2015年5月8日
カンボジアも雨季が始まり、天然ゴム農園でも約2か月の休止の後、今年もタッピング(樹液採集)が始まりました。タッピングで得られた樹液は、毎日工場へ出荷しその日の価格で売られます。従って、毎日の天然ゴム価格が大きな関心事になってきます。(下はタッピングの様子と天然ゴムの樹液)
昨年の記事では、天然ゴム価格が長期の暴落で最盛期の1/4になっていたが、約3年8か月ぶりに底を打って反発したことをお伝えしました。
その後、天然ゴム価格は一進一退を繰り返していました。主産地のタイ、マレーシア、インドネシアでは、これ以上の価格低下を防ぐために、一種の価格カルテルを結んだり、タイ政府が農民から市場価格を上回る値段で買い上げたりして、何とか価格を押し上げようとする動きが続きました。
また、生産価格割れした価格での出荷を嫌がって、ゴム樹を切り倒してパームヤシに転換する動きもあり、生産力の伸びが鈍ってきました。
しかしながら、供給が需要を若干上回る状態が続き、生産側の圧力で価格が上がったかと思うと、また下がるというような状況でした。
ところが、その価格が4月の初めから急騰を始め、以来20%以上の上昇を記録しました。
上のチャートは、カンボジアの天然ゴム価格に直接の影響を与える、シンガポール市場の値動きです。
この急騰のきっかけは、以下の2つの出来事です。
第一は、、世界の10%~20%の生産量を持つ大手ゴム生産会社の数社が、「シンガポール市場はゴム生産の実際のコストを反映していない」として、シンガポール市場でのゴムの受け渡しを拒否する動きに出たことです。
このため、この市場での供給不安がでたことから価格が跳ね上がりました。
しかし、これは従来からの生産者側の価格アップのための動きの一つに過ぎず、これだけでは従来からの供給過剰基調を覆せないため、短期的な反発に終わる可能性が高いとみられていました。
ところが、その大手ゴム生産会社の動きに呼応して、生産側に思わぬ援軍が現れました。
天然ゴムの上海市場に大量の投機買いとみられる資金が入ってきたのです。
実は、天然ゴムの上海市場はシンガポール市場の100倍以上の取引量のある影響力の大きな市場です。
上海市場は、2011年の高値4万元から昨年9月の1万元まで、1/4の下げを演じて売られ過ぎの状態にあり、自律反発の起こる環境になっていました。
そこに、大量の投機買いが入り、枯草に火が付いたような状態で一気に価格急騰が起こったのです。
この投機資金は、実はこの1年で2倍の上昇となった上海株式市場で資金を拡大した投資家によるものと言われています。
上海の株式市場から溢れ出した資金が、今度は天然ゴム市場に流れ込んで来たと言うわけです。
従って、上海株式市場の好調が続く限り、天然ゴム市場も値上がりが続く公算が高いと言えます。
上海株式市場は、目先は上がり過ぎによる調整が近いとも言われていますが、一方中国政府による株価下支えも強力に行われており、予断を許さない状況です。
上のチャート赤線が上海株式市場。
このように、我々カンボジアの天然ゴム農園の収支を大きく左右する、日々の天然ゴム価格の動きが、実は上海株式市場に大きく依存しており、目の離せない状況が続いています。