カンボジア農産品のウンチク(その2)

カンボジアの胡椒(カンポット・ペッパー)の特徴

 前回は、カンボジア内戦前の1960年代までは、世界的ブランドであったカンボジアの胡椒が内戦終了後21世紀になって復活してきた歴史についてお話ししました。 現在もパリの一流レストランやスパイス専門店で高級品として扱われていますが、他にない特徴がいくつかあります。

1.カンボジアにしかない赤胡椒

 フランス人が植民地であったカンボジアの胡椒で、赤い実が独特の「旨味」を持つことを発見し、黒胡椒から赤い実だけを集めて珍重しました。 通常日本で「赤胡椒」や「ピンクペッパー」と言われているものは、西洋ナナカマドの仲間で、胡椒とは味と香りが異なります。

 因みに、乾燥胡椒は赤、白、黒の3種類ありますが、全て同じ木の同じ房になります。同じ房からこれら3種類を1粒1粒手作業でより分けて作ります。

2.クメール種

 カンボジアのカンポット州で栽培される胡椒は、「クメール種」という種類で、日本で通常使われるインド、スリランカ産の「インド種」、マレーシア、ベトナムの「マレー種」に比べて、病気に弱く、育ちが遅く、収量も少ないという特徴があります。

 悪いことだらけですが、唯一味と香りに優れている、という良さを持っています。辛味成分は他より平均20%多いといわれています。

3.100年前からの栽培方法を守る完全有機栽培

 現地の農協にあたる「カンポット・ペッパー協会」は100年前からの栽培法を厳格に踏襲するガイドラインを決め、それに従う農園だけに「カンポット・ペッパー」ブランドを許しています。 「カンポット・ペッパー」はWTOのGI(地域特産品)ブランドで、フランスのボルドー地方の特産品「ボルドーワイン」と同様、この地域限定ブランドです。

 100年前には化学肥料もなかったので、完全有機栽培であり、肥料は牛糞、こうもり糞、牛骨粉、カニ殻などです。除草剤も使えないので、全て人手の作業です。カンボジア胡椒が味と香りにこだわり、困難な完全有機栽培にこだわっていることが見て取れます。

※20193月 シーダーアグリビジネスは、カンボジアでは初めて日本の有機JAS認証を取得しました。

カンボジア農産品のウンチク(その1)

■ 実は1960年代は世界的ブランドであった、カンボジアの胡椒

 日本とカンボジアの繋がりは古く戦国時代に遡る。16世紀には、プノンペンには日本人町があった。勿論、カンボジアだけではなく、安南(ベトナム)の順化(フエ)、シャム(タイ)のアユタア、マラッカ、ジャカルタ、モルッカ緒等の東南アジアには日本人が住んでいたのである。

  1887年フランス領インドシナが成立し、フランスの植民地であったカンボジア及びベトナムでは20世紀に入り、良質の胡椒が栽培され、フランス始め欧州各国に輸出されていた。特にカンボジアのカンポット州産の胡椒は、「カンポット・ペッパー」と呼ばれ、最高級品としてパリの高級レストランで使われていた。

  1960年代のカンボジアの胡椒の総生産量は、約1万5千トンであった。(因みに日本全体の胡椒輸入量は年間8千トン)

 ところがその後、1975年(昭和50年)のポルポトによるカンボジア統治が始まり、虐殺及び極端な共産化政策により、カンポット州だけではなく、カンボジア全土の胡椒生産は壊滅してしまった。  

 平成3年(1991年)のパリ和平協定により、やっと内戦が収まり、農業に従事する国民がカンボジアに戻ってき出した。1990年代後半には、生き残っていた昔の職人の指導の下、胡椒の生産が再開されたが、その時には既に、「カンボジア産高級胡椒」というブランドは、過去のものとなっていたのである。

 しかしながら、その後の努力により、2008年(平成20年)にはWTOのGI(地理的表示)を取得して世界的な地域ブランドとして認められ、我々のような外資も参入し生産が拡大しつつある。(GIとは世界貿易機関(WTO)協定に基づく一種の知的財産。製法や品質基準などを満たした特定産地の農水産物に、産地名を付けてブランド化し、他の農産物との差別化を図る。ワインの「ボルドー」がその一例。)

  TIME誌(2012年1月16日)は復活を祝い「普通の胡椒はテーブルワイン、カンポット・ペッパーは上質のボルドーワイン」と述べている。

その後、年々生産量が増加し、昨年度には100トン以上となり、パリの一流レストランやスパイス専門店にも復活してきているが、まだまだ昔の栄光を取り戻す道の途中である。

カンポットペッパー農園記事(その10)

胡椒農園の収穫とその後

 弊社のKep州の胡椒農園では、5月末に一旦すべての収穫を終えました。この時には、熟した実だけではなく、熟していない実や花芽も全て取り除いてしまいます。

 栄養分が実に行かず、全て枝葉の成長に使われるようにして、木全体を大きくするためです。

 下は、その時の収穫風景です。梯子をかけて木の上の部分の実も収穫します。

 上の写真の手前の籠に収穫した胡椒の実の房を入れています。

 5月末に収穫を終えた後、雨季が本格化する前に、土入れを行います。これは畝の土が雨で流れだして少なくなったのを補う作業です。雨季が本格化すると作業がしにくくなります。

 何しろ、添え木7500本分の土入れなので、膨大な量の土が必要です。今年は下の写真のように農園内の土を掘って使用しました。

 土入れの後は、肥料を与えます。雨季が本格化して木が十分な水が得られるタイミングで、同時に栄養も与えて一気に木の生長を加速させる目的です。

 肥料は牛糞堆肥がメインになります。理由は伝統的にカンボジアの農村では、至る所で牛の放牧を行っており、比較的簡単に大量の糞が集められるためです。

 その他ミネラルの補給に牛骨粉も与えます。それから、何故かはわかりませんが、伝統的にコウモリの糞も一緒に与えます。これがカンポットペッパーに独特の風味を与える隠し味などと言われてはいますが。

 このKep州や隣のKampot州には、平坦なカンボジアには珍しく多くの山があります。この山は石灰岩でできているので、雨で溶けて多くの洞窟があり、その洞窟にコウモリが大集団で生息しています。

 そこで、山の近くの村では洞窟に入ってコウモリの糞を取って生活している集落が多くあります。
 我々もその様な家に直接コウモリ糞を買いに行くわけです。

 先日、コウモリの糞を買出しに、ある村に行って聞いた話ですが、Kampot州にあるKセメント(Kampot セメント)という会社が石灰岩の山を買い取って原料に使い、そのためにコウモリ糞取りの人々が山から追い出されているそうです。

 Kセメントは次々に山を買ってしまうので、このままではコウモリ糞が手に入らなくなり、将来カンポットペッパーの独特の風味に危機が訪れるかもしれません。

 さて、肥料を与えて雨季が本格化すると、木が成長して多くの新しい枝葉を茂らせてきます。
そして、5月末の収穫から2か月たった8月からは、木に多くの花芽が出てきました。一旦体全体の成長に栄養が使われて、一段落すると今度は花芽や実の生殖成長の順番になる訳です。

 下は、最近の胡椒の木、一杯の花芽を付けています。

 葉の付け根付近から小さな軸状のものが多数垂れてきているのが花芽です。この花芽の一部にはすでに小さな実が生ってきているものもあります。

 来月下旬には多くの青い実が出来てきます。これは青胡椒と言って、カンボジアでは生のまま野菜のようにして食べます。(下の写真は、カンボジア名物 「イカの青胡椒炒め」)

 来年の3月になると熟した実を収穫して、乾燥胡椒を作ります。木に一杯の花芽を見ながら、青胡椒や乾燥胡椒の収穫に思いをはせます。

カンポットペッパー農園記事(その9)

■ 胡椒の収穫が始まりました!

 弊社のKep州にある胡椒農園では、初の胡椒の本格的な収穫作業が始まりました。
一昨年9月に植えて18か月育て、待ちに待った収穫です。

 胡椒の木では実の房が収穫を待っています。実が十分に成熟しているのを確認して房ごと摘み取ります。初日は179kgの収穫量になりました。その後摘み取った房を集めて、実を一粒一粒選別します。

 胡椒は赤、黒、白、青の4種類があり、全て1本の木からできます。もっと言うと1房からこれらの4種類の胡椒ができるのです。

 熟した同じ房の中で赤い実が付き、これを選り分けて赤胡椒となります。上の写真の籠の入った赤い実がそれです。赤胡椒は、黒胡椒の一種で「完熟黒胡椒」とも呼ばれますが、黒胡椒に比べてマイルドな味わいです。

 また、形や色の悪い実も選り分けて白胡椒にします。白胡椒は実の表皮を除いて白い種の部分だけにしたものです。

 上の写真のように1-3日水に漬けて、表皮をふやかしてから取り除きます。表皮の強い香りが無くなって特有の辛味が味えます。
 赤胡椒、白胡椒になる実を房から取り去った残りの大部分の青い実は黒胡椒になります。胡椒の深い香りが楽しめます。
 さて、選別された実は、下の写真のような乾燥場で乾燥されます。

(黒胡椒の乾燥風景:青い実が乾燥すると黒くなります)

(赤胡椒の乾燥風景)

 これらは、1-2日乾燥させた後煮沸して消毒し、更に3日程度乾燥させます。乾燥が不十分だと保存中にカビが生えてしまいます。十分に乾燥させたものは、良い環境で保存すると何年でも持つと言われています。
 しかし、乾かし過ぎは禁物です。紫外線にあまり長期間当たると胡椒特有の風味が損なわれる言われているためです。 

 実は胡椒は通年は実を付けますが、この時期に収穫をするのは理由があります。胡椒を出荷するためには天日で乾燥させる必要がありますが、2月-4月の乾季のこの時期には滅多に雨が降らないので乾燥作業にもってこいな訳です。

 さて、収穫は胡椒の木の中で熟した房だけを摘み取る作業で、順番に6000本の添え木を何度も回り、2か月以上かけて行います。胡椒農園では、これから4月までこのような風景が続きます。

カンポットペッパー農園記事(その8)

ケップの胡椒農園の近況

 弊社の胡椒農園は、カンボジア南西部のケップ特別市(州)とカンポット州の2か所あります。
 先週末にケップの農園に行きましたので、その様子をレポートします。

 昨年植えた木は、3mの屋根を突き抜けて育ち、実を鈴なりにつけ始めています。


 この時期は、胡椒の実ができても中の種の部分がまだ固く出来上がっていないので、実は青胡椒として食べることができます。青胡椒とは生のフレッシュな胡椒のことで、房ごと摘み取って野菜としてイカなどの海鮮と一緒に炒めて食べます。(辛いので1粒ずつ食べます)

 1月になると、実の中の種が固く熟してきて、野菜としては食べられなくなりますが、乾燥して黒胡椒や完熟の赤胡椒として出荷できるようになります。

 胡椒の木は屋根を突き抜けるほど伸びましたが、ココナッツ葉の屋根は1年でほとんど壊れてしまい、日光を遮れなくなってしまいます。(下の写真)

 胡椒はもともとうす暗いジャングルの中で他の木に巻き付いて生活する植物なので、直射日光には弱い性質があります。特に3歳未満の若い木は直射日光を避けるための屋根が必要です。
そこで、今再び屋根を葺くためのココナッツ葉を準備しています。

 上の写真は準備中のココナッツの葉で、虫干し中です。ココナッツ葉は、1ヘクタールの畑に5000枚という大量の枚数が必要で、この農園では4ヘクタール分合計2万枚を準備しています。

 さて一方、今年9月に苗を植えたばかりの畑の方は、若木が成長速度のピークの時期を迎えています。

 胡椒の木が伸びると、木の皮で作った紐で添え木に縛り付けて行きます。下の写真は木の皮から作った紐です。

 農園のスタッフは、これから半年間ほどは、胡椒の木の伸びの速さに急き立てられながら、紐結びに終われます。
 丁度これから乾季に入るところですが、乾季には全く雨の降らない期間が数か月続きます。胡椒は3-5日に1回は、添え木1本についてバケツ1杯の水が必要です。

 そのために、下の写真のような貯水池を用意し、雨季に雨水を溜めます。

 水不足だった昨年と違い、今年は雨季に十分な水が貯えられました。この農園では、来るべき乾季も乗り切れそうです。

 

カンポットペッパー農園記事(その7)

赤胡椒、黒胡椒、白胡椒、青胡椒は同じ1本の木から

 弊社は、カンポット州とケップ特別市で胡椒農園を運営しています。今回はこの農園で出来る胡椒の種類についてお話します。

 実は我々の食卓に上る胡椒には、赤胡椒、黒胡椒、白胡椒、青胡椒の4種類があります。
これらは全て同じ1本の木からできるのですが、収穫時期や製法が異なるために色や味、風味に違いが出てきます。

 胡椒の実は、実った初めは青(グリーン)でだんだん黄色っぽくなり、熟すにつれて赤味がかってきます。
 通常は、赤味がかる前に収穫してそのまま乾燥させます。一番風味が強いからですが、これが黒胡椒です。(下の写真)

 完全に熟してから収穫して乾燥させたものが、赤胡椒です。黒胡椒よりも味がマイルドになります。‘完熟黒胡椒‘などとも呼ばれ、取れ高も少ないので珍重されます。

 同じ1本の房でも下の写真の様に、赤胡椒(赤い実)と黒胡椒(になる緑色の実)が取れます。

 白胡椒は、黒胡椒になる実の皮を取って白い種の部分だけを乾燥させたものです。(下の写真)黒い皮の風味を感じずに、胡椒の本来の辛味が味わえます。


 これら赤、白、黒の使い分けですが、赤は黒の完熟版でマイルドになっているだけなので、基本は黒と白の使い分けになります。

 辛味の欲しい時には白、風味の欲しい時には黒とも言われ、魚料理には白、肉料理には黒ともいわれますが、実際には、個人の好みに依るところが大きいようです。
 例えば、私の場合、強い風味が欲しいので魚にも黒をよく使います。

 さて、青胡椒は何か?というと、熟す前のグリーンの実を収穫してそのまま野菜のように使ったものです。
 食卓では、乾燥させずに生のまま使いますので、カンボジアのような胡椒産地ならではのものになります。
 下の写真は、収穫後3時間のものです。冷蔵しないと2日くらいですぐに黒くなって使えなくなります。

 この青胡椒を使ったカンボジアの代表的な料理が、イカの青胡椒炒めです。

 何とも言えない、新鮮な胡椒の爽やかな風味が海鮮に良く合います。青胡椒の辛味は黒胡椒などよりはるかに少ないので、野菜として使われるのですが、青胡椒を房ごとガブリとやると大変なことになります。
 日本人は一粒ずつ食べた方が無難です。

 青胡椒の収穫時期は、丁度今、11月~12月になります。それ以降になると実が熟して固くなってしまいます。
 そして、十分に熟して固くなったものを翌年2月~5月に赤、黒、白胡椒として収穫するわけで、農園としての本格的な収穫作業になります。今から、それが待ち遠しいです。

カンポットペッパー農園記事(その6)

ケップ農園の胡椒の食品成分分析結果

 弊社では、カンボジア南西部のケップ州とカンポット州で‘カンポット・ペッパー‘ブランドの胡椒を完全有機栽培しています。
この胡椒を地元だけでなく、日本でも販売を拡大するように努力していますが、そのために、ケップの農園で取れた胡椒の食品成分を日本で分析してみました。

 分析内容は、
1.日本の食品のパッケージに通常表示する7種の栄養素とエネルギー(カロリー)
  タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム、食塩相当量、水分、灰分、及びカロリー
2.残留農薬量
の2種類です。下は1.7種の栄養素とエネルギー分析結果です。


 各成分、エネルギーはやはり通常の食品分析表とほぼ同じです。カロリーは100g当たり364Kcalでスプーン1杯2gとすると約7Kcalとなり、普通に使う分にはカロリーは問題になりません。

 意外にも、タンパク質、脂質、炭水化物もバランスよく含まれています。
 また、この分析では出てきませんが、胡椒の辛味成分は主に植物のアルカロイドの1種、ピペリンという物質です。 このピペリンには抗菌、防腐、抗酸化作用があり、欧米人の肉食に胡椒が欠かせない理由となっています。
 また、一説によるとピペリンはターメリック(熱帯ウコン)の癌の炎症、感染症に対する効果を20倍も高めるとも言われています。

 さて、下は2.残留農薬量の分析結果です。

 106種類の農薬について検査をしましたが、全て検出されませんでした。
完全有機栽培なので当たり前のことなのですが、改めて有機栽培であることを実感させられます。

 完全有機栽培では農薬を使えないために様々の苦労があります。
 まず、除草剤が使えないので、除草作業を全て人手で行わなくてはならず、相当の労力がかかります。
(人手による除草風景)


 また、病気に対しても天然のもの以外の薬が使えないので、対応も限られてきます。
 その分、病気にかかりにくくするために、肥料の与え方等を工夫して抵抗力の高い胡椒の木を育てます。

 逆に言いますと、化学肥料と農薬を使う栽培法では、化学肥料をふんだんに与えて栄養過多の肥満児状態になるので、病気にもかかりやすくなり、農薬が不可欠になる訳です。

 さて、食品成分分析でも、無農薬が実証されましたので、これからも自信を持って完全有機栽培を進めて行きたいとおもいます。

 

カンポットペッパー農園記事(その5)

新胡椒農園の若木

 前回の記事で、今年増やした新胡椒農園で水不足を解消するために、井戸を掘ったことをご紹介しました。

 今年は、9月にこの農園の2ヘクタール、3000本の添え木に苗を新たに植えました。

 上の写真は、植えた直後のものです。1年経った若い木の枝を切って苗として植えるのですが、植えた直後数日は本体から切り離されて何とかサバイバル出来るかどうかの瀬戸際なので、ぐったりした様子になりました。

 全体の数%は、新しい土地に根を張れずにサバイバルできず、黒くなって死んでしまいます。

 死んでしまった苗は新しいものと取り替えますが、多くの苗は無事にサバイバルを果たして、今後の木の幹をなる新芽を出します。

 上の写真で、指で押さえているのがその新芽です。
植え付けから丁度2か月経った現在の新農園の様子です。

 全体に新芽が大きくなってきています。添え木の下部の緑の濃い部分は元の苗、黄緑の部分は新しく育ってきた茎と葉です。
 この時期には、コウモリの糞の肥料を与えます。胡椒の根の上の部分の黒い粉のようなものがコウモリの糞です。

 コウモリの糞はこの‘カンポット・ペッパー‘に独特の強い風味を与えます。このコウモリの糞は州内の山にある洞窟から採集されます。

 さて、添え木1本を見ると、下の写真のように新芽が大きく育って来ている様子が分かります。

 新芽が伸びると、ワーカーが木の皮からできた紐で添え木に巻き付けていきます。今後はその作業に追われます。来月には50cmほどの高さになります。

 

カンポットペッパー農園記事(その4)

新胡椒農園の井戸堀り

 今年新たに苗の植え付けをした新胡椒農園は、カンポット州チュムキリ-郡とチュウク郡の境にありますが、8月までは水不足が大きな課題となっていました。

 この農園の場所では、昨年は雨が多かったのですが、雨季本番のの7,8月に入ってもさっぱり本格的なスコールが降らず、折角掘った貯水池も下の写真のようにカラカラの状態になっていました。

 弊社のもう一つのKep特別市の農園の貯水池は、底から湧き水が出てくるので、雨が少なくても水量が維持できるのですが、この貯水池は湧き水も無いので、こんな状態になりました。
これでは、乾季になった時に胡椒にやる水が確保できません。

 スコールが来なくて貯水池に水が不足となると、対策は井戸を掘るしかありません。
カンボジアの多くの場所では、数十メートルの地下には水脈があるのが普通です。これは地下に流れる川のようになっているので、汲み上げても尽きることなく次々に湧き出てきます。

 早速、井戸業者を呼んで地下水脈の調査をし、井戸を掘る場所を特定します。この井戸業者は自分の調査に基づいて井戸を掘り、水がきちんと出た場合のみに費用を請求するシステムになっています。

 井戸業者が掘る場所を特定して、井戸を掘り始めました。下の写真のようにコンプレッサー車と連結して圧搾空気を送り込み、主にその圧力で地中を掘り進みます。

 これで井戸を掘り始めたのですが、10m位のところで断念しました。地下に固い岩盤があって、圧搾空気では歯が立たないのです。

 仕方なく、翌日別の場所を探して掘り始めました。順調に掘り進み地下に5mほどのパイプを立て続けに埋めて行きます。30mも掘ったところで、下の写真のように地下から水が吹きだし始めました。

 パイプを押し込んでいるところから、水が圧搾空気に押し出されて吹き上がっています。
(写真をクリックするとはっきり見えます。)

 何とか地下水に突き当たった様です。後は、これが単なる地中の水たまりではなく、地下水脈であることを確認する作業です。
やり方は、ここからポンプで24時間汲み上げ続けます。24時間汲み上げても水が出てくるようなら、本当の地下水脈と判断できます。

 幸いなことに、24時間耐久テストの結果、地下水脈に当たったことが分かり、井戸として使えることになりました。
 胡椒に与える水は井戸水を直接ではなく、この井戸水を一回池に溜めて含まれているヒ素を沈殿させてから使います。カンボジアの地下水はヒ素が含まれていることが多く、現地人は誰も井戸水を飲みません。

 上の写真は、井戸水を溜めた池です。幸いなことに、十分な水が確保できて次の乾季は何とか乗り切れそうです。

 

カンポットペッパー農園記事(その3)

胡椒が本格的に実り始めました!

 弊社はカンボジアの南西部カンポット州とその隣のケップ特別市で、胡椒農園を運営しています。どちらの農園も、カンポット州の胡椒の有機栽培農家の集まりである、カンポットペッパー協会(Kampot pepper Promotion Association)のメンバーとして、完全有機栽培を行っています。

 完全有機栽培なので、化学肥料や農薬は全く使いません。肥料は牛糞、コウモリの糞、牛骨粉しか与えません。
下は牛糞を与えるために土と混ぜたもの。

 この牛糞は臭いませんが、コウモリの糞を混ぜるとかなり強烈に臭います。

 また、農薬も全く使いません。殺虫剤はクレン・スレングという強烈な毒のある木の実を潰して、3日間水に漬けた水を殺虫剤として散布します。
このクレン・スレングの毒は人も殺傷するほど強烈で、これを散布すると害虫も一切寄り付かなくなります。

 除草剤も使わないので、放って置くと胡椒の添え木の間に雑草が生い茂ってきます。特に今の時期は雨季真っ盛りで、雑草も急速に成長します。雑草が茂ると、折角肥料で培った土の養分が吸い取られるだけでなく、土の保水力が必要以上に高くなります。
このところ連日本格的なスコールが降り、土に大量の水が供給されているので、雑草の保水力の為に水がはけずに溜まって、胡椒の根に悪影響が出てしまいます。

 そこで、農園のスタッフが雑草取りを行います。

 ご覧の様に板に腰かけて、丁寧に手作業で取っていきます。胡椒の茎や根を傷めないように器具や機械は使いません。この為、雑草取りに多大な工数が掛かります。この時期は雑草の伸びが早いので、通常のスタッフだけでは足りず、テンポラリーワーカーを雇う必要があります。

 この様に有機栽培は多大の人手がかかりますが、カンボジアでは人件費が極端に安いので、労働集約型の有機栽培に向いていると言えます。

 さて、肝心の胡椒の木ですが、下の写真のようにココナッツの葉で葺いた屋根まで到達しています。

 また、上から下まで鈴なりの実を付け始めました。

 これらの実は、11月、12月に一部を収穫して生で出荷します。カンボジアでは生の胡椒は野菜のように使われ、肉や魚介類と一緒に炒めた料理は、カンボジアの名物料理の1つです。

 残りの胡椒の実は、2月までそのままにして置いて実の中に固い核ができるのを待ちます。この固い核ができた実を収穫して3日ほど天日で乾燥させると香りの高い黒コショウができます。
 今から収穫が待ち遠しいです。