カンボジアも非常事態

新型コロナウイルスで日本も危機に直面していますが、カンボジアも非常事態です。

3月30日には、事実上の国境封鎖で外人の入国ができなくなりました。

カンボジアの生活必需品の多くが、隣国のタイ、ベトナムからきていますが、荷動きが悪くなり、生活用品が高騰しています。

海外へのフライトも大半キャンセルとなり、日本に帰れるほぼ唯一のANA便も数が激減してチケットが高騰したため、多くの邦人が帰国を断念しました。

海外フライトがほぼ無くなったため航空貨物も飛べず、弊社が予定していた航空便(郵便のEMS)での出荷がストップして、船便に切り替えました。

このため、日本のお客様へのお届けが大幅に遅れています。

更に4月10日零時から、16日24時まで,プノンペン都と他州間の移動,州内の市,郡等の行政区画内の移動を禁止(一部例外条件あり)する政府命令が出ました。

これは、例年この時期にカンボジア正月で多くの人の帰省による大移動が起こりますが、それによるコロナウイルスの拡散・感染爆発を防ぐ狙いです。

それにしても、カンボジア人たちは何があっても年2回のカンボジア正月とカンボジアお盆には、仕事を放り出して帰省していましたから、前代未聞の事態と言わざるを得ません。

カンボジア農産品のウンチク(その2)

カンボジアの胡椒(カンポット・ペッパー)の特徴

 前回は、カンボジア内戦前の1960年代までは、世界的ブランドであったカンボジアの胡椒が内戦終了後21世紀になって復活してきた歴史についてお話ししました。 現在もパリの一流レストランやスパイス専門店で高級品として扱われていますが、他にない特徴がいくつかあります。

1.カンボジアにしかない赤胡椒

 フランス人が植民地であったカンボジアの胡椒で、赤い実が独特の「旨味」を持つことを発見し、黒胡椒から赤い実だけを集めて珍重しました。 通常日本で「赤胡椒」や「ピンクペッパー」と言われているものは、西洋ナナカマドの仲間で、胡椒とは味と香りが異なります。

 因みに、乾燥胡椒は赤、白、黒の3種類ありますが、全て同じ木の同じ房になります。同じ房からこれら3種類を1粒1粒手作業でより分けて作ります。

2.クメール種

 カンボジアのカンポット州で栽培される胡椒は、「クメール種」という種類で、日本で通常使われるインド、スリランカ産の「インド種」、マレーシア、ベトナムの「マレー種」に比べて、病気に弱く、育ちが遅く、収量も少ないという特徴があります。

 悪いことだらけですが、唯一味と香りに優れている、という良さを持っています。辛味成分は他より平均20%多いといわれています。

3.100年前からの栽培方法を守る完全有機栽培

 現地の農協にあたる「カンポット・ペッパー協会」は100年前からの栽培法を厳格に踏襲するガイドラインを決め、それに従う農園だけに「カンポット・ペッパー」ブランドを許しています。 「カンポット・ペッパー」はWTOのGI(地域特産品)ブランドで、フランスのボルドー地方の特産品「ボルドーワイン」と同様、この地域限定ブランドです。

 100年前には化学肥料もなかったので、完全有機栽培であり、肥料は牛糞、こうもり糞、牛骨粉、カニ殻などです。除草剤も使えないので、全て人手の作業です。カンボジア胡椒が味と香りにこだわり、困難な完全有機栽培にこだわっていることが見て取れます。

※20193月 シーダーアグリビジネスは、カンボジアでは初めて日本の有機JAS認証を取得しました。

カンボジア農産品のウンチク(その1)

■ 実は1960年代は世界的ブランドであった、カンボジアの胡椒

 日本とカンボジアの繋がりは古く戦国時代に遡る。16世紀には、プノンペンには日本人町があった。勿論、カンボジアだけではなく、安南(ベトナム)の順化(フエ)、シャム(タイ)のアユタア、マラッカ、ジャカルタ、モルッカ緒等の東南アジアには日本人が住んでいたのである。

  1887年フランス領インドシナが成立し、フランスの植民地であったカンボジア及びベトナムでは20世紀に入り、良質の胡椒が栽培され、フランス始め欧州各国に輸出されていた。特にカンボジアのカンポット州産の胡椒は、「カンポット・ペッパー」と呼ばれ、最高級品としてパリの高級レストランで使われていた。

  1960年代のカンボジアの胡椒の総生産量は、約1万5千トンであった。(因みに日本全体の胡椒輸入量は年間8千トン)

 ところがその後、1975年(昭和50年)のポルポトによるカンボジア統治が始まり、虐殺及び極端な共産化政策により、カンポット州だけではなく、カンボジア全土の胡椒生産は壊滅してしまった。  

 平成3年(1991年)のパリ和平協定により、やっと内戦が収まり、農業に従事する国民がカンボジアに戻ってき出した。1990年代後半には、生き残っていた昔の職人の指導の下、胡椒の生産が再開されたが、その時には既に、「カンボジア産高級胡椒」というブランドは、過去のものとなっていたのである。

 しかしながら、その後の努力により、2008年(平成20年)にはWTOのGI(地理的表示)を取得して世界的な地域ブランドとして認められ、我々のような外資も参入し生産が拡大しつつある。(GIとは世界貿易機関(WTO)協定に基づく一種の知的財産。製法や品質基準などを満たした特定産地の農水産物に、産地名を付けてブランド化し、他の農産物との差別化を図る。ワインの「ボルドー」がその一例。)

  TIME誌(2012年1月16日)は復活を祝い「普通の胡椒はテーブルワイン、カンポット・ペッパーは上質のボルドーワイン」と述べている。

その後、年々生産量が増加し、昨年度には100トン以上となり、パリの一流レストランやスパイス専門店にも復活してきているが、まだまだ昔の栄光を取り戻す道の途中である。

黒生姜(ブラックジンジャー)(その2)

 先週末に黒生姜の主力のお客様の役員率いる視察チームが、カンボジアのカンポット州にある黒生姜農園を訪れました。

 農園では12月、1月の収穫を目指して黒生姜の塊根が最後の成長をしています。

 農園や現地の水辺のレストランで、黒生姜談義に花が咲きました。

黒生姜(ブラックジンジャー)(その1)

 一昨日朝、黒生姜に問題が出た、という連絡が入ったので、改善のための肥料類を、胡椒農園から黒生姜農園に送るよう指示して、黒生姜農園に向かいました。

  黒生姜農園に先に着いて、待てども待てども肥料類が来ません。

 わずか10kmの距離ですが、スコールで道が寸断されて迂回したり、泥に嵌まって動けなくなったりで進みません。

 夕方、ついに黒生姜農園まで3kmの場所で動けないので、救援を寄越せ、と言ってきました。

 そこで、ピックアップにワーカーを乗せて急行、現場でプッシュ。(写真) 何とか穴から脱出させて、農園まで護送。

 帰りはすでに真っ暗になっていましたが、農園から数km来たとことで、トラックが大穴に嵌まって道を塞いで通れない!

 野宿が頭をヨギッタところで、後ろから夕方助けたハンドトラクターが、胡椒農園にもどるために登場。

  今夜は黒生姜農園に泊まる、と言っていたのですが、夜道を戻ることにしたようでした。

 彼らに道の脇の岩を退けてもらい、何とか脱出。帰宅は深夜になりましたが。

 つくづく、毎年同じようなことを繰り返して、進歩がない、と痛感!!

カンポットペッパー農園記事(その10)

胡椒農園の収穫とその後

 弊社のKep州の胡椒農園では、5月末に一旦すべての収穫を終えました。この時には、熟した実だけではなく、熟していない実や花芽も全て取り除いてしまいます。

 栄養分が実に行かず、全て枝葉の成長に使われるようにして、木全体を大きくするためです。

 下は、その時の収穫風景です。梯子をかけて木の上の部分の実も収穫します。

 上の写真の手前の籠に収穫した胡椒の実の房を入れています。

 5月末に収穫を終えた後、雨季が本格化する前に、土入れを行います。これは畝の土が雨で流れだして少なくなったのを補う作業です。雨季が本格化すると作業がしにくくなります。

 何しろ、添え木7500本分の土入れなので、膨大な量の土が必要です。今年は下の写真のように農園内の土を掘って使用しました。

 土入れの後は、肥料を与えます。雨季が本格化して木が十分な水が得られるタイミングで、同時に栄養も与えて一気に木の生長を加速させる目的です。

 肥料は牛糞堆肥がメインになります。理由は伝統的にカンボジアの農村では、至る所で牛の放牧を行っており、比較的簡単に大量の糞が集められるためです。

 その他ミネラルの補給に牛骨粉も与えます。それから、何故かはわかりませんが、伝統的にコウモリの糞も一緒に与えます。これがカンポットペッパーに独特の風味を与える隠し味などと言われてはいますが。

 このKep州や隣のKampot州には、平坦なカンボジアには珍しく多くの山があります。この山は石灰岩でできているので、雨で溶けて多くの洞窟があり、その洞窟にコウモリが大集団で生息しています。

 そこで、山の近くの村では洞窟に入ってコウモリの糞を取って生活している集落が多くあります。
 我々もその様な家に直接コウモリ糞を買いに行くわけです。

 先日、コウモリの糞を買出しに、ある村に行って聞いた話ですが、Kampot州にあるKセメント(Kampot セメント)という会社が石灰岩の山を買い取って原料に使い、そのためにコウモリ糞取りの人々が山から追い出されているそうです。

 Kセメントは次々に山を買ってしまうので、このままではコウモリ糞が手に入らなくなり、将来カンポットペッパーの独特の風味に危機が訪れるかもしれません。

 さて、肥料を与えて雨季が本格化すると、木が成長して多くの新しい枝葉を茂らせてきます。
そして、5月末の収穫から2か月たった8月からは、木に多くの花芽が出てきました。一旦体全体の成長に栄養が使われて、一段落すると今度は花芽や実の生殖成長の順番になる訳です。

 下は、最近の胡椒の木、一杯の花芽を付けています。

 葉の付け根付近から小さな軸状のものが多数垂れてきているのが花芽です。この花芽の一部にはすでに小さな実が生ってきているものもあります。

 来月下旬には多くの青い実が出来てきます。これは青胡椒と言って、カンボジアでは生のまま野菜のようにして食べます。(下の写真は、カンボジア名物 「イカの青胡椒炒め」)

 来年の3月になると熟した実を収穫して、乾燥胡椒を作ります。木に一杯の花芽を見ながら、青胡椒や乾燥胡椒の収穫に思いをはせます。

カンポットペッパー農園記事(その9)

■ 胡椒の収穫が始まりました!

 弊社のKep州にある胡椒農園では、初の胡椒の本格的な収穫作業が始まりました。
一昨年9月に植えて18か月育て、待ちに待った収穫です。

 胡椒の木では実の房が収穫を待っています。実が十分に成熟しているのを確認して房ごと摘み取ります。初日は179kgの収穫量になりました。その後摘み取った房を集めて、実を一粒一粒選別します。

 胡椒は赤、黒、白、青の4種類があり、全て1本の木からできます。もっと言うと1房からこれらの4種類の胡椒ができるのです。

 熟した同じ房の中で赤い実が付き、これを選り分けて赤胡椒となります。上の写真の籠の入った赤い実がそれです。赤胡椒は、黒胡椒の一種で「完熟黒胡椒」とも呼ばれますが、黒胡椒に比べてマイルドな味わいです。

 また、形や色の悪い実も選り分けて白胡椒にします。白胡椒は実の表皮を除いて白い種の部分だけにしたものです。

 上の写真のように1-3日水に漬けて、表皮をふやかしてから取り除きます。表皮の強い香りが無くなって特有の辛味が味えます。
 赤胡椒、白胡椒になる実を房から取り去った残りの大部分の青い実は黒胡椒になります。胡椒の深い香りが楽しめます。
 さて、選別された実は、下の写真のような乾燥場で乾燥されます。

(黒胡椒の乾燥風景:青い実が乾燥すると黒くなります)

(赤胡椒の乾燥風景)

 これらは、1-2日乾燥させた後煮沸して消毒し、更に3日程度乾燥させます。乾燥が不十分だと保存中にカビが生えてしまいます。十分に乾燥させたものは、良い環境で保存すると何年でも持つと言われています。
 しかし、乾かし過ぎは禁物です。紫外線にあまり長期間当たると胡椒特有の風味が損なわれる言われているためです。 

 実は胡椒は通年は実を付けますが、この時期に収穫をするのは理由があります。胡椒を出荷するためには天日で乾燥させる必要がありますが、2月-4月の乾季のこの時期には滅多に雨が降らないので乾燥作業にもってこいな訳です。

 さて、収穫は胡椒の木の中で熟した房だけを摘み取る作業で、順番に6000本の添え木を何度も回り、2か月以上かけて行います。胡椒農園では、これから4月までこのような風景が続きます。

カンポットペッパー協会の年次総会に出席しました!

 弊社は、カンポットペッパー協会(Kampot Pepper Promotion Associatin)に所属しています。この協会は地元の胡椒農園の作る組合ですが、日本の農協のような機能を果たしています。

 特長は、

 1.‘Kampot Pepper‘という地域ブランドを持っているが、特に欧米では高級ブランドとして有名で、この協会に所属していないと、このブランドを名乗れない。

 2.協会員は、胡椒栽培方法に付いては、協会のガイドラインに従う必要があり、ガイドラインには100年以上前からの有機栽培の方法が定められている。即ち、協会員は厳密な意味で有機栽培を行っている。

 3.協会は、毎年胡椒の買取価格を決めて、協会員の農園から胡椒を買い取って、欧米からのバイヤーに売る。この買取価格が‘カンポットペッパー‘の標準価格となる。

 欧米での、‘Kampot Pepper`ブランドの人気は絶大で、TIME誌(2012年1月16日号)では、「普通の胡椒はテーブルワイン、カンポットペッパーは(ファイン)ボルドーワイン」とそのブランドを評しています。

 さて、カンポットペッパー協会の年次総会は、先週金曜日の朝8時から始まりました。

 最初に、ムンライ会長の挨拶や州の農業局のお偉方の挨拶がありました。(下はお偉方の写真)

(ムンライ会長と)

 次に、2009年度からの協会の拡大の歩みが紹介されました。会員数、植え付け面積、売り上げ等がすごい勢いで拡大の一途です。

 上の写真が今回発表された、その拡大を表す数値です。
 各列は、左から、年度、会員数、参加バイヤー数(欧米からの胡椒バイヤー)、植え付けられた添え木数、その内の収穫できる添え木数、植え付け面積、収穫高、協会が認めた収穫高、協会の手数料です。

 2009年には、会員数が113だったのに対し、2015年には倍増しています。また、作付面積は同じ期間で10倍にもなっています。
 会員数が2倍で、作付面積が10倍ということは、この期間で面積が大きな農園が増えてきたことを示しています。当初は0.5ヘクタールにも満たない小規模農家が100件ほどで始まりましたが、後に外国人や大資本を中心に数ヘクタール単位の大きなものが増えてきました。

 実際我々の近くの農園は、最近フランス人、ドイツ人、中国人の農園が増えてきました。もちろん我々日本人の農園も5-6軒あります。
 カンボジア人の資本家では、昨年前農林水産大臣のチャンサルン氏の20ヘクタールの農園も開業しています。

 なぜこれほど大きな農園が増えているかと言うと、この5年間ずっとカンポットペッパーブランドの胡椒の価格が急騰していることが主な理由です。
 欧米でブランド力の為に、欧米からのバイヤーが殺到してきており、昨年は協会経由では30トンしか出荷できなかったのに、バイヤーの買取要求は300トン来たそうです。需要に対して10%しか供給できない訳です。

 従って、価格もこの4年間で4倍にも値上がりしています。そこで、参入が相次いでいますが、植えてから3年目にならないと収穫できないし、そこからも年数が経たないと収穫量も増えないので、今後5年間程度はこんな状態が続く公算です。

 さて、この協会の実績発表の後には選挙です。まず、バイヤー代表を選びます。欧米バイヤーの代表も協会に所属して、品質向上や価格についてのバイヤー側からの意見を述べます。

 上の写真は、開票風景です。協会発足当時からのバイヤー会員2社が圧倒的多数で再選されました。
 これらのバイヤーは、‘カンポットペッパー‘ブランドを広めるために大きな役割を果たしてきました。
 このようにバイヤーを会員に迎えて、協力して行くのもユニークで優れたアイデアだと思います。

 その後は、カンポット州の各郡の代表選挙と、宴会になりました。

 カンポットペッパー協会は、カンボジアで唯一の成功している農業生産者の協同組合です。日本のNGOが必死になって農協をカンボジアに作ろうとしていますが、全く上手く行っていません。
 その中で、この協会は異色の存在です。

 各農園が、ブランドによる高価格保証というメリットによってガッチリ結びついているわけですが、それ以外にもバイヤー会員を迎えて意見を求め、かつブランドを宣伝してもらう等、協会の成功の秘訣の一端を見た気がしました。弊社も、今後協会の一員として、有機栽培を進めて行きたいと考えています。

カンポットペッパー農園記事(その8)

ケップの胡椒農園の近況

 弊社の胡椒農園は、カンボジア南西部のケップ特別市(州)とカンポット州の2か所あります。
 先週末にケップの農園に行きましたので、その様子をレポートします。

 昨年植えた木は、3mの屋根を突き抜けて育ち、実を鈴なりにつけ始めています。


 この時期は、胡椒の実ができても中の種の部分がまだ固く出来上がっていないので、実は青胡椒として食べることができます。青胡椒とは生のフレッシュな胡椒のことで、房ごと摘み取って野菜としてイカなどの海鮮と一緒に炒めて食べます。(辛いので1粒ずつ食べます)

 1月になると、実の中の種が固く熟してきて、野菜としては食べられなくなりますが、乾燥して黒胡椒や完熟の赤胡椒として出荷できるようになります。

 胡椒の木は屋根を突き抜けるほど伸びましたが、ココナッツ葉の屋根は1年でほとんど壊れてしまい、日光を遮れなくなってしまいます。(下の写真)

 胡椒はもともとうす暗いジャングルの中で他の木に巻き付いて生活する植物なので、直射日光には弱い性質があります。特に3歳未満の若い木は直射日光を避けるための屋根が必要です。
そこで、今再び屋根を葺くためのココナッツ葉を準備しています。

 上の写真は準備中のココナッツの葉で、虫干し中です。ココナッツ葉は、1ヘクタールの畑に5000枚という大量の枚数が必要で、この農園では4ヘクタール分合計2万枚を準備しています。

 さて一方、今年9月に苗を植えたばかりの畑の方は、若木が成長速度のピークの時期を迎えています。

 胡椒の木が伸びると、木の皮で作った紐で添え木に縛り付けて行きます。下の写真は木の皮から作った紐です。

 農園のスタッフは、これから半年間ほどは、胡椒の木の伸びの速さに急き立てられながら、紐結びに終われます。
 丁度これから乾季に入るところですが、乾季には全く雨の降らない期間が数か月続きます。胡椒は3-5日に1回は、添え木1本についてバケツ1杯の水が必要です。

 そのために、下の写真のような貯水池を用意し、雨季に雨水を溜めます。

 水不足だった昨年と違い、今年は雨季に十分な水が貯えられました。この農園では、来るべき乾季も乗り切れそうです。

 

カンポットペッパー農園記事(その7)

赤胡椒、黒胡椒、白胡椒、青胡椒は同じ1本の木から

 弊社は、カンポット州とケップ特別市で胡椒農園を運営しています。今回はこの農園で出来る胡椒の種類についてお話します。

 実は我々の食卓に上る胡椒には、赤胡椒、黒胡椒、白胡椒、青胡椒の4種類があります。
これらは全て同じ1本の木からできるのですが、収穫時期や製法が異なるために色や味、風味に違いが出てきます。

 胡椒の実は、実った初めは青(グリーン)でだんだん黄色っぽくなり、熟すにつれて赤味がかってきます。
 通常は、赤味がかる前に収穫してそのまま乾燥させます。一番風味が強いからですが、これが黒胡椒です。(下の写真)

 完全に熟してから収穫して乾燥させたものが、赤胡椒です。黒胡椒よりも味がマイルドになります。‘完熟黒胡椒‘などとも呼ばれ、取れ高も少ないので珍重されます。

 同じ1本の房でも下の写真の様に、赤胡椒(赤い実)と黒胡椒(になる緑色の実)が取れます。

 白胡椒は、黒胡椒になる実の皮を取って白い種の部分だけを乾燥させたものです。(下の写真)黒い皮の風味を感じずに、胡椒の本来の辛味が味わえます。


 これら赤、白、黒の使い分けですが、赤は黒の完熟版でマイルドになっているだけなので、基本は黒と白の使い分けになります。

 辛味の欲しい時には白、風味の欲しい時には黒とも言われ、魚料理には白、肉料理には黒ともいわれますが、実際には、個人の好みに依るところが大きいようです。
 例えば、私の場合、強い風味が欲しいので魚にも黒をよく使います。

 さて、青胡椒は何か?というと、熟す前のグリーンの実を収穫してそのまま野菜のように使ったものです。
 食卓では、乾燥させずに生のまま使いますので、カンボジアのような胡椒産地ならではのものになります。
 下の写真は、収穫後3時間のものです。冷蔵しないと2日くらいですぐに黒くなって使えなくなります。

 この青胡椒を使ったカンボジアの代表的な料理が、イカの青胡椒炒めです。

 何とも言えない、新鮮な胡椒の爽やかな風味が海鮮に良く合います。青胡椒の辛味は黒胡椒などよりはるかに少ないので、野菜として使われるのですが、青胡椒を房ごとガブリとやると大変なことになります。
 日本人は一粒ずつ食べた方が無難です。

 青胡椒の収穫時期は、丁度今、11月~12月になります。それ以降になると実が熟して固くなってしまいます。
 そして、十分に熟して固くなったものを翌年2月~5月に赤、黒、白胡椒として収穫するわけで、農園としての本格的な収穫作業になります。今から、それが待ち遠しいです。