[追記あります] キャッサバ植え付けは第4コーナーを回った。

2014年6月18日

弊社のキャッサバ・プランテーションでの苗の植え付けは、害虫大発生、水害、雑草、ワーカー不足等で足を引っ張られながらも何とか徐々に前進し、現在全250ヘクタール中185ヘクタール(約75%)完了まで漕ぎ着けました。

我々の農地は、Land A、Land Bの2か所に分かれそれぞれ100ヘクタール、150ヘクタールを植え付けます。
以下は、Land A、Land Bそれぞれの進捗を表したものです。小さなマス目が1ヘクタールの場所を表します。マス目に緑色の〇が付いているところが植え付け完了です。
(Land A)

(Land B)

Land Bはほぼ完了し、残りはLand Aです。

ところで、一口に苗の植え付けと言っても、苗をただ植えるだけの1段階のみの作業ではありません。以下の段階を踏みます。
1.我々の土地は以前は森林だったので、森林伐採、抜根後に木を撤去し木材にならない部分は燃やす。
2.トラクターで2回耕作する。この時笹の除去のために3Disk(円盤3枚の耕作機)を2回使う。
3.大小の木片や根が残っているので、この木片をトラクターの後ろに13本のかぎ爪をつけたもの(リッパ-)で掻き集めたり、人手で拾ったりして除去する。下の写真は2回のトラクター耕作後に大量の木片が残っている土地です。この木片は除去が必要です。

4.トラクターで畝を作る
5.畝の頂上に苗を植える。 但し、これで終わりではありません。
6.植え付け後1週間後に確認し、芽が出ていない苗は新しいものに取り替える、(Replant)
以上の作業手順を全て踏んで初めて植え付けが完全に終わったと言えるのです。

さて、苗の植え付けには期限があります。収穫時期が来年2-3月と決まっている関係上、早く植えれば早く植えるほど長期間にイモが大きく育つのですが、それだけではなく、天気との関係もあります。

我々の農園があるKratie州Kratie郡では7月半ばになると雨がほぼ毎日降りますが、そうなると日照の関係で折角植えた苗の育ちが極端に遅くなります。少なくとも連日雨になる2週間前までに植えれば、苗は何とか順調に育つと言われています。つまり6月末がデッドラインで、それまでに植え付けを完了する必要があるのです。

デッドラインまであと約2週間、植え付けも競馬の第4コーナーを回って最後の直線でムチが入る状態になってきました。
ここに来ての植え付けのボトルネックは、上記2.のトラクターによる2回目の耕作です。何しろ1週間に2-3回もスコールが降るために、地面が緩んでトラクターの車輪が空回りして中々進まないのです。

当初は、笹を殺すために2回目のトラクター耕作は深く耕せる3Disk(円盤3枚)の耕作機で行う予定でしたが、深く耕そうとすると土の抵抗が大きくて車輪が空回りするので、浅く耕す7Disk(円盤7枚)の耕作機に切り替えました。

しかし、この7Diskでもスコール当日や翌日には車輪が空回りして、中々進みません。
そこで、現在は4台あるトラクターの台数を増やそうと近隣を探し回っていますが、中々見つかりません。丁度米作で必要なシーズンに当たっているのと、耕す面積が小さくて貸しても商売にならない、云々色々理由がありますが。
第4コーナーでムチを入れるために、現在はかなり遠方も探しています。

また、トラクターの車輪が地面をグリップする力を増やすために、後輪を2つ付けてダブルタイヤにすることも検討します。但し、写真の白矢印の側のタイヤをダブルにすると、折角耕作した場所をタイヤで踏んでしまうので、こちら側はダブルにしません。1か所だけをダブルにする変則的なやり方です。

このやり方をカンボジア人のトラクター屋に提案したところ、考えられないと言われました。現在説得中です。

ところで、既に植え付けを完了した185ヘクタールはどうなっているかと言いますと、このうち約120ヘクタール強は非常に順調です。下の写真は4月の初期に植えたもので、約50cmの高さにまで育っています。

残りの60ヘクタールは、水害や雑草との戦いの戦場になっています。激しいスコールによる水害や雑草は我々が苗の植え付けを終わるまで待っていてはくれません。本当に自然相手は厳しい、と実感しています。

次回は、その水害や雑草との戦いについてもっと詳しくレポートする予定です。

 

<追記>
弊社のキャッサバ農園の苗植え付けが75%終わり、6月末のデッドラインを目指して競馬の第4コーナーを回ったところだとレポートしました。
しかしながら、スコールの回数が増えて地面が緩み、トラクターの車輪が空回りして植え付けの為のトラクター耕作が中々進まないことが、ボトルネックとなっていました。

その対策として、追加のトラクターを探しましたが、中々見つかりません。またトラクターの後輪にもう一つタイヤを追加しダブルタイヤにして地面を強くグリップして滑りにくくすることも検討しました。
しかし、1台当たり2000ドルかかる上にタイヤ追加作業に1-2日かかり、その間使えなくなるので断念しました。

そこで、最後の手段として夜間も含めた突貫工事になりました。まさに競馬で言うと、最後の直線でムチでの叩き合いの状態です。
雨の少ない日に朝5時から夜10時までトラクターを稼働させます。その結果、一昨日時点でトラクター耕作は残り20ヘクタール、トラクターによる畝作りは残り40ヘクタールまで追い込みました。

雨が降らない日があと4日あれば、トラクター作業は完了します。
ただし、昨日、今日と大雨が続いていて農園への道路が破壊され、通行不能になったりしているので予断は許されません。

また、苗の植え付けは昨日時点で全250ヘクタール中残り60ヘクタールとなっています。
1日8ヘクタール植え付けを目標に80人、雑草取りと合わせて155人のワーカーを掻き集めようとしており、現在130人まで集まりました。

ゴールが見えてきました。

[本文末に追記あります] キャッサバのペスト付き苗を売ったC社の顛末 その2: キャッサバのペストとの戦い 番外編2

2014年6月13日

前々回の記事に書きましたように、弊社のキャッサバ・プランテーションでは5月初旬にキャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれるメーリーバグ(Mealybug, 粉カイガラムシ)が大発生して、大きな被害がでました。
そこで、茎(苗)を売ったC社に、契約書の不具合時取り替え条項を基に 損害賠償を要求しました。

しかしC社は、「在庫をS.N. Group(仮名)に売却し、計画倒産して、社長が失踪してしまった」とのことで、一筋縄では行きません。また、計画倒産したにも関わらず事務所も社員もそのまま営業を続けていることも不可解です。

そこで、C社の実態を調べるために、再三営業担当役員に連絡を取りましたがしばらく電話の不通が続きました。やっとのことで連絡がつき、再度5月26日にC社を訪れました。

まず、C社の社長が行方不明になっても、他の代表者(カンボジアでは、株主=Director)がいればその人間に損害賠償請求できるはずなので、他の代表者の有無を確認するために、事務所の壁に貼ってある営業ライセンス等の書類を調べました。

以下はC社のパテント(営業ライセンス)で、社長の写真付きです。これも以前と同じく事務所に掲げられています。(写真は肝心の部分はカットしてあります。)

(後日、この営業ライセンスをもとに調査した結果、C社の代表者は社長のみで、他には損害賠償請求ができないことが分かりました。)

しばらく待たされて、例の営業担当役員が少し前よりスッキリした感じで現れました。

営業担当役員 開口一番「 TG0475。社長は4月のカンボジア正月(Khmer New Year)の後、タイに行きました。その後5月18日にTG0475便(タイ国際航空0475便)でオーストラリアのシドニーに逃げたんです。それで私はインターポールに彼を国際手配してもらいました。」

私 心中 「インターポール!? 正気かよ!? 何を言っているんだ?」

営業担当役員 「彼は、実は私の友人から5万ドルを借りたのを手始めに、社員や知り合いから合計100万ドルを会社の名義で借り、更にタイの取引先からの商品代金120万ドルを踏み倒して逃げたんです。」
(傍らにいたC社の農業エキスパートの D氏に向かって) 「Dさん、あんたも彼にお金を貸したわよね?」
D
氏 「XXXXドル貸したよ。」

「それで私たちは、彼を警察に告発してインターポールにも国際手配してもらったんです。」
「オーストラリアの警察も動くので、彼はそのうち捕まるわよ。」

私 「でも、なんでまた社員までが彼にそんなに大金を貸したんですか?」
営業担当役員 「これが借用書なの。C社は相当儲かっていたから、C社の事業拡大資金を貸して高い利息がもらえると、みんな信じたんです。」
(下は借用書の写真。証人(Witness)の弁護士の署名・スタンプもあります。但し肝心の部分はカットしています。確かに借用書の金額は5万ドルです。)

私 「ということは、社長個人に貸したのではなく、C社に貸したのですね?」
営業担当役員 「そうです。だから、みんな以前のように働いているのよ。以前のように働くために、S.N. Groupの社長がお金を出して商品を調達してくれているのよ。」 

私 心中 「そうだったのか! お金はC社に貸したのだから、C社が潰れたらお金が返って来なくなる。お金を貸した社員はC社を潰さないように、以前同様に働きながら社長を捕まえて、お金を取り戻そうとしているんだ!」

私 「でも何故、S.N. GroupC社社員のためにお金を出して商品調達するんですか?」
営業担当役員 「S.N. Groupの社長は以前C社で働いていた関係で、同じようにC社(社長)にお金を貸しているんですよ。」

私 「S.N. GroupとしてもC社が潰れると貸したお金が返ってこないので、潰さないように協力しているわけですね。でもC社にはもともと商品在庫がかなりあったはずですが、なぜS.N. Groupが商品調達しないとならないんですか?」
営業担当役員 「C社社長が逃げる際に、2人の経理担当者に命じて在庫を全て売って、その代金40万ドルを社長に送金させたんです。かわいそうに、その2人も幇助で刑務所行きよ。」

にわかには信じがたい話ですが、話の筋は通っています。社長が逃げたのに同じ事務所で社員が以前同様に働いている訳も説明がつきます。

私 「しかし、C社は儲かっていたんでしょう? 何故社長は詐欺をしてまで社員からお金をかき集めて逃げる必要があったんですか?」

営業担当役員 「ホントに彼はずる賢いけど馬鹿です。C社は6年間も営業して利益もかなりだったのに、ギャンブル狂で借金を抱えてたんですよ。あちこちのカジノで大金を使ってVIPだったのよ。」

カンボジアではカジノが合法で、国境地帯を中心に多くのカジノがあります。これまでにも、昼間からカジノにのめり込んで横領した人が、身近にもいました。

この営業担当役員は、誰かにこの話をしたくてしようがないと感じで、聞きもしないのに話し続けます。

「以前、彼はアメリカのカリフォルニア州とマサチューセッツ州で、全く同じ詐欺を働いてカンボジアに逃げてきたんです。大手デリバリーのU社よ。そこの代理店で同じことをしたんだけど、彼の上に2人オーナーがいたから、その2人が詐欺で刑務所に入り、彼はまんまと逃げて騙し取ったお金をもとにカンボジアでC社を設立して6年後にこうなったわけ。」

私 「よくそこまでわかりましたね?」
営業担当役員 「私の親類がポルポト時代にアメリカに逃げて市民権を取り、今はカリフォルニア州の役人で、一時州知事の補佐をしていたぐらいだから。」

確かに以前、この営業担当役員はポルポト時代にアメリカに逃げて、本人だけカンボジアに戻り、他の一族はほとんどアメリカに居るという話を聞きました。

私 「でも何故アメリカの時と同じようにC社のオーナーを別に作って責任をかぶせようとしなかったのだろうか?」
営業担当役員 「そうしようとしたんです。先ず今年2月に私に会社の経営を譲ると言ってきたの。でも私は経営はできないので、断ったんです。」
「その後、S.N. Groupの社長に経営を譲る話がまとまったのだけど、彼(S.N. Group社長)にとってラッキーだったことに、C社の代表者変更登記に時間がかかっている間に、彼の詐欺行為が発覚して彼が逃げざるを得なくなったわけ。」

しかし、社長が合計220万ドルも詐欺を働いて、持っているお金が経理担当者が送金した40万ドルだとすると、我々の数万ドルの損害賠償請求などは霞んでしまいます。お金がない相手からは取れませんし。。
いずれにしても、社長が捕まらないと請求の相手がいません。

私 「社長は捕まるんですよね。動きがあったら知らせてください。」
営業担当役員 「すぐに捕まるはず。知らせます。」

ということで、チープな犯罪小説のようになってしまいましたが、C社との戦いはまだ続きます。

<追記>
今日、例の営業担当役員と連絡が付いて最新の状況を聞けました。
C社社長はまだ捕まらずに、相変わらずオーストラリアのシドニーに逃げているそうです。

カンボジア政府経由のインターポールの国際手配は、「カンボジア政府の動きが遅すぎて上手くいっていない」とのことです。
カンボジア政府の動きが遅いのはいつものことで、私なども、いい加減遅い日本政府の1/10くらいのスピードだと感じます。カンボジア政府への働きかけを通常ルートで(庶民が)行うと普通は役所内で申請書が〇〇晒しにされます。(差しさわりがあるのでこれ以上のコメントは差し控えます。。)

また、C社社長は実はアメリカのパスポートも持っていて、そのアメリカ・パスポート上の名前はカンボジア・パスポートの名前とは異なります。
5月18日にタイからオーストラリアのシドニーに逃げた際には、その2つの国籍の2つの名前で同時刻にシドニー行きと、別の便をそれぞれ予約して追跡を混乱させようとしたそうです。
そこで、営業担当役員はアメリカ大使館に訴え出て、彼のアメリカ・パスポートを無効にさせようと動いています。

この営業担当役員は、当然ながらずっと給料をもらっていないので、既にC社の仕事をするのは止めたとのことです。この様にC社は解体に向かっているようです。

彼女は、弊社も彼女たち騙された社員達と一緒に訴訟に加わってくれ、と言っていますが、思案のしどころです。
C社には既に差し押さえるべき在庫等の財産も無く、会社も解体するのは時間の問題です。一方、シドニーに逃げた社長の方は、カンボジア政府の遅い動きの為もあって、いつ捕まるのかわかりません。
また、たとえ捕まっても直前に持ち出した40万ドル以外に幾ら持っているのか? カジノ狂なので所持金がすっかり無くなっているかもしれません。債権者は100万ドル以上いますので、訴訟しても我々の取り分があるのかどうか?

ということで、我々の方はC社の賠償金をあてにして訴訟等に労力を割くのではなく、その分の労力をキャッサバ栽培に振り向けて、収穫量・販売額を増やすように頑張った方が結果的には割りが良いと考えています。

キャッサバ植え付けの戦い: 雑草の「癌」、笹の駆除に苦戦!追記編

2014年6月11日

前々回の記事で、弊社のキャッサバ・プランテーションの笹の駆除に苦戦中とお話しました。
その結論として、
1.まだキャッサバを植え付けていない場所は、トラクターで2回耕作することで、笹を根ごと掘り起こして根を強烈な日光に当てて殺す。
2.既にキャッサバを植え付けた場所は、人海戦術で笹の地上部分だけを刈り取る。根が残っているため再生して来るが、その時には既にキャッサバが地面を覆っていて、日光が笹に届かないために成長できない。

そこで、キャッサバをまだ植え付けていない場所についは、上記1.の様にトラクターの2回耕作を開始しました。
大部分は既に、1回目のトラクター耕作を終えていて、笹の根は半分掘り起こされた状態になっています。(下の写真)

そこで、2回目は前回と垂直方向にトラクターで耕作して、まだ地中にある側の根を地上に引きずりだす作戦です。
ところが、ここで困った問題が起きました。
実は、トラクターで耕作するには2通りの方法があります。トラクターの後ろに付ける耕作機を3Diskにする方法と7Diskにする方法です。
3Diskとは、下の写真のように耕作機の円盤(白矢印)が3枚あるもので、深く耕すことができます。

笹を根ごと地上に引きずり出すには、この3Diskで深く耕す必要があるのです。
ところが、深く耕すためには土の抵抗が大きいのでその分多くの力をかける必要があります。そのため雨が降ってぬかるんだような土ではタイヤが空回りして、中々進みません。

最近、我々の農園では1週間に2回は激しいスコールが降るので、土が緩んだ状態になっていて、3Diskではトラクターが進まなくなってきました。
実際、最近は1日1ヘクタール程度しか進まず、これでは遅くて実用になりません。

そこで、仕方がないので、7Disk方式に変更しました。下の写真のように耕作機に円盤が7枚付いています。

この7Diskでは、1日4-5ヘクタール耕作できます。但し、あまり深くは耕せないので、笹の根はあまり地上に引きずりだせません。
しかし、キャッサバを植え付ける為には2回目の耕作を早く終える必要があるので、苦肉の策として7Diskを使いました。勿論、スコールの間隔があいて土が乾いて来れば3Diskも使います。

7Diskを使う場合には、笹がまだまだ残った状態になるので、今後笹が再生してきます。その時には人海戦術の刈り取りが必要になってきます。笹との戦いには中々妙案はありません。

苗植え付けのための戦いは、まだまだ続きます。

キャッサバのペスト付き苗を売ったC社の顛末: キャッサバのペストとの戦い番外編

2014年6月3日

これまでに何回か書きましたように、弊社のキャッサバ・プランテーションでは5月初旬にキャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれるメーリーバグ(Mealybug, 粉カイガラムシ)が大発生して、大きな被害がでました。
下はメーリーバグの写真。クリックすると虫がはっきり確認できます。

メーリーバグに養分を吸い取られて黒死したキャッサバの茎

このメーリーバグは、卵の形で茎に付いてタイから運ばれてきたことは明らかで、専門家の話でもタイから多くの卵がくっ付いてきたのでなければ、こんな爆発的な大発生はあり得ないとのことです。

そこで、茎(苗)を売ったC社に、契約書の不具合時取り替え条項を基に 代替苗を要求しました。
しかしC社は、「社長が鼻の癌でタイの病院に入院していて、代理の社長が来るまで判断できない。」などと訳のわからない話で、グズグズと動きません。
そこで、我々はベトナムから代替の苗を輸入して、C社には損害賠償を求めました。

私とVP百津は5月16日にC社を訪れました。そこではいつもの営業担当役員と、「病気」の社長から引き継いだ新社長の秘書と称する人物が待っていました。

我々は、メーリーバグ被害の損害規模と、その損害を賠償して欲しい旨を要求しました。
新社長の秘書 「私はS.N. Group(仮名)社長の秘書で、S.N. GroupC社から会社を買って営業しているのです。」
私&百津 心中 「え!? ここはC社じゃないの? 事務所も表の看板も社員も同じじゃないか!」
C社から会社を買ったのであれば、営業を引きついでいるので、賠償義務もあるじゃないですか。」
新社長の秘書 「S.N. Groupは、C社の在庫を買ってそれを販売しているだけなので、C社そのものを買ったわけではありません。看板も今商業省に届を出して、変更している最中です。」

私 「それでも、ここはC社が借りている事務所で、(営業担当役員に向かって)あなたたちもC社の社員ですよね? なぜSNGroupのために販売活動をしているんですか??」

担当営業役員 「実は、C 社の社長はS.N. Groupに在庫・資産を売って行方知れずになってるんです。私も給料をもらってなくて、彼を探しているんですよ。それで当面、事実上引き継いだS.N. Groupの仕事をしているだけです。」 確かに、この営業担当役員、大分疲れた感じでやつれています。

私 心中 「C社の社長は、計画倒産して逃げたということか!? でもS.N. Groupが事実上営業を引き継いでいるから、先ず、S.N. Groupに損害賠償請求をするしかないかなあ...」

私 「それでは、S.N. Groupに損害賠償を求めますので、新社長に伝えてください。」
新社長の秘書 「わかりました。」
ということで、この時の話は終わりました。

翌日、カンボジアの民法作成に携わった日本人弁護士のK先生の元を訪ねて、法律上の手段について相談しました。
私 「C社の事務所でC社の社員が販売しているので、どうも在庫もC社のものに思えます。裁判所に在庫の仮差し押さえを申し立てられませんか?」
K
先生 「勿論可能ですが、本当にC社の社長が在庫をS.N. Groupに売ったとすれば、S.N. Groupは売買契約書を出してくるので、仮差し押さえもすぐ無効にされてしまいます。」

私 「それでは、もし仮にS.N. GroupC社から在庫を買っただけだとしても、C社の事務所でC社の社員が営業を継続しているので、事実上の営業譲渡になりますよね? 営業譲渡だとすると、損害賠償責任も引き継ぐはずじゃあないですか?」

K
先生 「日本の法律上は、確かに営業譲渡という考え方があります。しかしカンボジアにそれがあるのかなあ?」と言いながら、カンボジアの会社法を確認しました。
K
先生 「カンボジアの会社法には、営業譲渡の考え方が明文化されていませんね。そうすると裁判官は法律にないものを作る訳にはいかないので、営業譲渡の線で行くのは難しいと思いますが、もう少し調べてみます。」

数日後K先生から、「やはり営業譲渡の線では困難で、元のC社に対して損害賠償請求をするより他は無い」、との見解を頂きました。

そこで、私は現在C社の実態がどうなっているのか?社長が逃げて計画倒産のはずなのに、何故C社の事務所でC社の社員が以前と同じ営業活動をしているのか? 疑問点を明確にしたいと考えました。
また、 C社の社長が行方不明になっても、他の代表者(カンボジアでは、株主=Director)がいればその人間に損害賠償請求できるはずなので、他の代表者の有無も確認すべきです。

これらの調査のために、営業担当役員に再度問いただそうと何度も電話しましたが、電話はそれ以来不通です。
また、C社の事務所にも出向きましたが、国王生誕祝日の連休(1週間)と重なったためか事務所もシャッターが下りたままです。 本当にC社はどうなってしまったのか?

連休明けに、やっと営業担当役員との連絡が取れ、明日事務所に来るように言われました。
5月26日にC社を訪問しました。
果たして、C社の事務所は何もなかったかのように以前どおりの営業を続けています。
以下はC社のパテント(営業ライセンス)で、社長の写真付きです。これも以前と同じく事務所に掲げられています。(写真は肝心の部分はカットしてあります。)

しばらく待たされて、例の営業担当役員が少し前よりスッキリした感じで現れました。

私 「C社の現状についてもう少し詳しく聞きたい。また、C社とS.N. Groupの関係についても確認させてください。」
営業担当役員 「 連絡取れずにごめんなさい。あなたの意図はわかります。説明します。」

それから、彼女が語ったことは更に驚くべき内容でした。
次回に続きます。

キャッサバ植え付けの戦い: 雑草の「癌」、笹の駆除に苦戦!

2014年5月31日

前回の記事で、水害や害虫のメーリーバグの被害でキャッサバの植え付けが遅れ、遅れを挽回するためにワーカーの増員を図って苦戦していることを報告しました。
しかし、その間にも別のキャッサバの大敵、雑草は着々と農園にはびこり始めていました。

最初に農園の土地の木を伐採、抜根してトラクターで耕作すると、土地の表面はクリーンアップされて、一見何も無くなります。しかし、地中には雑草の種や根が残っており、本格的なスコールが降ると瞬く間に芽を出し成長して、1か月で花を咲かせるものもいます。

我々が植え付けに手間取っている間に、4月8日の最初の本格的なスコルールから1か月半が経ち、雑草も勢いを増しています。
特に、厄介なのは笹です。他の雑草は普通の除草剤で駆除できますが、笹はかなり強いものを使っても死にません。強烈なSodium Chlorateなどを使えば駆除できますが、その後土地に毒性が残るため食用作物は植えられなくなってしまいます。
また、笹は草刈をしても根が一部でも地中に残ると再生してきますので、根を全て取り切る必要があります。

正に、雑草の「癌」のような存在です。手術しても全て取りきらないといけませんし、化学療法(薬剤)も人体を傷めつけるほどのものでない効きません。

ところが、困ったことに、この農地を確保した時にはわからなかったのですが、この土地は元々笹の独占する土地だったのです。全250ヘクタール中80ヘクタールに笹が蔓延っています。
下は、開墾前の土地、木の間は笹だらけです。(スコールが降って笹が復活してきました)

笹が茂ったキャッサバ畑。キャッサバの苗はまだ芽もでていない(白矢印)一方、笹が大きくなっています。

このままでは、キャッサバが育つ前に笹に覆われてしまい、日光が届かなくなってイモが育たなくなってしまいます。
カンボジアの農薬会社に問い合わせても、有効な対策は出てきません。

そこで、カンボジアが農業技術を輸入している先のタイに、私が10日ほど前に飛び、大手の農薬会社を回りました。電話でアポを取って5件ほど回りましたが、日本人ということで概ね丁寧に対応してくれました。

最初のA社では、最初Marketing Managerが対応しましたが、私が「Sodium Chlorateが入手できないか?」と聞くと、Managing Directorが出て来て「どこで、そんな危険な薬品を知ったんですか?タイでは政府が規制していて一般には入手できませんよ。」
この方は、相当な農薬のプロですが、タイでは入手できないか、土地をダメにしてしまう薬しか思いつかないという結果でした。

4件目のE社は、電話で私が日本人でカンボジアで農園をやっているというと、Export ManagerのSさんが会社に来る様言ってくれました。
ところが、言われた住所は高級住宅地で大きな邸宅が並んでいて、中々E社を見つけられません。さんざん探し回り、大邸宅に小さくE社の看板を見つけました。

早速、中に通されると大きな会議室があり、Sさんと技術スタッフの他に、やけに目つきの鋭い1人のお婆さんが待っていました。実はこのお婆さんはE社の創業一族の重鎮でExecutive Director の肩書を持っています。

最初は、中央に座ったお婆さんから、私の仕事や家族のことをしつこく聞かれ、30分も話してやっと本題に入りました。
本題に入ってもこのお婆さんが仕切ります。農薬に付いてものすごく詳しいのです。時に大学の講義の様になりました。
結局わかったのは、一つの農薬で簡単に笹を退治できるようなものはないということでした。E社のレシピは、
1.トラクターで土地を掘り返し、根を地表に出させる
2.人手で根が抜けた笹を出来るだけとる。
3.万能薬と言われるGlyphsoteで、更に叩く。
4.それでも地表に残った根があるので、それに芽を出させないように、もう一つの薬品、Acetochlor 50%を撒く
という複雑なものでした。

その後、カンボジアに戻り、E社のレシピを基にVP百津を中心に検証しました。
上記3.のGlyphsoteはあまり効果が無いようです。それよりも、やはり1.トラクターで根を地表に出させるというのがかなり効果的です。
下は、その写真で、地表に出た根(白矢印)は強烈な日光を浴びて死んでしまいます。

しかし、この状態でも、地中にある反対側の根は生き延びます。そこで、先ほどと直角方向にもう一度トラクターで耕作すると、この状態の笹は反転して地中の根が今度は地表に出てきて日光を浴びて死にます。

この様な検証の結果、以下の対応に落ち着きました。
1.トラクターで土地を掘り返し、根を地表に出させる
2.数日して地表の根が死んでから、再度直角方向にトラクターで土を掘り起こし、反対側の根も殺す。
3.人手でできるだけ、笹を取り除く
もう一つの薬品、Acetochlor 50%も効果が数日しか持たないので費用対効果が低く使えません。

それから、既にキャッサバの苗を植え付けてしまったところでは、さすがにトラクターで土を掘り返す訳にはいかないので、人手で刈り取ります。笹はまた復活してきますが、その時にはキャッサバが先に成長して地面を覆って、笹に日光が届かなくなるというわけです。

というわけで、人海戦術の草刈作戦が始まりました。ワーカーはチョッカというクワを振るいます。

苗植え付けのための戦いは、まだまだ続きます。

[追記あります] キャッサバ植え付けの戦い: ワーカー確保難!

2014年5月24日

弊社のKratie州にあるキャッサバ・プランテーションでは、キャッサバの苗植え付けを、4月8日に雨季最初の本格スコールが降ったのを合図にその翌日から始めました。来年2-3月に収穫するためには5月末までに植え付けを終わらせる必要があります。
植え付けの様子です。 茎を30cmに切って畝に差し込んでいきます。

しかし、これまで幾つかのの記事で書きましたように、害虫大発生、水害、笹の害などカンボジアの熱帯の大自然の洗礼を、これでもか!というくらい受けて、植え付けは度々中断を余儀なくされました。

この遅れを取り戻すためには、植え付けワーカーの大動員しかありません。
しかし、実はこれが一筋縄では行きません。

弊社のプランテーションでは、正社員(Permanent Worker)はマネージャー以下15人程度ですが、短期間で植え付けるためにはとても足りず、数十人~百人程度のテンポラリー・ワーカーを確保する必要があります。

最初は、近くの村から日雇いのワーカーを掻き集めていました。近くの村のリーダーに頼んで、普段仕事の無い人を1日5ドルの賃金で来てもらうのです。
テンポラリーワーカーにしてみても、家でブラブラしているよりも貴重な現金収入を稼ぎたいので、多くが集まってきました。

しかし、ワーカーが集まって来て植え付けが順調に進むと思われましたが、多くの問題が起こりました。
先ず、第一に仕事のやり方が日本では考えられないほどいい加減です。
例えば、苗を15cm~20cmの深さまで地中に刺さなければならないのに、土が固い場所では5cmほど刺して止めてしまいます。
このように苗の刺し方が浅いと芽が出ずに苗が死ぬ確率が高まってしまいます。

下の写真は植えたものを抜いたところ、苗の上端から白矢印までの5cm程度しか刺していません。

正社員のグループ・リーダーが注意するのですが、中々改めないし、厳しく言うとすぐ来なくなってしまいます。

第2の問題は、仕事の速度があまりに遅いことです。当初の想定では、弊社の正社員の実績値から、1ヘクタールの植え付けに1日で8人程度でできるとみていました。ところが実際には1.5~2倍の人数が掛かっていました。
昼間40℃に達する炎天下での肉体労働なので、あまり真面目にやると体を壊してしまいますし、早くやっても賃金は同じなので手を抜くのは分かりますが、あまりに生産性が低い。

午前11時から午後3時までの灼熱の時間帯を避けて休み、夕方近くから仕事をするように提案してみましたが、過ごしやすい夕方は早く帰って遊びたいようです。

第3の問題は決定的なのですが、テンポラリーワーカーは早朝に我々が村にトラックで迎えに行き、4時半に仕事が終わると村まで送り届けます。
こんな感じです。 これで50人ほど乗っています。

しかし、度々のスコールによって水害が起こり、村と我々の農園の間の10Kmほどの道が寸断されてしまい通れなくなる事態が頻発しました。テンポラリーワーカーが村から働きに来られません。
これで、手も足も出なくなりました。 植え付けの遅れは増々拡大していきます。

そこで、対応策としたのは、テンポラリーワーカーでも別の種類の人たちを雇うことです。
我々は、per-hectare- workerと勝手に呼んでいますが、働いた日にちにかかわらず1ヘクタール植える度に定額を支払う契約のワーカーです。

この人たちは村から通うのではなく、農園に住み着いて働いてくれるので、水害で村からの道路が通れなくなっても問題ありません。 写真のような小屋を作って住んでいます。

当初彼らを雇わなかったのは、こちらの方が普通の日雇いワーカーよりも割高だと考えたからです。しかし、実際にはこちらの方が生産性が高いことが分かりました。
彼らは、様々な農園を渡り歩いているので、一種の植え付けのプロで手際が極めていいのです。
例えば、気温40℃の真昼は日陰で、キャッサバの茎を切って苗を準備する作業をやり、夕方涼しくなってきてから集中的に植え付け作業をやってしまいます。

現在、この人達を55人雇っていますが、植え付け速度アップのために更に30人増やそうと、彼らのリーダーと交渉中です。しかし、追加のワーカーは中々来てくれません。彼らはあちこちの農園を渡り歩いていますが、賃金不払いが続発しているために、疑心暗鬼になり我々を中々信じてくれないのです。

現在来ている55人の賃金をキチンと支払う実績を作って、信用を勝ち得るしかありません。
植え付けスピードアップのための戦いはまだまだ続きます。

<追記>
今日、農園に入ってみて驚きました。我々が30人増やそうとしている、per-hectare- workerがほとんどいません。なんと、55人中の40人が故郷の村に帰ってしまったのです。
(もぬけの殻の住居)

理由を聞いてまたビックリ。 昨日、あるエリアの植え付け終わったので、この人たちのリーダーに代金を渡したのですが、リーダーがピンハネしてワーカーに賃金をきちんと支払わないためとのことです。

早速、弊社のマネージャーのウドム君がこのリーダーを呼んで事情聴取をしました。
下の写真の左の半裸のおじさんがそのリーダー、右がウドム君です。

この半裸おじさんは、「金は(ワーカーに)払っている」、「ワーカーは明日来る。」とうそぶくばかりです。

どうもカンボジア人に多い、まとまったお金が目の前にあると手を出してしまう、悪い癖がこの人にも出たようです。

「ワーカーが賃金不払いが続発して疑心暗鬼になり、中々来てくれない」と書きましたが、原因は雇った農園ではなく、このリーダーにあったようですね。
 
兎も角、彼には頼らず別の幾つかの村に当たって見るしかありません。
ワーカー確保の戦いはまだまだ続きます。

キャッサバ植え付けの戦い: キャッサバ・プランテーションの水害編

2014年5月22日

前回までの記事で、弊社のキャッサバ・プランテーションの害虫被害の緊急対応が完了し、キャッサバの苗(茎)を売ったC社への損害賠償交渉の段階になったとお伝えしました。

C社の問題は滅多にあり得ない事情があり、弁護士も対応を検討中ですので、情勢が見えてきたところでレポートしたいとおもいます。

前回の記事でも、水害、ワーカー不足などで植え付けが遅れていたことをお伝えしました。今回は水害に付いてお話します。

キャッサバは、来年2-3月に収穫。育つのに10-11か月かかるので、逆算すると今年の5月末には植え付け完了が必要です。
しかしながら、前回の記事時点で全体250ヘクタール中55ヘクタール、20%強の植え付けに留まっていました。

遅れの第一の原因は、水害です。
4月8日に雨季最初の本格的な雨が降って以来、弊社プランテーションは十分な雨に恵まれて、植え付けたキャッサバも順調に育ってきました。
ところが、十分な降雨は実はもろ刃の剣で、水害を引き起こすのです。

下の写真は、水害で崩れた道路です。

道路の両側には、排水溝(Drain)を掘って、水を外に流し出すようにしています。しかし、スコールが度々重なると、排水能力を超えて水が溜まり、溜まった水が道路を侵食して壊してしまいます。
そうなると、ワーカーやキャッサバの苗を植え付け場所まで運ぶことができません。植え付け場所までは数キロも離れているので、人は兎も角、数トン分の苗はトラックかピックアップでないと運べないのに、道路が寸断されているのです。

水に侵食された道路を無理に進むと、下の写真の様に途中で車が水没してしまいます。

下は、この土地の地図ですが、道路が土地の周囲と赤い細い線の部分です。黒い星印の部分の道路が壊れてしまい、すぐに対応が必要でした。 因みに、水色の部分は雨季に水没するエリアです。

道路の両側に排水溝が掘ってあるのですが、どちらか片側の排水溝が水で溢れかえって、道路を侵食します。
そこで、考えられるのは、両方の排水溝をつないで、水で溢れている排水溝から別の側の排水溝に水を流してしまうことです。
道路の下に水の通路を作るので、一番簡単な方法は道路の下に土管を埋めることです。
早速、写真のような土管を用意して埋める工事をやりました。

また、土管では水を流しきれない部所は、道路をカットして水を流し、カットしたところには木の橋を架けます。
幸いなことに、木は腐るほどあるので土地内の森林で切ればただで入手できます。
こんな感じで伐採して木材を調達します。

橋の専門家を頼んで橋を架けました。こんな感じです。

橋が完成すると、ピックアップや重機も通れるようになりました。おかげで苗の植え付けも進み出しました。

今回は、まだ雨季の初めのためにこの程度の水害ですが、7、8、9月頃には終日続くスコールが2週間程度に及ぶ場合もあり、プランテーション全体に水が溢れかえります。
特に心配しているのは、上の地図で黒い楕円で囲んだエリアです。ご覧のように水没エリアに完全に囲まれているので、道路も水没しやすく陸の孤島状態になる可能性があります。

今後その場合の水のコントロール方法が大きな課題です。対応は基本的には、パワーショベルで追加の排水溝を川などまで掘って水を流し出します。
そのための準備としてパワーショベルを確保はしましたが、迅速な対応が必要です。グズグズしていると、キャッサバの根(イモ)が水で窒息して枯れてしまいます。

局所的な水没が起こった場合には、前回の害虫の轍は踏まずに見落としは絶対できないので気を引き締めてかかる必要があります。

キャッサバのペストとの戦い 終戦処理編:キャッサバ・プランテーション

2014年5月18日

弊社のキャッサバ・プランテーションで、キャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれる害虫、メーリーバグ(Mealybug、粉カイガラムシ)が大発生して、植え付け用にストックしていた苗用の茎を食い荒らしました。

前回の記事では、緊急対応として、茎を3種類に選別(①健康体、②中間のもの、③被害を受けて使えないもの)、洗浄、消毒、被害を受けた茎の焼却の様子をお伝えしました。

焼却された黒死した茎

茎の焼却後は、畑への対応です。この時点で、全250ヘクタール中約55ヘクタールの畑の植え付けが終わっていました。折角苦労して植えた苗が喰われてしまっては大変なので、すぐにこの55ヘクタールの植え付け済みの苗への殺菌・殺虫剤散布を突貫作業で行いました。

ここでまでで現場対応は一段落ですが、気を緩める余裕はありません。

キャッサバの植え付けは、来年の収穫時期の都合で、この5月一杯で完了する必要がありますが、この時点で全体の20%強しか終わっていません。水害やワーカーの確保などの問題を解決してやっと軌道に乗りかけたところで、メーリーバグの襲来です。

大量の植え付け用苗が喰われてしまったので、すぐに被害本数を特定して、替りの苗を入手する必要があります。

茎を選別して、洗浄・消毒し、②中間のもの(ある程度被害を受けてはいるが使える可能性のあるのも)の回復を数日待ち、最終的にどの程度の茎が使えなくなったのか、被害を確定しました。

輸入商社C社経由でタイから輸入した約2万束のうち、約1万3千束が黒死または重大な被害のために焼却せざるを得ませんでした。

他にカンボジア国内から調達したものが約1万束あり、それには全く被害が及ばなかったので、全体として3万束の約40%以上を失ったことになります。

その結果、およそ110ヘクタール分の植え付け用苗が足りなくたったので、その確保のためにVP百津とマネージャーのウドム君が茎の焼却開始の翌日すぐベトナムに買い付けに飛びました。

メーリーバグが付いた苗用茎を我々に売ったC社に対して、勿論すぐに代替を要求しましたが、「社長が鼻の癌でタイの病院にいるので、C社のパートナーから社長代理が来るまで結論が出ない。」などと訳のわからないことを言って何も動かないので、C社を当てにしてグズグズしている訳にはいきません。

何故ベトナムに飛んだかというと、弊社のプランテーションのあるKratie州はベトナムと隣接しているために、キャッサバ苗の情報もあり、運ぶのにも近い、またタイで開発された多収量品種の苗も入手できる可能性があったからです。

以下の写真は、ベトナムの農園のキャッサバの茎です。しっかりとして良い茎です。

ベトナムの農園のイモのできも合格点です。

結局、ベトナムで「ミーオン」と呼ばれている多収量品種の苗を110ヘクタール分契約しました。
以下の写真は契約の様子。中央のおばさんが、ベトナムーカンボジア間の仲買人、その右が茎を提供する農園オーナー、一番左がマネージャーのウドム君です。

ベトナムからの茎は、早速一昨日5月16日から現場に到着し始め、キャッサバの植え付け作業もトップギアに入ってきました。

あとは、我々に茎を売ったC社への損害賠償請求が残っています。
私は一昨日5月16日にC社を訪れました。そこではいつもの営業担当役員と、「病気」の社長から引き継いだ新社長の秘書と称する人物が待っていました。
そこで聞いた話は、以外なものでした。。。次回C社との場外乱闘編?に続きます。。

キャッサバのペスト(黒死病)との戦い:キャッサバ・プランテーション

2014年5月14日

Kratie州の弊社のキャッサバ・プランテーションでは、キャッサバの苗用に蓄えていた茎を食い荒らしていた害虫によって、茎の山の内側は下の写真のように養分を吸い取られて抜け殻になり、黒死しています。

キャッサバのペスト(黒死病)と呼ばれるメーリーバグ(Cassava Mealybug、日本名 粉カイガラムシ)と判明した翌日、この茎を売ったC社の専門家D氏と現地に入りました。

私 「病気はメーリーバグだけですか? どう対処すればいいんですか?」
専門家D氏 「メーリーバグと他に2種類ある。 死んでいるのと、白い粉(卵)がかかっているのは焼くかないし、あとはこの薬を使ってください。」
私 (心中)「どう見ても100%近くの被害はメーリーバグだけの様なので、他の2種類は問題なのか? 白い粉がかかっているのを全部焼くとしたら、ほとんど全部焼くことになる。白い粉は洗えば取れるのに変だ。」
ということで、D氏はあまり信用できず、まともな専門家の診断が聞きたいと強く思いました。

並行して、カンボジアの農作物の病気の専門家として有名なT氏も呼んでおり、現地にその翌朝到着しました。

専門家T氏 「主にメーリーバグですね。その他の病気もあるけどこの際問題にはなりません。」
「まず茎を3種類に分けてください。①元気なもの(白い粉がかかっていても葉が勢いよく伸びているもの)、③死んだか死にそうなもの、②中間のもの。 この②中間のものは半分程度は回復して使えますよ。」
ということで、やっとまともな専門家に出会いました。

T氏と議論して以下の対応策を決めました。
1.茎をT氏の言う通り3種類に分ける。
2.元気なものと、中間のものは、先ず洗剤で洗って虫と卵を洗い落とす。
3.死んだまたは死にそうなものは、焼却する。
4.元気なものと、中間のものは、洗ったあとに、殺菌剤+殺虫剤+肥料その他を混ぜた薬を万遍なく無くスプレーする。
5.元気なものは、薬のスプレー後すぐに苗として植えることができる。
6.中間のものは、最長2週間、3-5日おきに上記の薬をスプレーしながら様子をみる。回復してきたら苗として植えられる。回復したかどうかは白い粉が集中して付着している芽の部分の回復で判断する。

以下の写真は、②中間のもので、白矢印の芽のところに白い粉(卵)が集中的に付着しています。

被害の規模? 大損害には間違いありませんが、被害規模の特定には先ず①、②、③に仕分けしなければ分かりませんので、兎に角、作業に取り掛からなければ。
早速その日の午後から、ワーカー30人がかりで茎の選別、洗浄、殺菌・殺虫作業が始まりました。

ワーカーが、仕分けして茎の束を運んでいます。写真の左にいるのはアシスタントマネージャーで、仕分けを指揮しています。(こんな時に冗談を言っている場合ではないのですが、年齢・体型と命令するときのしぐさが北朝鮮の最高指導者そっくりなので、私は彼をキム・ジョンウンと呼んでいます。)

以下は洗浄の様子です。

1時間ほどすると、洗浄用プールが以下のような泡とメーリーバグの卵でいっぱいになりました。

こんな状態でも、キム・ジョンウン君はなおもこの洗浄液を使おうとするので、すぐに洗浄液を取り替えさせました。
こんな卵でいっぱいの洗浄液では逆に卵を茎に付着させているようなものなので。
次に、薬をスプレーします。

因みに、スプレーした薬(殺菌剤+殺虫剤+肥料その他)は以下のような毒々しいものです。

私も丸2日間40℃の炎天下、頭から滝の汗をかぶって作業に張り着いて指示を出しました。この作業に万が一にも不十分な点があるとメーリーバグの被害を抑えきれないので必死です。

そして3日目に悲しい作業です。死んだまたは死にかけの茎を焼却するのです。遥々タイから多収量品種を高いお金で買い、35トントラック10台以上で必死に運んだ虎の子に自ら火をかけなければなりません。
しかしながら、焼かなければ一部生き残っているメーリーバグがここからまた蔓延する恐れがあります。

上の写真のような茎の山を10山ほど焼きました。(涙)

お陰様で、このように緊急対応は何とか終わりましたが、まだ終戦処理は一杯残っています。虎の子の茎に火をかけて落ち込んでいる暇はなく、善後策の真っ最中ですが、この様子は次回に報告します。

ペスト(黒死病)の襲来!:キャッサバ・プランテーション

2014年5月10日

一昨日5月6日の午後、プノンペンにいた私に電話がかかり、現地にいた弊社のVP百津が焦った声で、
「キャッサバの茎の半分が、病気か害虫で死にそうです。すぐ、写真を撮って専門家にみせます。」
私 「なぜ今までわからなかったの?」 
百津 「キャッサバの束を積んである内側がやられてるんですが、束の山の外からは見えないんですよ。」
私 「兎に角、すぐにやられている束と大丈夫な束を分離して隔離して。。」

ということで、すぐに隔離作業に入りました。
また、写真をキャッサバの苗(茎)を買っているC社の専門家と、地元の専門家に送りました。(以下)
白い粉がまぶしたようになり、右側はすでに枯れていますし、上部中央の葉も黄色く縮んでいます。

地元の専門家には、その夜写真を見せて話を聞きましたが、「ウィッチーズ・ブルームかメーリーバグだねえ。両方かも。はっきりしないけど。」 
C社の専門家も 同じようなことを言っていて、この夜は結局はっきりしませんでした。
しかしながら、どちらの病気も「キャッサバのペスト(黒死病)」と呼ばれる恐ろしいもので、早急に手を打たねばなりません。

翌朝、百津に電話しました。
私 「病名を特定しないと手の打ちようが無い。闇雲に薬を撒いても何にもならないので、病気を特定してそれに合った薬を使いたい。写真からはメーリーバグの様に見えるけど、メーリーバグはすごく小さな昆虫だから、虫がいるかどうかをよく見て確認してよ。」
お昼に百津から電話があり、「虫が居ました。写真を送ります。」 と、いうことで以下の写真です。

メーリーバグそのものです!(写真をクリックしていただくと虫がよくわかります)
この虫が、キャッサバに取り付いて栄養分を吸収し枯らせてしまうのです。白い粉のようなものは卵です。
日本名は、粉(コナ)カイガラムシ。英語名は、Cassava Mealybugです。
一昨年、タイでこれが大発生してキャッサバの収穫量が激減したために、値段が急騰したこともあります。

タイから茎を運んだときに卵の状態で運ばれてきて、弊社の農園に来て羽化し、大発生したに違いありません。
最初からこの害虫は警戒して対策も考えてはいましたが、まさか、苗を植える前に大発生するとは!

その足で、キャッサバの茎をタイから輸入したC社に向かい、営業担当役員と話をしました。
私 「社長に直接話をしたい。至急、専門家の現地派遣とキャッサバの茎の交換をお願いしたい。」
営業担当役員 「社長は病気で、タイに行って入院しています。専門家は派遣しますが、茎の交換は社長の代理と相談しなければ。。」
私 (心中) 「社長はまた病気かよ。死にかけた茎の時も(先日の記事)奥さんに浮気されて離婚した心労で入院してたなあ。」 「兎に角、専門家のD氏と一緒に明朝現地に行って、現場を見て判断してください。」

ということで、「キャッサバのペスト」との戦いが始まりました。今日も1日現地で対応に明け暮れました。様子は次回の記事で報告します。