湿り気があり土がついています。
つまり、水を与えても土壌の保水力が低く、自分の重さで土に密着している裏半分以外では水分が種生姜にくっつかない訳です。 その結果、水不足になって芽がでないのです。
一般に、植物の芽や根が出るためには、温度と水分が十分である必要があり、まだ根が出ていないために肥料や土壌の栄養分は無関係です。
この場合、温度は十分なので、水分の不足のために発芽が遅れていると推定できます。
やはり、保水力が不十分な土壌では水を溢れるほど与えて、種生姜の上の部分も含めて全体が水分に包まれる必要があるようです。
元々、カンポット州は他に比べて雨が少なく、今年はエルニーニョ現象で更に少なくなっています。
そこで、井戸を追加で掘って水を確保し、毎日朝から夕方まで生姜畑に水を撒くようにしました。
下は、生姜畑用の井戸と貯水タンクです。
何しろ、雨季に入ってもほとんど雨が降らないので、来る日も来る日も、臨時ワーカーも雇って大勢で水を撒き続けました。
長くなりましたので結果は、次回に書きます。
2015年7月19日
皆様ご案内のように、7月6,7,8日と上海株式市場が大暴落となり、その煽りで日本株も暴落して大きなニュースになりました。(下は落した上海株のチャート)
実は、あまり知られませんが上海株の煽りを受けたのは、日本株ばかりでなく、天然ゴム価格も同様です。
今年5月の記事天然ゴム価格は上海株式市場次第!?で上海株と天然ゴム価格の関連を述べました。
実は、天然ゴム価格は、2011年のピークから昨年は1/4に暴落していました。この価格は主産地のタイ、インドネシア、マレーシアの生産価格を割っているために、生産者の供給拒否が相次ぎました。
カンボジアの天然ゴム価格に影響するシンガポール市場でも、大手生産会社数社の供給ボイコットが起こりました。
それに輪をかけて、5月、6月の暴騰した上海株式市場からあふれ出した資金が、上海天然ゴム市場に流れ込みました。実は、上海天然ゴム市場はシンガポール市場の100倍以上の取引量を誇る最大の市場です。この上海市場が上がったために、シンガポール市場も連れ高しました。
その結果、カンボジアの我々が工場に売る、ラテックス(天然ゴム樹液)の価格も20%程度上がり、少し一息ついていました。
我々のカンボジアの天然ゴム農園では、毎日収穫した天然ゴム樹液を工場に運んで売りますが、その販売価格はシンガポール市場に連動して、毎日変動します。(下は樹液採取の様子)
従って、毎日のシンガポール市場の値動きが我々の日々の懐具合に直接響いている訳です。
その上海株の上昇に伴って一旦20%上昇した天然ゴム価格が、7月6,7,8日の上海株式市場の大暴落で大幅に下落しました。
上海株の暴落で天然ゴムにも投資していた投資家の懐から、お金が一気に無くなりました。
それで資金不足になった投資家が、天然ゴム市場から雪崩を打って資金を引き揚げたので、天然ゴム市場も暴落状態になりました。(下のシンガポール市場のチャートの赤丸部分)
その後、7月9日以降上海株が落ち着きを見せる中で、チャートのようにシンガポール天然ゴム市場も下げ止まりました。
それに伴い、我々の天然ゴム樹液価格も一旦は下げ止まりましたが、まだ低空飛行のまま留まっています。
上海株式市場も、中国政府のメンツをかけたなりふり構わぬ価格支持政策で、一旦は下げ止まりましたが、市場の歪みが指摘される中で再度大きく変動する可能性が高い状況です。
上海株が再度暴落すると、我々の天然ゴム樹液の日々の販売価格も大きく下がってしまいますので、上海株式市場から目が離せない、気の抜けない状態が続きます。
<追記>
固唾を飲んで上海株の様子を毎日見守っていましたが、果たして、今日再び8%の暴落です。(下の赤丸部分)
上海株は、7月6,7,8日の暴落の後、中国政府が必死に値を押し上げてきました。その結果上のチャートのように7月9日から先週まで株価が上昇していました。
しかし、先週末に政府高官が「買い支えの資金を引き揚げる」と発言し、自社株買いをしてきた上場企業の資金も尽きてきたところで、今日午後に一気に8%の暴落です。
その結果、我々の天然ゴム樹液売渡価格を決める、天然ゴムのシンガポール市場も下の赤丸のように暴落してしまいました。
シンガポール市場も暴落後、7月9日以来上海株式市場と歩調を合わせて上昇してきましたが、また一気の下げです。
上海株式市場が落ち着かないと、天然ゴム価格も落ち着きませんが、上海株を支える中国政府の資金もあまり残っていないはずなので、明日以降更に2番底の大底を着けにいく暴落を演じる公算が大きい状況です。
中国政府が何等かの秘策をだすのか、このまま大底まで沈んでしまうのか目の離せない状況が続きます。
2015年7月19日
7月になるとカンボジアも例年は雨季本番に入り、週に何回もスコールが来きますが、今年はまだ雨季が本格化しません。
不幸なことに、先日の記事エルニーニョ現象でカンボジアが水不足!で書いた日本の気象庁予測「今年は秋までエルニーニョ現象が続く」が当たりそうな雲行きです。
エルニーニョ現象のために、東南アジア全域で雨季に入っても雨が降りません。下は、東南アジアの降雨量。
雨季本番のはずなのに、この領域内では殆ど降りません。
お隣のタイでも、水不足のために稲が作れないとか、ダムの水が干上がって水道が出なくなる恐れがあるという話が聞こえてきます。
また、タイのある県では、猫を籠に入れて水を掛けながら長時間練り歩く雨乞いの風習があるが、今年は動物虐待を避けるため、雨乞いの時に猫の代わりにドラえもんの人形を入れたので効果が無かったなどとも言われているそうです。
さて、東北部Kratie州にある弊社のキャッサバ農園や天然ゴム農園でも、4月末から5月にかけてキャッサバの苗を植えましたが、植付後10日間も雨が降らないケースもあって、一部の区画では半数の苗が枯れてしまいました。
枯れた苗は、上の写真のように取り除いて、再度植付をします。下の写真は6月末に再植え付けした苗が芽を出してきている様子。本来数十センチにはなって葉を茂らせているはずなのですが。。
一方で、4月末に植えて、直後に雨があって苗が枯れず再植え付けをしなかったものは、既にかなり大きく育っています。(下の写真、人の背丈ほどになっているものもある)
雨がタイムリーに降ってくれるか否かで、このように全く結果が違ってきてしまうのです。
今年は、昨年の収穫量不振から脱却するために、育成方法の不具合を洗い出して、施肥、除草、水害対策等育成方法を全面的に見直しました。その甲斐もあって、植付直後にある程度でも雨が降った場合は、昨年以上に良く育っており、昨年来の単収目標に届く勢いです。
このように、人間の手で出来る努力はしてきてある程度の効果は上がったところですが、雨が降らないだけでその努力が無になってしまいますので、やはり自然には勝てません。
エルニーニョ現象が続き、これ以上雨季の本格化が遅れれば、旱魃になりかねません。
雨の間隔が長引いた場合は、全部は無理ですが一部でも灌漑を行うような人間サイドでできる限りの対応を考えざるを得ませんので、お天道様の様子に目が離せません。
2015年6月20日
先日、弊社の天然ゴム農園を訪れた際に、農園マネージャーのC君からゴムの樹液採取(タッピング)の痕を見せられながら、農園の人手不足を説明されました。
その説明方法がプレゼンテーションとして妙に説得力があったので、記事にします。
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上がそのタッピング痕の写真です。タッピングは3日に一回、樹皮にナイフで傷を付けて樹液がしみだしてくるようにします。1-2年程度の期間で上から下に傷を付けて行った痕が写真の状態です。
C君 「この痕を見ると、場所によって痕の状態が違っているが、これはタッピングをしたワーカーが替ってきたことを表しています。ワーカーによってやり方が違い、上手い下手があるので、傷の痕も変わってくる。
この痕を見ると5人のワーカーがタッピングをしてきたことが分かる。」
C君 「下手なワーカーがやると深く切り過ぎて木にダメージを与えので、本来は上手いワーカーに継続して働いてもらいたいが、短期間で辞めてしまうケースも多い。(実際、この写真の下の部分はダメージを受けています。)」
C君 「上手いワーカーが辞めるのは、賃金の高いタイに出稼ぎに行きたいからで、辞めた後に補充で新規採用しようとしても、やはりタイに行く人間が多いので中々集まらない。」
確かに、カンボジアの農園の賃金は1か月100ドル程度ですが、タイの最低賃金は1日10ドルなので1月に200ドル以上稼ぐことも十分に可能です。そのため、多くの農民がタイに出稼ぎに出てしまいます。
元々カンボジアに農業以外の十分な産業が無いために、十年来多くの農民が海外に出稼ぎに出ていました。特に隣国タイは、習慣や食べ物が似ているので人気が高かったのです。
また、タイの側からもカンボジア人労働者は不可欠になっています。タイも中進国になり、賃金の低い単純労働をやる人間が不足しており、工事現場や農園などでは多くのカンボジア人やミャンマー人を見ます。
先週のNHKワールドのニュースでは、タイの漁船で多くのカンボジア人、ミャンマー人が働いており、事実上タイの水産業を支えているが、待遇が極端に悪く「奴隷状態」とも言われている。この為、EUからは半年以内に「奴隷労働」を止めない場合、タイからの水産物の輸入を禁止すると通告された、と報道されました。
多くのカンボジア人がタイに出稼ぎに出ていますが、パスポートや正式な労働許可(Work Permit)を持たずに働いているケースも多く、それを逆手に取られて劣悪な環境で働かされているのが、水産業の実態のようです。
さて、約1年前にタイに軍事政権ができたときに、労働許可(Work Permit)を持たないカンボジア人の取り締まりが強化されましたが、逮捕を恐れて数十万人のカンボジア人が一斉にタイから逃げ出す事態となりました。
数十万人の失業者が一挙に生まれたカンボジアでは、フンセン首相がパスポート発給手数料を135ドルから一挙に4ドルに下げる対応を行いました。単純労働者不足のタイ側も、短期労働許可をすぐに2.5ドルで出す対応をしました。 両政府の対応の結果、カンボジア人の大脱出は収まりました。
この大脱出事件の副産物として、出稼ぎカンボジア人が簡単にパスポートとタイの労働許可を取れるようになりました。
その結果、増々出稼ぎが増えて、カンボジア国内の農園のワーカーが不足する事態となり、我々の天然ゴム農園でも影響を受けているというわけです。
我々の天然ゴム農園では、この記事の冒頭のマネージャーC君のプレゼンテーションの結果、ワーカーの給料を上げることになりました。タッピングの上手いワーカーには職能給をプラスすることにもしました。
4年前に農園を始めた頃に比べて、賃金が2倍になってしまいました。
賃金や地価の安さに惹かれて、カンボジアで農園を始めたのですが、中々目論見通りには行きません。
<追記>
上記のように、経験のあるワーカーを長期間確保するために、職能給をプラスすることにしましたが、その効果が早速出ました。
職能給導入前は、タッピング(木に傷を付けて樹液を出すこと)のやり方が雑で、特に深く掘り過ぎて木を傷めるケースが多かった。下の写真は、深く掘り過ぎて木の表面に大きなダメージを受けた例です。
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この様に大きな穴が開くと、数年後にここを再度タッピングしようとしても上手く行きません。
ところが、職能給を出すことをワーカーに通知したところ、急にどのワーカーもタッピングが丁寧になり、「深過ぎ」が激減しました。
上の写真のタッピング痕の下の方は、最近のものですが、「深過ぎ」が全く無くきれいになりました。
これまで現場のマネージャーC君が、幾ら注意しても「深過ぎ」は無くならず、あまりひどい場合は解雇していたのですが、最近はすっかり影をひそめました。
注意や解雇といった「罰」を与えても、改善されなかったものが、追加報酬で一気に改善のモチベーションが上がったわけです。
カンボジアのワーカーも、のんびりしていてお金の為に頑張るよりも、手を抜いて楽な方が良いのかと思っていましたが、大きな誤解であったことに気が付いた次第です。
2015年6月1日
最近、日本の気象庁が、エルニーニョ現象が発生しており秋まで続くと発表しました。
ご案内のように、エルニーニョ現象は数年に1回発生する地球規模の気象異常です。
先々週からインドでは、この影響で気温が45度以上まで上昇して、2000人以上の死者が出ていると報じられています。
下の模式図は、エルニーニョ現象を説明しています。
①東南アジア、南アジアの海水温が上昇。 ②赤道沿いに吹く東風が弱まる。 ③雨雲が東南アジアから東に異動する。
という現象で、①の南アジアの海水温上昇のお蔭で、インドの45℃の熱波が起こっています。
また、インドだけではなく、ここカンボジアでも例年以上の暑さとなっています。
カンボジアへの影響は暑さだけではありません。我々の農園にとって死活を左右する雨が今年は極端に少ないのです。原因は、上記③雨雲が東南アジアから東に移動してしまったためです。
我々の農園でも既に以下のような水不足の悪影響が出てきています。
1.キャッサバ農園
カンボジア東北部クラチェ州にあるキャッサバ農園では、昨年は雨季の開始を告げる本格的なスコールが4月7日にあり、翌4月8日にキャッサバの植え付けを始めることができました。
ところが、今年は待てど暮らせど最初のスコールが無く、4月24日になってようやくスコールが降りました。そこで、キャッサバ植え付けも3週間近く遅れてしまいました。
キャッサバの植え付けは、4月、5月の9週間で完了させる必要があるのに、3週間の開始遅れは大きな打撃です。
また、始めてスコールが降った後もスコールの頻度が少ないので、折角植えた苗が水不足で枯れてしまう事態が続出しています。(苗の植付風景)
2.胡椒農園
カンボジア南西部ケップの胡椒農園でも、水不足が深刻です。乾季で雨が降らない時期には、3,4日に一度添え木1本当たりバケツ1杯分の水を与える必要があります。この胡椒農園では、9,000本の添え木があるため、毎回大量の水が必要です。
この水を賄うために、50mx35mのオリンピック・プール並の貯水池を掘って水を溜めています。
ところが、今年は中々雨季が始まらないために、貯水池の水が底をついてきています。
上は、その貯水池の写真。実は、万一に備えてこの井戸の真ん中に、井戸の底から30mの深さまで井戸を掘ってあります。現在はその万一の緊急事態となって、白矢印の井戸から24時間水をくみ上げ続けています。
幸い、カンボジアではどこも地下水が豊富にあり、この農園でも現時点では何とかギリギリ地下水で賄えていますが、目の離せない状況が続きます。
3.天然ゴム農園
カンボジア東部クラチェ州スノール郡にある天然ゴム農園でも、雨が降り始める4月中旬から、乾季に休止していた天然ゴムの樹液採集(タッピング)を再開しました。
ところが、今年は5月になっても雨が少ないので、ゴムの木からの樹液の出が悪く、昨年の80%程度です。ただでさえ天然ゴム価格が長期暴落によって安いので、二重の打撃です。
ただ一方で、ゴムの主産地である東南アジア全体が、エルニーニョ現象のために弊社の農園と同様に、雨季に入っても天然ゴム生産が本格化できていないので、天然ゴム価格を押し上げる方向になってきているという見方もあります。
以上のように、カンボジアの東北部でも南西部でも水不足が深刻で、農園にも大きな影響が出てきています。
日本の気象庁によると、エルニーニョ現象は秋まで続くということなので、カンボジアの雨季の全期間にわたって雨が少なくなってしまうことになります。
改めて、農業がお天気頼みだということを思い知らされる日々が当分続きます。
2015年5月31日
今年2月にキャッサバ農園で火事が相次ぐことを書きましたが、この時に放火されて全焼した丸木橋が4月に再び放火されました。 (下は2月に全焼した丸木橋)
この当時は乾季の真っ最中で、キャッサバ農園の周囲のジャングルの大半が放火で燃やされ、あろことか農園の中にも何回も放火が繰り返されました。(下は農園内への放火)
この当時は、ジャングルの中でカンボジア社会から孤立して生活している少数民族、「森の民」がジャングルの動物を狩るために放火していると考えていました。鹿やイノシシを追って農園内まで来て、放火して動物を追い立てているのではないかということです。
「森の民」は、カンボジアの一般社会から隔絶して、法律や規則を全く無視して自分たちの都合のみで動きます。ジャングル内の虎や毒蛇に対抗するために、毒矢などで武装して大変危険な人々です。
この連中が、盗伐した木材を運んで農園への大事な道路を壊していることも前回書きました。
乾季も近づき、農園内外の燃えるものは大半が燃えてしまい、放火も一段落してやれやれと思っていたところ、再度の丸木橋への放火です。(下は再度全焼した丸木橋)
変な話ですが、この大きな橋を全焼させるためには、多量のガソリン等を準備して計画的に燃やす必要があり、単に思い付き、面白半分で出来るものではありません。
それを2度もやるとは、何かかなり執拗なものを感じざるを得ません。いずれにしてもこれ以上繰り返されてはたまらないので、地元の警察に捜査を依頼しました。
そうしたところに、妙な噂が聞こえてきました。「森の民」がこの土地のオーナーを恨んで復讐しようと企てていると言うのです。
我々が借地しているこの土地のオーナーは、軍の将軍でこの土地に部下が駐在しています。実は、この部下が盗伐した木材を運ぶ「森の民」のトラクターを脅してお金を巻き上げて、恨みを買っているのです。
「森の民」が復讐を企て、丸木橋への放火を繰り返したのではないか、という説が有力になってきました。
現時点では、警察も真犯人を特定していないので、断定てきには言えませんが、「森の民」とオーナー一派との間の紛争に巻き込まれそうないやな予感もします。
さて一方で、我々の農園への道路が日々「森の民」等による大勢の盗伐トラクターによって破壊されており、その対策として、州知事に軍の派遣を要請しています。
(道路破壊中の盗伐トラクター)
「森の民」とオーナー一派の確執のある中に、軍の兵士が派遣されてくるとどうなってしまうのか、不安が拭えません。しかし、我々には兵士を派遣してもらう以外の道路対策がないのが現実です。
2015年5月25日
前回の記事で、弊社のキャッサバ農園に国道からつながる道路が、違法伐採した木材を運ぶ多数のトラクターによって破壊されることをレポートしました。
上は道路破壊中の盗伐トラクター
この道路が破壊されて、昨年は通行が大変危険になったので、今年初めに大金をかけて修理したのですが、今年もトラクターの大群は止まりません。
このトラクターの主は、国有林を違法に伐採してベトナムに運ぶ、「森の民」と呼ばれるジャングルに孤立生活する少数民族です。
ところが、最近は「森の民」以外の連中も大勢違法伐採を始めたことが分かりました。
先日、農園の近くの道で私の乗っていた車と、1台の違法伐採トラクターが接触事故を起こしました。
狭い道に私の車が止まっていたところ、トラクターが無理にすれ違おうとして、車のバックミラーを破損し車体の一部をへこませたのです。(下はバックミラーが破損した車)
そこで、当然相手のトラクターを止めて、賠償を求めました。(下は相手のトラクター)
結局、相手にお金が無くて、保険を使って修理することになったのですが。。
この時の話で、相手が隣村の住人であることが分かりました。何と近隣の村人までが盗伐に精を出していたのです。
そう言えば、最近弊社の農園の隣の国有林が凄い勢いで盗伐されているので、おかしいと思っていました。
「森の民」は弊社の農園の隣の州で盗伐して、木材を運んで来ていたので。
(下は、弊社農園の隣の国有林が盗伐されているところ)
下は、切った木材をトラクターに載せているところ
大量の木材が運び出されている。
このように、多くの木が違法に伐採されて、国有林のジャングルは見る見るうちに失われていきます。
聞いたところでは、このKratie州ではこれまで盗伐をかなり取り締まっていたために、被害があまりなかったのですが、最近与党が知事に働きかけて、取り締まりを緩めたそうです。与党の人気取りの為だそうです。
そこで、盗伐しても処罰されないと知った村人が、「今だ!」とばかりにジャングルに大勢殺到してきました。
何しろ、すぐそこにある木を切って運べば、かなりのお金になる訳ですから、一種のゴールドラッシュのようなものです。
結果として、貴重な自然が失われ、カンボジアの大切な国有財産である木材も盗まれてしまいます。
我々にとっては、道路を破壊するトラクターが追加で大発生したお蔭で、破壊速度が速まってしまいます。
我々としては、自衛手段を取るしかなく、軍隊に頼んで兵士を派遣してもらい、盗伐トラクターに我々の道路を通らせないようにガードしてもらおうと動いています。
ところが、最近制度が変わって、兵士派遣の為には知事の承認が必要になりました。今週、知事の所へ事情説明に行きますが、盗伐の取り締まりを緩めた知事なので、承認が出るか否か予断は許しません。
2015年5月15日
弊社のKratie州のキャッサバ農園は、国道7号線から未舗装の道を15km入ったところにあります。
元々は、ジャングルの奥へ分け入って開拓したところですので、道もジャングルの木を引き抜いて地面を平らにしただけのものです。
この15kmの道路が、我々の泣き所の1つになっています。特に、雨季にはこの地方に多量の雨が降るので、水の被害を受けます。下の写真は雨水の為に道路が冠水して、途中の橋が見えなくなった時のものです。
このように、雨季の最盛期には道路の冠水によって、通行できないことが度々あり、従業員が農園に1週間閉じ込められることもあります。
さて、問題は冠水だけではありません。雨季に道路の地盤が緩んでいる時に、トラクター等が通行すると道路を壊すのです。下の写真は、昨年の雨季が終わった直後の道路の一部です。
道路の表面が破壊されて多くの凸凹ができ、雨季にはぬかるんで普通の4駆車では通行が困難になります。
この様に雨季に道路を壊す主犯は、以下のような小型トラクターです。
これは、カンボジアのジャングルの中に住む少数民族、所謂「森の民」が違法に国有林を盗伐して、小型トラクターでジャングルの中の小道を通ってベトナム国境まで運んで売りさばいています。
見ているとかなり立派な木材を運んでいるケースもあり、これらはベトナムで製材されて主に中国に運ばれ高値で売られるそうです。
我々の農園から国道7号線までの道は、ジャングルの中を長距離走っているので、公道を堂々と通行できない彼らにとって恰好の通り道になっています。
このような小型トラクターが、連日50~100台以上通るのでたまりません。地盤が緩んだ路面がドンドン破壊されてしまいました。
上は列をなす盗伐トラクター
放火の件で何回か記事にしましたが、この少数民族、「森の民」は普通のカンボジア社会から孤立していて、カンボジアの法律・秩序に縛られずに自分のやりたい様に生きています。
話してわかるような相手ではありません。破壊された道路の補修費にあてるための通行料を取るような交渉など相手にされません。
彼らの棲むジャングルには虎や毒蛇も多いので、彼らはそれに対応するための毒矢などの武器を備えており、非常に危険です。
昨年の雨季には、一回道路にバリケードを作ってみましたが、夜間に破壊されて突破されてしまいました。
そこで、昨年の雨季は彼らの被害を避ける方法が無く、道路が散々に荒らされてしまいました。
道路が荒れたままでは我々も危険で通行できないので、乾季になってから大金を投じて道路を補修工事しました。
しかし、このままでは雨季に地盤が緩んだときに、また彼らに道路を荒らされてしまいます。
そこで、今年の雨季には、軍に頼んで兵士を数人派遣してもらうことにしました。どうも彼らも軍隊には敵わないようなので。
来月からは兵士に来てもらいますが、果たして上手く道路が守れるのか? 彼らとの間で紛争が起きるのではないかなどと、不安が拭えません。
2015年5月8日
カンボジアも雨季が始まり、天然ゴム農園でも約2か月の休止の後、今年もタッピング(樹液採集)が始まりました。タッピングで得られた樹液は、毎日工場へ出荷しその日の価格で売られます。従って、毎日の天然ゴム価格が大きな関心事になってきます。(下はタッピングの様子と天然ゴムの樹液)
昨年の記事では、天然ゴム価格が長期の暴落で最盛期の1/4になっていたが、約3年8か月ぶりに底を打って反発したことをお伝えしました。
その後、天然ゴム価格は一進一退を繰り返していました。主産地のタイ、マレーシア、インドネシアでは、これ以上の価格低下を防ぐために、一種の価格カルテルを結んだり、タイ政府が農民から市場価格を上回る値段で買い上げたりして、何とか価格を押し上げようとする動きが続きました。
また、生産価格割れした価格での出荷を嫌がって、ゴム樹を切り倒してパームヤシに転換する動きもあり、生産力の伸びが鈍ってきました。
しかしながら、供給が需要を若干上回る状態が続き、生産側の圧力で価格が上がったかと思うと、また下がるというような状況でした。
ところが、その価格が4月の初めから急騰を始め、以来20%以上の上昇を記録しました。
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上のチャートは、カンボジアの天然ゴム価格に直接の影響を与える、シンガポール市場の値動きです。
この急騰のきっかけは、以下の2つの出来事です。
第一は、、世界の10%~20%の生産量を持つ大手ゴム生産会社の数社が、「シンガポール市場はゴム生産の実際のコストを反映していない」として、シンガポール市場でのゴムの受け渡しを拒否する動きに出たことです。
このため、この市場での供給不安がでたことから価格が跳ね上がりました。
しかし、これは従来からの生産者側の価格アップのための動きの一つに過ぎず、これだけでは従来からの供給過剰基調を覆せないため、短期的な反発に終わる可能性が高いとみられていました。
ところが、その大手ゴム生産会社の動きに呼応して、生産側に思わぬ援軍が現れました。
天然ゴムの上海市場に大量の投機買いとみられる資金が入ってきたのです。
実は、天然ゴムの上海市場はシンガポール市場の100倍以上の取引量のある影響力の大きな市場です。
上海市場は、2011年の高値4万元から昨年9月の1万元まで、1/4の下げを演じて売られ過ぎの状態にあり、自律反発の起こる環境になっていました。
そこに、大量の投機買いが入り、枯草に火が付いたような状態で一気に価格急騰が起こったのです。
この投機資金は、実はこの1年で2倍の上昇となった上海株式市場で資金を拡大した投資家によるものと言われています。
上海の株式市場から溢れ出した資金が、今度は天然ゴム市場に流れ込んで来たと言うわけです。
従って、上海株式市場の好調が続く限り、天然ゴム市場も値上がりが続く公算が高いと言えます。
上海株式市場は、目先は上がり過ぎによる調整が近いとも言われていますが、一方中国政府による株価下支えも強力に行われており、予断を許さない状況です。
上のチャート赤線が上海株式市場。
このように、我々カンボジアの天然ゴム農園の収支を大きく左右する、日々の天然ゴム価格の動きが、実は上海株式市場に大きく依存しており、目の離せない状況が続いています。
2015年5月2日
前回の記事から2か月のご無沙汰の後でブログを再開します。 この2か月間、日本一時帰国、キャッサバと胡椒の収穫、キャッサバ植付準備などの作業や続発する問題対応に追われていました。
今回の記事は、その最大の問題であるキャッサバの初年度収穫量についてです。
弊社Kratie州250ヘクタールのキャッサバ農園では、昨年4月から8月にかけて植え付けたキャッサバを、今年の3月~4月にかけて収穫しました。
ところが、平均収穫量が明らかになってくると、目標の25トン/ヘクタールを大きく下回る結果が見えてきました。この結果にショックを受けて、一時は次の植え付けを断念しようかとも考えました。
当然のことですが次回植え付けても収穫量が低ければ、事業として継続できないからです。
先ず、次に植え付けても意味のある収穫量にするためには、昨年度の低い平均収穫量の原因を究明して、次回に対策が取れることを確認できる必要がありました。
原因究明と有効な対策が取れなければ、次回もダメになるからです。
そこで、収穫の終盤にかけては必死で現場での調査を行い、専門家の意見を聞きました。
その結果として、以下の点が主な原因であることが判明しました。
1.水害: 植付けた面積の内約25%が水害の為に収穫できなかった。あらかじめ植付前に水害に会いそうな場所を避けて植えたのですが、この地域では想定以上に雨量が多かったため、水がタイムリーに掃けず、地下に水が溜まってキャッサバの根を窒息させた。
2.リプラント: 最初に植え付けた苗が枯れて根付かないために、同じ場所に2回目の苗を植付ます。これをリプラントと呼んでいます。
昨年は5月初めのメーリバグの被害の2次災害で、大量のリプラントを行わざる得なかったが、リプラントした苗がことごとく上手く育たなかったのです。
昨年5月に害虫メーリーバグ(Mealy bug)に苗を食い荒らされましたが、その時に生き残った苗を植え付けました。ところが、生き残ったと思った苗も、ある程度メーリーバグに樹液を吸われて弱っていたために、植えても育たずに枯れてしまったものが多発しました。
そこで、リプラントをしたのですが、下の写真のようにしないものに比べて極端に悪い結果になりました。
黄色い矢印がリプラントしたもの。白矢印はしていないもの。
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白矢印のしていないものは、どれも2kg~3kgは有るので、全てリプラントしなければ目標に到達できていたことになります。
なぜリプラントが生育が悪かったのかを調べたところ、以下の原因が判明しました。
① リプラントの植付時に肥料を与えなかった。最初に植えた時の肥料はリプラントまでの2か月間に大量の雨で流されてしまい、肥料不足になってしまった。最初の肥料(元肥)の不足は致命的だった。
② 2か月間前に植えて既に伸びているリプラントしていない隣の株や雑草の陰になって、十分な日光が得られなかった。
③ リプラントには、この土壌との相性が悪いベトナム種を使った。
3.雑草対応の遅れ: メーリーバグ対応や大量の雨による植付遅れの対応に追われて、雑草取りが後手に回ってしまい、雑草の被害を受けた。
除草剤もキャッサバが小さいうちに使える有効なものが見つからず、有効に活用できなかった。
主に上記3つの原因で平均収穫量が低かったことが判明しましたが、次回はそのどれに対しても対応策が取れます。
1.水害については、水害地区は前回明確になったので、そこを避けて植える。また、念のために植え付け前に排水路を整備する。
2.今年はメーリーバグの発生を抑えられたので、リプラントを非常に少なくできます。また、リプラントのタイミングを1か月後として先に延びている周囲からの影響を低くする。リプラント時に施肥を徹底する。ベトナム種の問題点がはっきりしたので極力使用しない。
3.雑草対応を初期に、キャッサバが小さいうちに使える除草剤を使って行う。
この様に、対策がはっきりしたので、次回植付の可能性が見えてきました。
丁度そのタイミングで、一時帰国中に日本で買った、小山昇氏の「失敗は蜜の味」という本を読み、「初めての仕事では誰でも失敗します。(中略) 新しいことに果敢にチャレンジすればするほど、失敗の数は増えて行きます。そして手痛い失敗を経験した次に、成功につながる道を見つけることができる。」
という記述を見て、「確かに自分も前職のIT会社では、駆け出しのころ初めての仕事で失敗ばかりだったが、失敗の反省の中から改善策を見つけてきたよなあ。」と思い至り、勇気が湧きました。
そこで、何とか次回も植付に挑戦したいと考え、関係者とも相談した結果、再チャレンジすることになりました。
現地では、4月24日に本格的なスコールがあったので、4月26日から次回の植付を開始しました。
今年も七転八倒は続きます。