胡椒の苗の新規植え付けが終わりました!

 前回の記事では、弊社の Kep 特別市の胡椒農園で胡椒が実を付け始めたことをお伝えしました。
 今年は、新たにこの Kep の胡椒農園で2ha、カンポット州の新農園で2haの胡椒の苗を植え付けました。
 胡椒は植え付け後18-20か月で最初の収穫を迎え、その後25年程度連続して毎年収穫ができます。

 胡椒は挿し木で殖えるので、植えて1年経った胡椒の枝を切って苗にします。
通常は、離れた別の農園から苗を持ってくるので、運ぶ間に水分が失われてしまいます。そこで、運んで来たらすぐに水に浸して1晩置き、水分を補ってから植え付けるのです。

 この運んでいる間に水分が失われることの為に、植え付け後の苗の生存率が大きく左右されます。弊社は Kep の近隣の農園から苗を提供してもらっていますが、やはり Kep の農園は近いだけに植え付け後の生存率が高く、カンポットの新農園は距離があるので生存率が落ちてきます。

 苗は、下の写真のように、添え木にくっつくように2本の苗を横にして植えます。1本の苗に2本の枝があります。

 勿論、植える場所には肥料を混ぜておきます。この後、丁度根の真上の部分に水と肥料の円形の受け皿を作って、水を与えます。(下の写真)

 結構見事な足技で、水をやりながら円形の受皿の形を整えて行きます。
 この後、植えた苗が生き延びるか否かは、根が出るかどうかにかかっています。無事に根が出て文字どうり根付けば新しい環境で生き延びることができます。下の写真は新しく根が出てきたところです。

 このように無事に根が出ない場合は、全体が黒くなって死んでしまいます。下の写真の苗のうちの1本は死んでしまいました。

 どんな場合でも、5%前後は根付かずに死ぬものが出てきます。死んだ苗は新しいものに植え替えます。そのために下の写真のようにリザーブを用意しておきます。このリザーブの苗は切り取って農園に運んだ後、リザーブ用の場所に一旦植えてあります。

 これらのリザーブ達は既に根を出しているので、植え替えても生存率は100%になります。
さて、9月初旬に植えた苗から新芽が伸びてきました。

 この芽を添え木に巻き付けると、新しい胡椒の木の幹になります。この芽が1年後には3mの天井まで到達します。その時が今から楽しみです。

カンポットペッパー農園記事(その3)

胡椒が本格的に実り始めました!

 弊社はカンボジアの南西部カンポット州とその隣のケップ特別市で、胡椒農園を運営しています。どちらの農園も、カンポット州の胡椒の有機栽培農家の集まりである、カンポットペッパー協会(Kampot pepper Promotion Association)のメンバーとして、完全有機栽培を行っています。

 完全有機栽培なので、化学肥料や農薬は全く使いません。肥料は牛糞、コウモリの糞、牛骨粉しか与えません。
下は牛糞を与えるために土と混ぜたもの。

 この牛糞は臭いませんが、コウモリの糞を混ぜるとかなり強烈に臭います。

 また、農薬も全く使いません。殺虫剤はクレン・スレングという強烈な毒のある木の実を潰して、3日間水に漬けた水を殺虫剤として散布します。
このクレン・スレングの毒は人も殺傷するほど強烈で、これを散布すると害虫も一切寄り付かなくなります。

 除草剤も使わないので、放って置くと胡椒の添え木の間に雑草が生い茂ってきます。特に今の時期は雨季真っ盛りで、雑草も急速に成長します。雑草が茂ると、折角肥料で培った土の養分が吸い取られるだけでなく、土の保水力が必要以上に高くなります。
このところ連日本格的なスコールが降り、土に大量の水が供給されているので、雑草の保水力の為に水がはけずに溜まって、胡椒の根に悪影響が出てしまいます。

 そこで、農園のスタッフが雑草取りを行います。

 ご覧の様に板に腰かけて、丁寧に手作業で取っていきます。胡椒の茎や根を傷めないように器具や機械は使いません。この為、雑草取りに多大な工数が掛かります。この時期は雑草の伸びが早いので、通常のスタッフだけでは足りず、テンポラリーワーカーを雇う必要があります。

 この様に有機栽培は多大の人手がかかりますが、カンボジアでは人件費が極端に安いので、労働集約型の有機栽培に向いていると言えます。

 さて、肝心の胡椒の木ですが、下の写真のようにココナッツの葉で葺いた屋根まで到達しています。

 また、上から下まで鈴なりの実を付け始めました。

 これらの実は、11月、12月に一部を収穫して生で出荷します。カンボジアでは生の胡椒は野菜のように使われ、肉や魚介類と一緒に炒めた料理は、カンボジアの名物料理の1つです。

 残りの胡椒の実は、2月までそのままにして置いて実の中に固い核ができるのを待ちます。この固い核ができた実を収穫して3日ほど天日で乾燥させると香りの高い黒コショウができます。
 今から収穫が待ち遠しいです。

 

カンポットペッパー農園記事(その2)

胡椒は伸び盛り:胡椒プランテーションの様子

 一昨日胡椒プランテーションを訪れました。心配していた水不足も、本格的な雨が数回降ったために当面の心配がなくなりました。前日の雨で下の写真の様に畝の間に水が溜まっています。

 雨水のおかげで貯水池を使わずに済んでいるので、下の写真の貯水池の水位も1.6mほどを保っています。

 昨年4月にはまともな雨が1回しか降らず、その後も雨が少なかったために乾季に水不足に陥りました。
今年4月は本格的なスコールが3回ありましたので、今年は例年通りの雨が期待できて次の乾季は大丈夫そうです。

 恵みの雨のおかげで胡椒は伸び盛りです。背丈は2mを超えてきています。
下の写真の白矢印の様に、添え木に足を延ばしてしっかりと絡みついていきます。

 また、写真でわかりますが、胡椒の蔓を添え木に赤褐色の紐で結び付けています。蔓が伸びるたびに紐で結ぶので、ワーカーは毎日この作業に追われています。
因みに、この赤褐色の紐は、下の写真のkhleng Porという木の皮から取ります。

 下の写真の様に花(白矢印)もだいぶ咲いていますが、この花をそのままにすると全体の成長が遅れるので、全て摘んでしまいます。

 中には、下の写真の様にすでに実をつけているものもあります。実は昨年9月に植えた時に既にあった枝にでき、植えた後で伸びた枝にはできません。この実はもちろん普通の胡椒ですが、収穫して売るほどの量はできませんので、一部がワーカーのおかず用になります。
日本では実を乾燥させて削って黒い粉にしたものが一般的ですが、カンボジアでは青い生のままの実をエビやイカと炒めて食べる料理が人気です。

 この後、5月前半には肥料を与えます。弊社の農園はKampot Pepperブランドを名乗るために、完全な有機栽培ですので、肥料も牛糞とコウモリの糞、プラス隠し味の牛骨粉を与えます。
下の写真は、準備してある牛糞です。

本格的な収穫は、来年の3月~5月になります。

カンポットペッパー農園記事(その1)

胡椒プランテーション Today

 今回は、胡椒プランテーションについてレポートします。

 弊社の胡椒プランテーションは、ケップ特別市(Kep Province)にあり敷地は13ヘクタールです。すぐ隣に日本人2名の合計14ヘクタールの胡椒農園があり、更に道を隔てて日本人の30ヘクタールの農地があります。

 ここは、日本人村になっていまして、カンポットペッパー協会の中でも面積では最大勢力です。

 昨年9月、13ヘクタールの敷地のうち4ヘクタールに胡椒を植えました。植えた苗は順調に育っていて、来年の丁度今頃には最初の収穫ができる見込みです。

 胡椒プランテーションを外から見た写真です。ヤシの葉に覆われている部分が200m続きます。

中から見たところです。

 ご覧のように、胡椒を植えるには畝を作り、その上に3mほどの添え木を建てます。胡椒はつる性の植物なので、添え木に巻きついて成長します。 現在は私の背丈を超えるところの高さまで巻き付いています。
また、1年未満の若い胡椒は直射日光を嫌うため、ヤシの葉の覆いをします。

 我々の農園は、カンポット・ペッパー協会に所属し、出荷する胡椒は「Kampot Pepper」ブランドを名乗りますが、そのためにはこの協会の胡椒育成ガイドラインを守る必要があります。

 「Kampot Pepper」は完全な有機栽培なので、肥料も決まった有機肥料を使いますし、殺虫剤もKrab Slengという毒の入った木の実を砕いて作ります。因みにこのKrab Slengは人でも簡単に殺傷する力があります。

 「Kampot Pepper」は完全有機栽培で手をかけて作る世界的なブランドなので、売値はカンボジアで作る通常の胡椒の2倍以上です。通常胡椒が$4-5/Kg程度に対し、「Kampot Pepper」の黒胡椒は$11/Kg、赤胡椒、白胡椒は$20/Kgになります。

<目下の課題は水不足>
 胡椒は大量に水を食う植物です。少なくとも3-4日に一回は1本の添え木に対しバケツ1杯分の水をやる必要があります。
雨季は毎日のように雨が降るので天水でOKですが、12月から4月の乾季には雨がほとんどないので、人が水を与える必要があります。

 そのため大量の水を蓄えておく必要があり、通常は以下のような貯水池を掘ります。 この我々の貯水池は、55mx35mx深さ7mのオリンピック・プール並の大きさがあります。

 パワーショベルでこのような池を掘ると、地下から水が湧きだしてきますし、雨季には毎日のスコールを溜め込むことができます。

 通常は、このような貯水池で十分なのですが、今年の乾季は水不足の問題が起こっています。近隣のケップ特別市の胡椒農園では、多くの農園が水不足に苦しんでいます。例えば、カンポット・ペッパー協会の副会長の農園では、水不足のために枯れたり胡椒の収穫ができなくなっています。

 弊社の隣の日本人の方の農園も貯水池に水が無くなり、急遽道を隔てた別の農園の貯水池から水を運んでいます。

 原因は、昨年、一昨年と雨季の雨量が平年より相当少なかったためです。
ケップでは、平年4月から雨が降り出して6月には毎日スコールが降りますが、昨年は4月に入ってもほとんど降らず、毎日スコールが降ったのは8月に入ってからです。

 幸いなことに、弊社の貯水池はまだ水深1.5mほどあり、今年の乾季は何とか乗り切れる見込みです。
但し、今年は胡椒の植え付けを増やすので、来年の乾季には今年以上の水が必要になり、今の貯水池だけでは不足の恐れがあります。

 もし来年の乾季に備えて貯水池を増やすなら、今年の雨季にスコールを溜めるために、本格的な雨季に入る前に作っておく必要があります。

 しかしながら、新しく貯水池を掘るにはかなりの出費になりますので、なるべくなら避けたいところです。

 そこで現時点では、井戸で何とかならないかを検討しています。井戸は貯水池の真ん中を30mほど掘ったものがあるので、そこから大きな汲み上げ式ポンプで大量に水を汲み上げる訳です。

 下の写真はその汲み上げ式ポンプを井戸につないだところです。


 これから、井戸からの汲み上げテストをして十分な水が確保できるのかどうかを確認していきます。

 ところで、弊社の農園のある「胡椒日本人村」に属している、日本胡椒協会の林さんの胡椒専門店が4月12日にテレビで取り上げられ、ユニークな胡椒の塩漬け「食べる胡椒<生こしょう>」が紹介されました。

 最後におまけ、うちの農園のマスコット嬢(推定3歳)。お父さんお母さんと農園で暮らしています。