カンボジアの農業プランテーションでは、胡椒、キャッサバが有望

2014年3月19日

前回の記事で「カンボジアの農業プランテーションは、高い利益の可能性がある。」と述べましたが、それでは、実際には何を作ったら良いのでしょう?

<天然ゴム>
私が、2011年にカンボジアで天然ゴムのプランテーションを始めたときには、天然ゴムの絶頂期でした。天然ゴム価格は前年の2倍に跳ね上がり、天然ゴム農園が奪い合いになって、天然ゴム農園の価格もうなぎ登りの状態でした。
このバブルの理由は、国際的な投機資金が大量に商品市場に流れ込んできたためですが、投機資金は中国の自動車生産拡大を囃し立てたわけです。

確かに、天然ゴムが無ければ自動車のタイヤは作れず、中国での自動車生産はここ数年でアメリカを抜いて世界一になり、需要は拡大の一途でした。

しかしここにきて、中国の自動車生産急拡大にブレーキがかかってきました。主な理由は例のPM2.5による深刻な大気汚染のために、中国政府が車の生産・販売について規制を強化しているためです。
そこで、それを見た投機筋が一斉に商品市場から資金を引き揚げました。

そのため、天然ゴムの国際価格は3年前の最高値の1/3に買い叩かれ、天然ゴム農園からの樹液の出荷価格も半額以下に暴落してしまいました。
バブル崩壊して、正常な需給関係で決まる価格まで下がっているため、今後これ以上の下落は考えにくく、現時点でもコストが低いためにかなり利益は出ますが、一時ほどでもない訳です。

<胡椒>
私が現在、カンボジアの商品作物の中で一番有望視しているものの一つは、胡椒です。

実際、胡椒の高利益率については、カンボジア政府も認識しています。 先日、Kratie州政府のある副局長さんから聞いた、政府の調査した「カンボジアでの利益率の高い作物ランキング」のNo.1は胡椒です。

胡椒の大きな特徴は、少ない面積の土地で巨大な売りあげが可能なことです。
実際、軌道に乗ると1ヘクタールの胡椒畑から、日本のサラリーマンの平均年収程度の売上を上げることができます。

この年収はKampot州かKep特別市に農園を作って、カンポットペッパー協会に加入して、「Kampot Pepper」ブランドを名乗れる場合で、このブランドが無い場合には、販売価格は半分程度になりますので、どうせやるなら「Kampot Pepper」ブランド付に限りますね。

近年、胡椒の国際価格も低落気味ですが、「Kampot Pepper」ブランドの胡椒は年々価格上昇しています。
「Kampot Pepper」ブランドについては、別に記事を書くことにします。

胡椒は少ない土地で巨大な収益が見込めるために、多くのカンボジア人が参入を試みてきています。
但し、高い参入障壁があります。初期費用がかなり高いことです。
そのため、大きな胡椒農園が中々作れず、大半の農園は0.5ヘクタール以下の大きさに留まります。

1ヘクタール分の初期費用は、東京の平均的なマンション1件分の1/5程度ですから、普通の日本人が個人で始めるのであれば、日本でマンション投資をするより格段にお薦めです。

実際、日本の個人の方で昨年から、Kep特別市のうちの農園の隣で0.5ヘクタールの胡椒農園を始めて、更に今年拡張される方もおられます。
また、日本胡椒協会の林さんも、今年からうちの隣で1ヘクタールの胡椒農園を始めました。
(林さんのブログ記事はこちら→https://blog.goo.ne.jp/kosyou1

胡椒は、巨大な収益が望める一方、まともな収穫量を確保するためには、専門家が細心の注意を払いながら世話をしていく必要があります。

従って、我々の胡椒農園では、苗を植える前の畝や施設を作るところから、詳細な手順まで、カンポットペッパー協会の専門家の指導を仰いでいます。

<キャッサバ>
キャッサバも、胡椒同様に高い収益が期待できます。
カンボジアのキャッサバの需要は、隣国のタイやベトナム経由で中国の食用になりますが、食べ物は景気や大気汚染にかかわらずどうしても必要なものなので、販売価格は安定しています。

但し、胡椒とは正反対で1ヘクタール当たりの売上は低いので、ある程度の売り上げを確保するためには大きな土地が必要になります。

大きな土地を確保するためには、それなりの資金とカンボジア特有の土地取得ノウハウが必要なので、個人よりも企業向きです。

実際、数百ヘクタールの農地が確保できれば、日本の中堅企業並の売上が見込めます。
但し、売り上げは中堅企業並ですが、カンボジアの人件費や地代等の経費は日本と比較にならないほど極端に安いので、利益は日本の中堅企業とは比較になりません。

この巨大な利益を求めて、中国やベトナム等の企業が多数、カンボジアで数千ヘクタールのキャッサバ・プランテーションに進出してきています。

大きな土地があるだけでは、当然ながら、まともな収穫量を確保することはできず、キャッサバ栽培のノウハウ、大規模農園マネージメントが重要ですが、これらについては、今後の記事で我々の実際のキャッサバ・プランテーションの七転八倒? or  七転八起?でレポートして行きます。 

 

カンボジアの農業プランテーションは高い利益の可能性を秘めている

2014年3月18日

私が50歳を過ぎてから起業し、カンボジアで農業プランテーションを始めた大きな理由の1つは、高い投資利益率が得られる可能性にあります。

<カンボジアで(投資の)利益率が高い訳>

カンボジアの農業プランテーションは、上手く運営できれば、日本での通常のビジネスとは桁外れに(投資)利益率が高く、また、同じ東南アジア諸国の特に日本人になじみ深いタイ、マレーシアと比べても数段利益率が高いです。

例えば、東京ディズニーランドと同じ大きさのゴム農園が日本のマンション一軒分のお金で買えます。
これぐらいの大きさのゴム農園をまともに運営すれば、天然ゴム価格の変動具合にもよりますが、ほぼ大企業のサラリーマン(管理職)並の年収が得られます。
一方で、日本でマンション一軒に投資しても、収益はご案内の通り、その1/10以下程度です。

また、天然ゴムの本場タイ、マレーシアで同じ大きさのゴム農園を買おうとすると、地価が高いため3-5倍のお金がかかります。
つまり、同じお金で1/5~1/3の大きさしか買えません。ゴム農園の売り上げは、大きさにほぼ完全に比例するので、同じお金を投資しても1/5~1/3の売り上げにしかなりません。

それでは何故、「カンボジアなんか」が利益率が高くなるのでしょう?
それは、多くの 日本人に「カンボジアなんか」と呼ばれる東南アジアでも最後尾の開発遅れの為に、極端に物価、地価、人件費が安いからで、そのために例えば天然ゴム農園も安く買え、安く運営できるのです。

現在、カンボジアの1人当たりのGDPは1000ドル以下で、日本の30分の1以下、タイ・マレーシアの5分の1以下です。それだけしか稼げない、つまり稼ぎ=給料=人件費が極端に安い。
実際、カンボジアの最低賃金は月81ドル。工場や農園の労働者の給料は月100ドル前後です。

また、その給料で十分生活できるためには、物価も地価も格安な必要があります。

<なぜ、農業なのか>

当然、「物価、地価、人件費のコストが極端に安いことはわかったけど、カンボジアで安く物を作っても、売るときも高く売れないんじゃないの? GDPが低いのはその証拠だよ。」
という反論もでてきます。

しかし、国際価格の決まっている商品は、どこの国で作ってもほぼ同じ値段です。
例えば、天然ゴムの値段は、カンボジア、タイ、マレーシアどこで作っても、ほぼ同じ(国際価格近辺)で売ることができます。

そこで、タイ、マレーシアよりも、カンボジアで国際価格の決まっている商品を作れば、安く作れる分(投資の)利益率が高くなるという訳です。
カンボジアで国際価格が決まっていて、簡単に始められるものといえば、農業、中でも輸出用の商品作物、即ち、米、天然ゴム、胡椒、キャッサバ、等になります。

例えば、国際価格の決まっているものと言っても、当たり前ですがカンボジアで半導体は簡単には作れません。
一番簡単で、リスクもないのは農業です。なぜなら、カンボジアの主力産業で多くの安定的に運営されている実績、経験、ノウハウがあるからです。

実際、例えば、天然ゴム農園はいたるところにあり、収穫した樹液の売り先のゴム工場もいたるところにあってすぐに見つかります。また、ゴム作りのノウハウを持った安い労働者もふんだんにいます。
従って、天然ゴム農園を買えば、運営にはそれほど不自由しないわけです。

これまでの議論から、「カンボジアなんかで、農業なんか」に高い収益可能性があるということになる訳です。

<ラオス、ミャンマーとの違い>

但し、これまでの議論では、「カンボジア」を「ラオス」や「ミャンマー」と言い換えてもほぼ同じです。
実は、これらの3か国の一人当たりGDPはほぼ同じだからです。
実際の進出のためには、それぞれの国情の違いを考慮する必要があります。

先ず、ラオスとの違いですが、ラオスは社会主義国で、自由な経済活動が認められていません。
一方、カンボジアは実は立派な資本主義国で、会社を作って人を雇って農園を運営するのも一切自由勝手にできます。

ミャンマーとの違いですが、ミャンマーはまだ軍事政権から自由化が始まったばかりで、いたるところに障壁があります。
例えば、通貨の兌換や海外送金も自由にはできず、折角苦労して働いて現地通貨チャットを貯めこんでもミャンマー以外では使えませんし、ドル・円にも中々替えられず、仮にチャットをそのまま海外に持ち出しても紙屑同然ですね。

一方、カンボジアでは、通貨は(現地通貨リエルもあるが)事実上アメリカドルなので、働けばアメリカドルが得られ、海外送金も原則自由ですので、違いは歴然です。

従って、やはり「カンボジアなんか」になる訳です。

<追記あり>カンボジアの農園開拓でいつも起こること

2014年3月16日

カンボジアの農地開拓でいつも起こることがありますが、「今回は不思議に起こらないなあ。」と思っていたら、やはり起こりました。

<開発費用を使い切ってしまったんですが。。>

キャッサバ・プランテーションで、ここ一週間ほどブルドーザー・パワーショベルの稼働率が悪くて、あまり進んでいません。そこで、ブルドーザー部隊の隊長にクレームしたところ、「渡されたお金を全て使ってしまったので、ガソリン代がなくなって稼働できなくたった」とのことです。
「そんなこと早く言ってよ。なんで一週間も黙ってたの!?」という感じですね。

そこで、この土木会社のオーナーである、‘一つ星‘の将軍様(准将)にクレームしました。
我々 「契約書に書いてあるのだから、その通り責任を持ってやってください。」
将軍様 「え?分かりました。もう少し待ってください。ガソリン代を借りてきてやりますから。」

どうも現場の隊長から、話を聞いてなかったようです。カンボジアで特に不足しているのは、まともな中間管理職ですが、ここもご多聞に漏れないようです。

しばらくして、
将軍様 「ガソリン代が手当てできないので、前払いで5000ドル貸してください。」

通常は、この場合はカンボジアではブルドーザー部隊の会社は、逃げてしまいます。
但し、うちのケースでは、このオーナーは実はこの土地のオーナーでもあるので、逃げられないので泣きついてきたわけです。

我々 「自分で工夫してガソリン代を調達してください。(高が5000ドルでしょ。)」
将軍様 「折角、オタクのために頑張って開拓しているのに!」と怒り、逆切れです。

私が弊社のVP M氏に向かって「ビジネスで逆切れとは、子供並だね。」
「一応、カンボジアでは偉い立場の将軍様なんだけどなあ。。」

M
氏 「基本的に子供なんですよ。5000ドル借りるために何を譲歩して交渉するのか、その知恵がでないので、我々が教えるしかないんですよ。」
 
私 心の中で 「カンボジアにきて1年足らずなのに、やけに大人の発言だなあ!」と感心のあまり、
「わかった、それじゃあ、5000ドル貸す代わりに、50ヘクタール土地を余計に無料で貸してもらおう!」
ということになり、(足元を見て)その線での交渉になりました。

このように、土木工事を頼んだ場合、カンボジアでは最初の契約額の1.5倍~2倍、3倍かかることが普通です。従って、私も今回こういうトラブルを予期していました。


<政府事業でも全く同じ>

この1.5倍、2倍、3倍は当たり前は例えば、民間だけではなく、政府の事業でも同様です。

数年前に、フランス統治時代の鉄道を改築する大規模な鉄道工事がありました。
確かアジア開銀がお金を出したと思いますが、何故か(事情は多分に想像できますが)工事が半分も終わらないうちに、予算を使い切ってしまいました。

カンボジアでは当たり前のことなので、カンボジア政府が「予算が足らないので、お金をください。」とアジア開銀にねだったそうです。
が、当然、「ふざけんな!」と言われて仕方がなく、レールはそのままで工事を終わりました。

結果として、レールは第2次大戦前の非常に狭いままで、そのためにまともにスピードが出ず、事実上全く使えない。事実カンボジアでは鉄道はほとんど使われていません。


<追記>

将軍様と交渉した結果、5000ドルを前払いする代わりに、無料で50ヘクタール余計に貸してもらうことになりました。
将軍様がカシュウナッツを植える予定だった更地も含めての大盤振る舞いです。

我々が借りた250ヘクタール中で、回りよりも低地のため水の被害がでそうな場所への植え付けを止めて、その分を余計に借りる場所に植え付けることにします。

キャッサバ・プランテーション開拓 最初の1歩: 開墾編 

2014年3月14日

キャッサバ・プランテーション開拓の手順は以下のようですが、今日は3.のブルドーザーによる開墾について書きます。
1.土地の神様にお供えをして開拓の無事を祈る。
2.開拓拠点、即ち従業員宿舎、倉庫、トラクター・トラック置き場を作る。
3.原生林をブルドーザー、パワーショベルで木をなぎ倒し、抜根して、原野の状態にする。
4.原野を大型トラクターで耕作して、小木や草を取り払う。
5.更にトラクターで耕作し、土を細かくする。
6.最後に、肥料や除草剤を撒いてからキャッサバを植える畝をトラクターで作る。

開墾のためには、先ず農地の設計図を作ります。つまり、農地の地図の上に道路や排水溝(Drain)を作る場所を記入していきます。何せ(東京ディズニーランド+東京ディズニーシー)x2.5倍の広さを相手にするので、無計画に目蔵滅法ではできません。
どの場所に道路を作るのかについては鉄則があり、以下の1.2.3.の順で作ります。
1.土地の周囲を囲む様に作る
2.真ん中にメインロードを作る。
3.メインロードに交差して、400m置きに1本ずつ作る。これはワーカーが農地内のどこに行くにも道路から200m以内で行ける様にするためです。ワーカーの作業効率の問題ですね。

以下が設計図の写真です。

黒い線が道路ですが、道路上に黄色い点が数多く見えます。これは道路を作るときに真っ直ぐできるための目印のポールです。何しろ道の長さは1Km以上あるので、作るときに目印がないと曲がってしまうのです。この目印のポールにはGPSの座標を決めます。広大な原野で目印のポールを立てるときに、立てる場所をGPSの座標で確認しながら立てていくわけです。

道路は以下の写真のように、ブルドーザーで草も木もなぎ倒して作っていきます。

このブルドーザーは実に40年もの間現役で活躍してきたもので、先週一回火を噴いたのですが、すぐに復帰です。
根っこからなぎ倒された木と、出来た道路の写真です。木がなぎ倒される決定的瞬間を撮りたかったのですが、木がどちらに倒れるのかわからないので非常に危険なためできていません。

以下の写真は、うちのマネージャーが、ブルドーザー部隊の隊長に道路を作る際のGPSデバイスの使い方を教えているところです。軍服姿が隊長で、GPSデバイスを指しています。なぜ軍服姿かというと本当に軍人だからです

このブルドーザー部隊の土建会社は、所謂1つ星の将軍(准将)が経営していて、社員は全て現役軍人です。ブルドーザーの運転手もいつも軍服姿です。
カンボジアでは、軍人や役人の給料が極めて安く、生活の為に副業が黙認(奨励?)されています。ただうちのケースでは、土建屋が本業のように見えますが。。彼らは職業柄銃を持っていて、夕方にはこの原野で狩りをします。野生動物が極めて豊富なためですが、危険なので我々は夕方以降は出歩きません。

話がそれますが、役人は一般に自分の権限やポジション上知った情報を生かした副業に熱心です。例えば、知り合いの農林水産省のやや偉い役人は、良い農地の情報がふんだんに入ってくるので、安く良い土地を買って一財産作りました。また、彼は昨年プノンペンから辺境のモンドルキリ州に転勤になって、しばらく腐っていましたが、今は森林の監督権限を生かしてまた頑張っている様子です。

さて、実際にどうやって最初に道路を作ったかですが、GPSを頼りに初めは設計図通りにポールを立てましたが、ブルドーザーからはポールが草木に隠れて見えないことが発覚しました。ポールを立てるために、ジャングルに分け入って傷だらけになって奮闘したのですが。。
そこで、今度はトラクターでブルドーザーを先導することになりました。トラクターにはGPSデバイス(この場合はGPS機能付きアンドロイドスマホ)を持った人が同乗してナビゲーションをしたというわけです。

GPSでナビゲーションをした人によると、「片手でGPSデバイスを持ち、もう片手でトラクターに掴まるのだが、トラクターがひどく揺れるので振り落とされないよう必死に掴まり腕が痛い。また、GPSデバイスを見ていると、ジャングルの中なので木の枝などが次々とぶつかってきた」ということです。近代的なGPSを駆使しても、ジャングル開拓は一苦労です。

さて現時点では、周囲5Kmの道路が完成し、内部の道路も着々と延びています。道路ができると、今度はその道路を利用して内部の原生林の開拓へと進むことになります。

次回は、トラクターによる開墾をレポートします。

カンボジアの税務署に2000万円請求された!エピソード

2014年3月13日

閑話休題で、税金に関するエピソードをお話します。

昨年11月のことですが、突然税務署、しかも日本では国税庁の本庁にあたる役所から名指しで、「明日朝に出頭せよ」との命令が来ました。
何のことかと思って、経理と税務所対応をお願いしている会社の担当者に聞きましたが、「今年の売上税(毎月売り上げの1%を支払う税金)について税務署と折り合っていないので、その件ではないか」とのことだったので、翌朝この担当者と一緒に出頭しました。

国税庁の本庁の意外に地味な部屋に通されると、二人の担当官がいかめしく待っていましたが、そのうちの一人が英語でいきなり、「あなたの会社はすぐに20万ドル(2000万円)を払いなさい!」と来ました。
私: 「何の税金ですか? うちは20万ドルの売上税を払うほどの売上額も利益もないですよ。」
税務所: 「オタク、今年会社をたたんだよね。会社を止めるときには、会社の資産を売ってその20%を税金として納めないとね。」
私: 「会社の資産なんて売ってないんですけど。」
税務署: 「たとえ資産を売っていなくても、会社を止めたときには売ったとみなして、その資産評価額の20%を払う必要があるんだよ。さあ、この法律の条文を見なさい。英語で書いてあるから。」
私: 「なんでカンボジアの法律が英語で書いてあるんだ?」と思いながら見ると、確かにそう書いてあります。

私: 心の中で 「そう言えば、(ある必要性があって)カンボジアの役人B氏にうちの会社を(紙の上だけで)一回清算して作り直すことを半年前に頼んだけど、音沙汰なくて、今頃になって(紙の上で)会社が清算されたのか!?」
 「うちの会社が法律上止めたことになってしまったら、この税金を払わざるを得ないな。」
 「だけど、どうやってこんな金額払うんだ?本当にゴム農園を売らざるを得ないなあ」
と目の前が真っ暗になりかけました。

次の瞬間
私: 「うちの会社は畳んでなんかいません! 営業を止めてませんよ。」
税務所: 「だけど届が出ているんだけど」
私: 「本当にゴム農園でも毎日働いているし、その毎日の売上も経理の方に報告来てますよ。(経理担当者に向かって) さあ、君もちゃんと毎日働いているって証言してよ。」
経理担当者: 税務担当官に向かってカンボジア語で「XXXXxxxxxxXXXX
税務署の担当官2人が怪訝な顔で、カンボジア語で「YYY, vvvvvv、YYYY」と話し合っています。

税務署: 「だけど確かにこの書類で止めたと届けられているのだが。あなたサインしたでしょ」と、一枚の紙を取り出しました。そこには確かに会社代表者のサインが漢字でされています。
私: 心の中で 「B 氏の仕業だな。私のプノンペン不在中にサインが必要だったのか、だれか他の日本人に書かせたな」

私: 別の紙にサインを書きながら、「ほら、サインが違うでしょ。私のサインじゃないですよ。」
税務所の担当官2人が増々怪訝な顔で、5分間ほど話しあっていましたが、「本当に止めてないんだね?」
「止めていないなら、税金の話もなくなるのだが。」

私: 「本当に止めてませんよ。 毎日働いている。」
税務署: 「わかった。 あなたがそう言わなかったら、会社清算の最終処理の決済を、この直ぐ後副大臣にもらいに行くとこだったんだけど。」

間一髪! 危ないところでした。
副大臣の最終決済がされると、会社清算が確定して20万ドル払わざるをえませんでした。

その後、急に税務署の担当官の(たぶん)上席の方が、柔らかい態度に変わり
「去年日本に行ったけど、日本はいいとこだね。去年はxxの部署にいたので日本に行けたんだよね。」と世間話を始めました。私も上の空ながら何とか話を合わせましたが、「このカンボジアの役人も意外に人間としては良い人かも」などと考えていました。

後日、「会社は止めていません」という上申書を2通国税本庁に提出して、この件は幕引きとなりました。
20万ドルの代わりに支払ったのは、上申書提出の手数料10ドルでした。

キャッサバ・プランテーション開拓 最初の1歩: 拠点建設編

2014年3月11日

キャッサバ・プランテーション開拓の手順は以下のようになります。
1.土地の神様にお供えをして開拓の無事を祈る。
2.開拓拠点、即ち従業員宿舎、倉庫、トラクター・トラック置き場を作る。
3.原生林をブルドーザー、パワーショベルで木をなぎ倒し、抜根して、原野の状態にする。
4.原野を大型トラクターで耕作して、小木や草を取り払う。
5.更にトラクターで耕作し、土を細かくする。
6.最後に、肥料や除草剤を撒いてからキャッサバを植える畝をトラクターで作る。
前回はこのうちの1.お供え編を書きましたが、今日は2.拠点建設について書きます。

拠点は先ず、ワーカーの宿舎建設から始めます。
この土地は、クラチェ市内から35Kmも離れた原野にありますので、ワーカーはここの宿舎に泊まり込みます。既婚者も多いですが単身赴任または、家族も連れて来て暮らすわけです。
現在の宿舎は建設中ですが、以下の写真の状態です。

木造で屋根はトタン、ご覧のように風は十分通るので中々涼しいです。実はこの家は我々の手作りで、木材とトタンを買ってきてマネージャーの指揮下ワーカーが作り上げます。下は横から見たところです。

ここには、現在アシスタント・マネージャー以下9人が住み込んでいます。水は飲料は20リットル・ボトルですが、シャワー用は井戸水をくみ上げて、上の写真の右側の5000リットル・タンクにためて使います。食事は専属のクッキングおばさんが3食作ります。食事代は1人で1日3食食べて1.3ドル、130円ほどです。食事は基本的に毎食ご飯とおかず2品。米、肉、魚、野菜はクッキングおばさんが週に1-2回クラチェ市内の市場に買出しに行きます。
下はクッキングおばさんの写真です。

トイレも自分たちで作ります。赤レンガを重ね、便器をセメントで取り付けます。

実はトイレには厳しい法令があって、尾籠な話ですが、垂れ流しは厳禁、以下のような土管で容器を作り、汲み取り式にします。

ここは、人里離れているので電気は来ていません。そこで毎日日暮の6:30PMから2-3時間だけディーゼル発電機で発電します。井戸水もこのタイミングでポンプを回して汲み上げます。
以下は発電機です。少し奮発してクボタの新品を1350ドル出して買いました。

蛇足ですが、3年前から運営している天然ゴム農園から犬3匹と鶏、アヒルが分家して引っ越してきました。魚の池も作ったので、タイに似た味の淡水魚ティラピアも大量に養殖する予定です。
以下は鳥小屋です。

更に蛇足ですが、この土地は原野の真ん中なので、野生の鳥やイノシシ、鹿などが豊富です。ブルドーザーで開墾している人たちは、夕方になると鳥打に出かけます。アシスタント・マネージャー君が野生の鳥をもらってきました。

次回のブルドーザー、トラクター開拓編に続きます。。。

キャッサバ・プランテーション開拓 最初の一歩:お供え儀式編

2014年3月10日

キャッサバ・プランテーション開拓の模様をレポートします。
キャッサバ・プランテーションは250ヘクタールですが、現時点で150ヘクタールが原野、100ヘクタールが原生林の状態です。これを4月のキャッサバの苗植え付けまでにきれいに畝のある畑にしなければなりません。
正にアメリカの西部開拓さながらに原野、原生林を切り開くのですが、やり方は以下の様になります。
1.土地の神様にお供えをして開拓の無事を祈る。
2.開拓拠点、即ち従業員宿舎、倉庫、トラクター・トラック置き場を作る。
3.原生林をブルドーザー、パワーショベルで木をなぎ倒し、抜根して、原野の状態にする。
4.原野を大型トラクターで耕作して、小木や草を取り払う。
5.更にトラクターで耕作し、土を細かくする。
6.最後に、肥料や除草剤を撒いてからキャッサバを植える畝をトラクターで作る。
今時点では、上の1.が済み、2.~4.までを並行して行っています。

1.お供えは、カンボジアでは大変に重要です。なぜかというとこれをしないで土地を荒らす(開拓する)と、土地の神様が怒って災いすると考えて、ワーカーが働かないからです。
昨年2月に我々のケップの胡椒農園を開拓した際に、夜中に突然無人のトラクターが動き出し、ワーカーが逃げてしまった事件がありました。その時は慌ててお供えをして開拓を再開しました。

さて、今回のお供えは112.5ドルの上等な豚の丸焼きで、以下の写真の店で買ってきました。丸焼き用の窯には蓋がしてあります。このような豚の丸焼き専門店はクラチェ市内に少なくとも2件あります。

そして、以下がお供え儀式の模様です。最初に私がお線香をあげてからマネージャー達が続きます。 

そのあとは、当然宴会になりお供えの上等の豚をみんなでおいしく頂きます。

因みに豚をさばいている様子です。

更に蛇足ですが、農園には当然電気も来ていないので、冷蔵庫代わりに飲み物は氷で冷やします。以下は氷を買っているところですが、おじさんが袋に入れようとしている大きな1塊で1.25ドルです。

長くなりますので、2.開発拠点については次の記事にします。

2014年3月6日

昨日、胡椒用地取得のためにカンポットを訪れました。
この土地は、これまでにカンポット・ペッパー協会の胡椒の専門家とともに3回調査に来て、土壌が胡椒に適していることを確認しており、是非とも欲しい土地です。土地の質は我々のケップの胡椒畑に近く、それというのもケップからカンポットにかけて同じ質の土壌が北に広がっているためです。

何故3回も調査にきたかというと、この土地は50ヘクタールありますが、全てが胡椒に適しているわけではないので、50ヘクタールを踏査して胡椒に適した部分を特定し、GPSで緯度経度を調べて地図にマッピングする作業が必要だったためです。
以下は現地の写真です。原生林を一度伐採して木を炭焼き用に採ったあと数年放置され、低い木や草が生えています。これらの木や草はブルドーザーで一気にクリーンアップすることができます。

昨日は、先ず土地の販売仲介者が地元のコミューン長(Commune Chief)2名を連れて来て一緒にミィーティングになりました。コミューンとは村の上の自治体の単位です。
コミューン長が土地の権利書類を預かっているという話だったので、我々としてはそれらの書類を確かめた上でコピーを取って、州の登記所で裏取りする手はずでした。
というのは、この土地は州に登記してある所謂「Hard Title」の土地なので、州の登記所で所有情報が確認できる(はず)だからです。

ところが、ミーティングの開口一番仲介者からパンチが飛んできました。
我々: 「権利書類を見せてください。、コピーが欲しい。」
仲介者&コミューン長:「権利書類はここにない。コピーも出せない。この土地を本当に欲しいことを示すために、先ず1万ドルをデポジットとして渡してほしい。もし買わない場合でも1万ドルは返さない。」
我々: 「?!?!?! あなた方が本当のオーナーの代理人かどうかもハッキリしないのになぜ1万ドルも出すのか?」
「土地の情報が欲しければ1万ドル出せ」、「なぜ情報を取るために1万ドルも必要なのか?」と押し問答が30分続きました。契約処理のために頼んだ土地買収に詳しい弁護士も、「こんなことはあり得ない」と困惑でした。さすがはカンボジア!、常識ではあり得ないことが度々発生します。

私が「我々がこの土地を欲しいのは本気だ。1万ドルではないが土地取得のために、この通り1200ドルも出して弁護士を雇っているではないか。」と言うと、コミューン長の一人がぼそぼそと所有者名をつぶやくように言い始めました。
結局村の名前と18名のオーナーの名前がわかりました。この土地には約30名の小規模オーナーがいるそうなので一部が分かったことになります。この時はこれ以上は無理で一旦撤収しました。

以下はミーティング時の写真で、右、真ん中のご年配の2人がコミューン長で、左が仲介者(コミューン長の孫)です。

そのあと、州の登記所に行こうと、電話で連絡を取ったのですが、「担当官が午後はいない」ということで断念しました。本来は登記書類は誰にでも公開しなければならないはずなので、担当官は当然午後もいるはずなのですが、一見さんには見せたくないようです。
さすがは、カンボジア!そこで、何とか担当官の知り合いを通じて土曜日に登記所のアポを取りました。ということで、この日は折角1日がかりでカンポットまで出向いたのに、パッとしない結果でしたが、ここは通らなければならない1ステップです。カンボジアでの土地取得は困難な仕事です。。

<追記>

後日、登記所の所長にその知り合いを通じて協力を頼んだところ、担当官や登記システムを総動員して協力してくれました。 結果として、この土地の所有権はやはりHard Titleで、問題なく買収できることが判明しました。

やはり、カンボジアは人脈の世界で、トップを押さえるとその命令一下組織を挙げて協力してくれます。
え!我々だけのためにこんなにしてもらっていいの?という感じです。但し、知り合いがいなければ、全く何もできません。

さて次は、いよいよ頑固な仲介者との交渉再開です。。。

カンボジアでの農地の取得について

2014年3月4日

カンボジアで農業を始めるにあたっては先ず農地の取得が必要ですが、これには特有のノウハウが必要です。私が最初に農場を始めた時には、このノウハウが分からず、大変に苦労しました。
先ず、重要なのは、カンボジアでは外国人は土地を所有することができないことです。日本人でこのことを知らずに、土地を取得しようとして詐欺に引っ掛かるる人も多いそうです。
土地を所有できないので、農地を確保する方法としては以下の3通りがあります。
1.信頼できるカンボジア人の名義を借りて土地を買う。
2.カンボジア人株主比率51%以上の会社を設立して、その会社名義で土地を買う。
3.借地する。

1.については本当に信頼できるカンボジア人が見つかればよいのですが、名義人に悪意があって勝手に土地を処分されても、カンボジアの法律上は外国人には全く何の権利もないので、泣き寝入りになります。

2.については、株主のカンボジア人は信頼できる人に頼み、更に複数にして各人の持ち株比率をできるだけ下げ、出来ればお互いに知らない人同志にして、万が一にもお互いが共同で51%以上の権利を行使できないようにする工夫が必要です。また、名義上株主となるカンボジア人とは、株主としての権利と義務を放棄する旨の契約書を結びます。

会社を設立するとなると、多くの費用や工数がかかります。会社設立の一時費用だけでなく、毎月経理処理をして税務署に報告して税金を払う必要があります。カンボジアの法律では、利益の20%または売り上げの1%を税金として支払う必要がありますので、例え赤字であっても売り上げがあれば税金を納めなければなりません。カンボジアの税務署は外国企業(外国人が代表者の企業)を集中的に狙って税金を取りに来ますので逃れるのはほぼ不可能です。また、毎年決算費用や営業ライセンスの更新費用というのもかかります。従って、会社を作るのはある程度の規模の農園でなければ割りにあいません。

3.の借地は外国人であっても法律上当然全く問題なくできますので、個人レベルでは最も現実的かもしれません。借地と言っても、30年間とか70年間という超長期も場合によって可能で、事実上買収と同じことになります。

これらの3つの土地確保に共通する最も大切な点は、買ったり借りたりしようとする土地の本当のオーナーを特定することです。
日本の常識では「オーナーの特定なんて何が問題なの?」となりますが、カンボジアでは事情が違います。カンボジアでは各州の役所に土地所有登記が可能ですが、大半のオーナーは州の役所に登記をしていません。
州に登記するためには一般に多額の登記費用が必要で、しかも登記すると固定資産税にあたる税金を払う必要がでてきます。そこで、大半のオーナーは州の下の行政単位の郡(District)、コミューン(Commune)、または村(Village)の長に届け出てその承認文書をもらうことで、登記の代わりにします。州レベルに登記した所有権を「Hard Title」、それより下の地方首長の承認のみの場合を「Soft Title」と呼びます。

問題はこの「Soft Title」の場合、誰がオーナーなのか中々分からないことです。
分からないのをいいことに、オーナーになりすまし勝手に(無効な)売買契約を結び、お金をだまし取るケースが多発しています。
また、「Soft Title」の場合、同じ土地をその上の州レベルで他の人が登記してしまった場合には、法律的には「Hard Title」が優先されるので、土地を取り上げられてしまうことになります。実際、この「Soft Title」と「Hard Title」の矛盾によって、無数の土地紛争が起きています。
従って、最初はなるべく「Hard Title」の土地のみを対象にするのが無難です。しかし、多くの土地が「Soft Title」なので、時としてこの対応も必要になってきます。この場合は、現地に行って地方首長に会って土地の所有状況を確認することが不可欠です。
以下の写真は、「Soft Title」の登録書類です。この場合は郡長と都市化計画省の担当者のサインが入っており、他の人が事実上州に登記できないので、「Hard Title」並の効力があります。

カンボジア農業プランテーションの紹介

2014年2月28日

私は、2011年にカンボジアでCedar Farmという会社を設立して、農業プランテーションを運営しています。

当社のプランテーションは以下の3種類になります。
-天然ゴム  プランテーション @クラチェ州スノール郡
-胡椒    プランテーション @ケップ特別市、カンポット州
-キャッサバ プランテーション @クラチェ州クラチェ郡

天然ゴムプランテーションは、今から丁度3年前に70ヘクタールの若木の植わっている土地を買って始めました。現在は木も育って、60%の木でタッピングという樹液採集ができるようになり、天然ゴム価格の暴落(3年前の半値)にも収穫量の増加で対応して運営しています。
以下は、タッピングの様子で、下の皿に入っている白いものがゴムの樹液です。

胡椒プランテーションは、カンボジア南西部のケップ特別市にある13ヘクタールの農地で、昨年4ヘクタール若木を植えて開始しました。来年2~5月に最初の収穫ができ、その後約25年間に渡って毎年同時期に収穫できます。
今年は同じ農地の植え付けを増やすとともに、カンポット州チュック郡で30ヘクタールの農地を入手して胡椒を植え付けます。カンボジアでは大半の胡椒農家は0.5ヘクタール以下なので、我々はかなり大規模な部類に入ります。
また、当社は「カンポット・ペッパー協会」に所属しており、世界的ブランドの「Kampot Pepper」を名乗ることができます。
以下は昨年12月に撮った胡椒若木です。

キャッサバプランテーションは、クラチェ州の州都クラチェから35Kmの土地に今年は250ヘクタール キャッサバを植えます。
キャッサバ(Cassava)は、アフリカ、東南アジアで広く栽培されるイモの一種。イモはほぼ純粋なでん粉で、タピオカ等の食用、家畜飼料、バイオエタノールの原料になります。カンボジアのキャッサバは主にタイ、ベトナム経由で中国に運ばれて消費されますが、中国の食糧事情がひっ迫しているので高値で取引されています。
カンボジアの平均収穫量は、1ヘクタールあたり10~20トンですが、タイの専業農園では30~40トンに達します。そこで当社はタイから多収量品種と栽培技術を導入し、昨年約1ヘクタールの試験栽培を行いました。結果は従来10トン程度収穫の土地で30トン以上の目途ができました。
下の写真は試験栽培したキャッサバの大きい方のイモです。本来11か月育てますが、7か月育ったところで1本で7Kgのイモが出来ました。1ヘクタールに1万本植えるので、全部がこの大きさだと70トン採れる皮算用ですが。。。

今後は、これらの農園の開拓の進み方が分かるようにレポートしていきます。