2015年2月22日
弊社のKratie州Snoul郡にある天然ゴム農園も乾季の真っ最中で、雨季にはなかったことが色々起こります。
先ずは、タッピング(樹液採集)の休止です。
この辺りでは12月後半から2か月ほどほとんど雨が降っておらず、土壌も乾燥してゴムの木も水が吸えません。そこでゴムの木は一旦葉を全て落とします。
そうなると、タッピングしても樹液が取れなくなり、ゴムの木を傷めるだけになるので、タッピングを休止します。
今年は、2月初旬にタッピングを止めました。
タッピングを止めた後は、樹液採集皿を木から外して洗っておきます。(下の写真の白矢印)
また、下の写真の白矢印のようにタッピングした場所に保護用の油を塗っておきます。
その後、ゴムの木は再び葉を付けます。今は天然ゴム農園にとっては丁度新緑のシーズンになります。
天然ゴム農園の従業員にとっては、この時期タッピングが無くなり、用具の清掃程度しか仕事が無くなります。経営者にとっては、2か月間も仕事をしないのに給料を払う必要があるので、頭が痛い季節です。一旦解雇してしまうと、雨季になってタッピングを始める時に必要なスキルのある従業員が集まらないのです。
そこで、この時期にはキャッサバの収穫とドライチップ作りをやってもらいます。実は、ゴムの木を植えていない場所に5ヘクタールほど昨年5月にキャッサバを植えておいたのです。
この時期には、雨がほとんど降らないのでキャッサバを薄切りにして天日で乾かすドライチップ作りに最適です。
ここは、Kratie郡の250ヘクタールのキャッサバ農園と違って小規模なので、トラクター等を使わず全て人手作業で収穫します。
さて、2か月間の農閑期にも従業員を解雇せずに抱えておくメリットは他にもあります。
乾季には、Kratie州ではジャングルやその周辺で火災が多発します。弊社のキャッサバ農園も度々被害にあっています。
実は、この天然ゴム農園は今月に入って2度ほど火事になりかけたことがあります。隣の農園で枯草を焼くために付けた火が燃え移ってきたのです。
その時には、夜中にも関わらずマネージャーの号令で全員飛び起きて、消火活動にあたり農園を守りました。
雇用を保証することで、従業員に自分の農園だという意識を持ってもらえる訳です。
乾季は4月中旬のクメール正月頃に終わり、再びタッピングが始まります。
2015年2月16日
先日の記事(今年の野菜作り)で述べましたように、今年は収穫販売までに長期間かかる天然ゴム、胡椒、キャッサバなどに加えて、日銭の稼げる野菜にも力を入れていきます。
カンボジアでは、乾季の中心となる 2-3か月間はほとんど雨が降りません。そのためその時期には市場に出荷される野菜が極端に少なくなり、値段も上がります。 野菜でコンスタントに日銭を稼ぐためには、年間を通じて野菜を作って出荷する体制を作る必要があります。
特に、野菜畑を作るカンポット州の土地では、乾季には極端に雨が少なくなりますので、何らかの方法で水を確保する必要があります。
最初にトライしたのは、溜池による地下水の利用です。我々の農園の隣は水田ですが、周囲に比べて特に低くなっていて地下水が溜り易い地形になっています。そこで、その場所に溜池を掘れば地下水が湧きだすのではないかと考えました。
隣の水田のオーナーにお願いして、試に少し掘らせてもらいました。
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果たして、ほんの3mばかり掘ったところで上の写真のように、地下水が湧きだしました。地下2mの所に粘土層があって地下水が大量にその上に溜まっているのです。
ここに10m四方ほどの溜池を4m位の深さで掘れば、十分な地下水が利用できることが分かりました。
そこで、隣の水田のオーナーにこの土地を使わせてもらうように交渉しました。しかし「この土地を買わなければ使わせない」とのことでしたので、非常に小さい土地ということもあり、買うことにしました。
土地買収のために、お金を用意してオーナーに土地の権利証を見せてもらうように依頼しました。ところが、オーナーからは「土地の権利証は借金の担保として銀行に渡してある」とのことです。
カンボジアの農家は土地があると、それを担保に銀行から返済が困難な金額のお金を借りて、車などを買うケースが非常に多く、返済できずに土地を失う事例が多発しています。
カンボジア人は、先のことを考えずに目先の大金に飛びつく人が多いので、多くは中華系の銀行の餌食になってしまいます。この水田のオーナーもそんなケースかと思いながら、銀行に行って、オーナーに土地代を支払うために、土地の権利証を確認させてくれるように頼みました。
ところが、意外なことに銀行の答えはノーです。実は借金の担保にはこの土地だけではなく、何枚かの権利証もまとめて預けてあるとのことで、この土地の権利証1枚だけを単独で扱うことはできない、とのことでした。
つまり、この土地の土地代だけをオーナーに支払っても、銀行からの借金全ては返済できないので、銀行はこの土地だけを分離してその分の借金だけを返済することには応じられない、ということでした。
仕方ありません。折角水の在り処が分かったのに、指をくわえて諦めるしかありません。
次に、我々の農園内で、地下水の湧く水田の近くを試し掘りしました。すぐ近くなので水が湧くかもしれないと考えたのです。結果は下の写真のようにNGでした。
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同じように地下2mの所に粘土層があって、地下水が少し溜まってはいるのですが、隣の水田よりも高いために十分な量が湧きません。これもダメです。
次は最後の手段です。井戸を掘ることにしました。カンボジアではほとんどの場所ではある程度の深さまで掘ると地下水脈に当たると言われています。そこで、井戸業者を呼んで先程掘った池の近くを調べてもらい、井戸で水が得られるかどうかを確認しました。
井戸業者の調査結果は水が出そうとのことだったので、井戸を掘ってもらいました。下の写真のように50m掘ったところで地下水脈にあたりました。青いビニールパイプが井戸の出口です。
これでやっと念願の水の確保に成功です。
さて、深く掘れば大抵の場所から水が出るならば、なぜ最初から井戸を掘らないかについては2つの理由があります。
第一に、井戸を掘っても水を汲み上げるためにはポンプを動かすことが必要で、そのためにはポンプ用の電気を起こすために発電機用のディーゼルオイルが必要となります。もし溜池を掘っただけで水が確保できるならば、井戸用ポンプのディーゼルオイルの費用が削減できるので、その方が良いのです。
第二に、カンボジアでは多くの井戸水はヒ素を含んでいます。そのため井戸水を直接作物にやることはできません。一旦溜池に溜めて、ヒ素を沈澱させる必要があります。
従って、井戸があっても溜池が必要なのです。逆に言うと溜池を掘っただけで地下水が利用できれば、井戸を掘る必要がありません。そこで先に溜池にトライしたと言うわけです。
野菜農園作りは、水の確保も試行錯誤の連続です。
2015年2月10日
先日の記事(キャッサバ農園の火事)で、弊社のクラチェ州のキャッサバ農園の火事の話を書きました。周辺のジャングルの放火が燃え広がって、弊社の農園の一部を焼きました。
前回は、周囲のジャングルからの飛び火が強風のために道路を越えて、農園のキャッサバの間の枯草に移って2.5ヘクタールを焼きました。
1月最終週になって、近くのジャングルで火事が相次ぎました。ジャングルの中で孤立して生活している「森の民」が、木材の違法伐採や、野生動物の狩りの為に次々に放火をしているようです。
この「森の民」は、カンボジア人の一部のグループで、ジャングルの中で生まれ育ち勿論学校にも行かずに、外の世界の法律や制度を知らずに、自分達の論理と都合のみで動いています。
彼らのジャングルへの放火を止めさせることはできないので、農園に飛び火しないように自衛する手段を取るしかありません。そこで、農園の外側に面した部分の枯草をなるべく取り除く様にし始めました。
ところが、1月末に今度は、農園の中心部に放火されてしまいました。
火事は、中心部5ヘクタールを焼きました。前回同様、地上の茎と葉が焼かれて炭になってしまいました。
幸いなことに、我々が収穫するイモは地下にあるので被害を免れましたが、地上部が死んでいるので1週間程度で収穫してしまわないと、イモもダメになります。
この農園中心部への放火は、目撃者がいないので断定できませんが、やはり「森の民」の仕業の様です。
周囲のジャングルには、ウサギ、鹿、イノシシ等の野生動物が豊富なので、狩りの為に農園に入って来て放火したとみられます。今後農園内も厳重に警戒せざるを得ない状態です。
そうこうしている間に、今度は国道から農園に続く道の丸木橋が放火で焼失しました。
上の写真は、川底から焼失した丸木橋を撮ったものです。乾季で川に水が無くなり川底に降りられるのですが、橋の残骸が中央に見えます。
この火事のために、国道から農園にトラックが通れなくなり、キャッサバ収穫にストップがかかりました。
橋の横から川底を通るバイパスを大至急作って、交通を確保しました。4月中旬の雨季になると川に水が戻って来るので、バイパスが使えなくなります。それまでに丸木橋を再建する必要があります。
火事との戦いは、まだまだ続きそうな見込みです。
2015年2月3日
先日、弊社の前の女子社員が、預けておいた事務所の家賃を支払わずに持ったまま会社に出て来なくなり、本人の携帯電話も止められてしまい連絡が取れなくなった、横領事件の話を書きました。(記事「カンボジアの残念な面」)
結果的に、何とかこの女子社員の家を突き止めて、この女子社員には辞めてもらいました。但し、警察沙汰にはしないで、その姉を保証人として、1月末から5分割で返済してもらうことになっていました。
この女子社員の家は、首都プノンペンのスラムに有って、狭い家に大勢の家族が住んでいました。
恐らく、彼女は今まで家賃の金額の現金は見たことが無かったのではないかと思います。
さて、返済してもらえるかどうかは5分5分と思い、あまり期待していませんでしたが、ナント1月末に約束通りに第一回目の返済がありました。
金額は、日本人からみれば微々たるものですが、それよりも何かうれしくなってしまい、追記しました。
まあ、冷静に考えると、自宅が押さえられていて、大勢の家族も一緒に逃げるわけにも行かない事情があるので、返済せざるをえないとは考えられますが、何かと言い訳に屁理屈を言って逃げ回るのがカンボジアの常なので、驚いたり、少しこれまでのカンボジアへの見方を変えたりしてしまいました。
でも、お人良しと笑われてしまうかもしれませんが。 前の記事から時間が経ってしまいましたので、短いですが別の記事にしました。
でも今月末の返済はどうなることか。。
2015年1月25日
弊社は、天然ゴム、胡椒、キャッサバのプランテーションを運営していますが、いずれも植えてから売り上げが立つまでに長期間かかります。最短のキャッサバでも1年がかりです。
そこで、何か日銭が稼げるものは無いかと考えて、昨年から野菜作りを始めました。
昨年は、オクラをメインに幾つかの野菜を試しに植えてみて、カンボジアの気候風土で何が育つのかを研究しました。
その結果と、商売として利益が出るものという観点で今年の野菜作りの実行計画を立てました。
企業秘密ではありますが(笑)、その一端をご紹介します。
1つ目はやはりオクラです。オクラは種を蒔いて2か月ほどで収穫ができ、その後毎日のように花が咲いて実が成り、毎日一定量収穫できます。またプノンペンで主に日本人からの需要があるので文字通り日銭が稼げます。
2つ目は、葉レタスです。カンボジアでは葉レタスは良く育ちます。葉レタスはレタスの一種ですが日本の高原レタスのように丸くなりません。良く市場で見かけますが、野菜の中では単価が高い割りに需要が多く、かなり沢山作っても容易に売りさばくことができます。
うちの野菜農園では先週から種を蒔き始め、芽が出始めました。(下の写真)
葉レタスは数日おきに少量ずつの種を蒔いていき、順次大きくなったところで毎日収穫するようにします。
しばらくこのポッドで育てて、少し大きくなると地面に移し替えます。
3つ目は、ショウガです。ショウガは3年前までカンボジアでは1kgで1ドル程で取引されていましたが、2年前に1kg=3ドルになり、昨年末から年初は1kg=5ドルまで高騰しました。さすがにこの高値は続かないと思いますが、当面供給が不足しています。
また、ある程度の量を作れば、大量に需要がある日本に輸出することができます。
それならば、誰でもが作りそうなものですが、幾つか参入障壁があります。一つはまともな利益が出る生産高を上げることが技術的にかなり難易度が高いことです。
上の写真は、重要な栽培技術の一つの肥料用のもみ殻です。これを燻して燻炭を作り、肥料の一部にします。その他、米ぬかや米藁と言った稲の収穫後に出るものが必須です。カンボジアの農家の大半は米作なので、カンボジアではこれらが非常に手に入りやすく、実はショウガ栽培に適しています。
栽培技術の点では、いかに連作を可能にするかという問題もあります。通常のやり方では連作ができないので、生産規模を拡大するためには多くの土地が必要になり、土地の単位当たりの収益が低くなってしまいます。
しかし、正しい技術を使って長年連作している農家もあって、やはり栽培技術がキイになります。
また、他の参入障壁は、種ショウガの価格が高く、栽培にも多くの人手がかかるので、栽培のコストがかなり高いことです。そのため、カンボジアで一部栽培技術を持っている農家も、それ程大規模には作付できていません。
弊社では、栽培技術を持つ専門家の指導を得て、今年1ヘクタールの栽培をして技術を身に付けます。その結果で、来年以降拡大していく予定です。
その他、かんぴょうにも取り組みます。
現在、日本で使われるかんぴょうの90%は中国で作られていますが、日本の問屋からは中国以外から買いたいとの強い要望があります。
上手く作れれば、日本で大きな需要がありますが、これが中々上手く行きません。
かんぴょうは、ウリ科で元々熱帯原産なのでカンボジアでも育つことは育ちますが、日本で食べるように乾燥させてから煮てみると溶けてしまったりします。
我々も条件を変えて試験栽培をしています。(最初に植えた実。形が悪いです。)
下は、先週ポットから地面に植え付けたかんぴょうの若葉。
オクラ、葉レタスは目途が立ってきましたが、ショウガやかんぴょうはまだまだ困難があります。しかしながら、その困難を克服すれば、ショウガもかんぴょうも大きな可能性が開けます。
今年もその可能性に夢を持って、野菜にも取り組んで行きたいと考えています。
2015年1月20日
新年早々から色々な事件が起こります。今度は、弊社のクラチェ州のキャッサバ農園で火事です。
この農園では昨年4月から8月にかけて、害虫に苗を食い荒らされたり、水害や雑草に苦しめられながらもなんとか250ヘクタールにキャッサバを植え付けました。収穫のトライアルで手順を確認して、来月からいよいよ本格的な収穫ができる、と思っていた矢先の出来事です。
このキャッサバ農園は、国道7号線から15kmほどジャングルの中に入いって行った場所を切り開いたので、周りは未開のジャングルです。
このジャングルで起こった火事が折からの強風にあおられて、5mほどの道路を飛び越えて農園に移りました。
現在は乾季の最中で、1か月以上まともな雨が降っておらず、農園もカラカラに乾燥しています。
農園に飛び移ってきた火は、キャッサバの間の枯草を伝わって燃え広がりました。
キャッサバは1m間隔で植えられていますが、その間には雑草が生えてきて除草剤で枯れたり、乾季で枯れてしまったりした枯草がかなりあります。それが導火線のようになって火が広がってキャッサバの茎や葉も焼けてしまいました。
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焼けた領域は約2.5ヘクタールで、小さな面積ではありません。ただ、不幸中の幸いで火は農園の中の川の部分で止まり、農園の1%の縁の部分を焼いただけで、またジャングルの奥に向かって行きました。
農園の99%は焼けずに助かりました。
焼けたキャッサバですが、地上部分は焼けましたが、地下のイモは一先ず焼けずに無事に残りました。ただ、茎や葉が焼けているために10日くらいでイモもダメになってしまいます。そこで、至急イモを掘り出すことになります。
本来はまだイモが小さくて掘り出す時期になっていないのに、掘らざるを得ず、小さいままで出荷するために損害がでます。
このように、ジャングルの火事が乾季で強風の条件下では農園に移ってきてしまいますが、それではなぜ周囲のジャングルで火事が起こったのかというと、明らかに放火が原因です。
この乾季の時期には、この地域のジャングルではいたるところで放火されます。
放火するのは、ジャングルに住み着いている所謂「森の民」です。この「森の民」は勿論カンボジア人なのですが、ジャングルの奥に住んでいて、一般のカンボジア人とはあまり交わらず独自の生活をしています。
彼らは子供の時からジャングルの中だけで生活し、もちろん学校へも行かず読み書きも知らず、ジャングルの外の世界の規範や法律を知りません。従って、自分たちの都合だけで違法な放火を繰り返すのです。
彼らはなぜ放火するのか? 一つの理由は材木の違法伐採をするためです。ジャングルの多くは国有地で木材の伐採は禁じられていますが、彼らは外の世界の法律とは無関係に木を伐採して主にベトナムに運んで生活の糧にします。
乾季にはジャングルの中でも下草は枯れて燃えやすくなっています。放火すると下草だけに火が伝わって燃えてしまい、大きな木だけが残ります。邪魔な下草が無くなって木の伐採作業が非常にやりやすくなる訳です。
我々が「森の民」の住むジャングルを切り開いて農園を作ったために、火事をもらうリスクが出てきました。しかしながら、彼らに放火を止めさせることはできないので、自分たちで農園を周囲の火事から守るしかありません。
これから、周囲のジャングルに面する場所は、飛び火が移らないように枯草を取り除く作業を行います。
これも、カンボジアでプランテーションを運営する苦労の一つです。
2015年1月15日
カンボジア東部クラチェ州スノール郡にある弊社の天然ゴム農園は、2011年の運営開始以来天然ゴム価格の暴落に悩まされてきました。価格が3年間下落し続け、ピーク時の1/4になりました。
これが昨年10月に底打ちして若干上向きになり、やっと一息ついたと思っていたら、今度は交通事故が起きてしまいました。
1月4日に天然ゴム農園のマネージャーのC君から、「前日に交通事故が起きて、天然ゴム農園のワーカーが巻き込まれた。ワーカーは無事だが、相手は生死がはっきりしない状態。ワーカーが運転していたオート三輪が警察に差し押さえられて、収穫したゴムの樹液が運べない。」という連絡がメールで入りました。
私は、驚いてすぐにC君に電話を入れて状況を確認しようとしましたが、
C君は「 ワーカーが収穫したゴムの樹液をゴム工場に運んだ帰り路に交通事故に会った。運転していたオート三輪が警察に持って行かれて、明日からゴムの樹液が運べない。警察がいつオート三輪を返すかわからない。至急運搬用にバイクを買いたい。バイクを買っていいですか?」
「バイクを買って良いですか?」と繰り返すばかりで要領を得ません。
事故の状況を確認したいのに、ゴム樹液運搬用バイクを買う話になってしまっています。
確かに、毎日収穫したゴムの樹液をその日に工場に持って行って販売しているので、折角収穫しても工場に持って行けなければ売ることができず大損害です。
私は、取りあえずC君に「わかった。まずどこかで運搬用のバイクを借りられないかを探してみて、もし借りられなければ買ってもいいから。 ただ、先ず事故の原因を整理して報告してください。また、事故の現場や相手の状況の写真を送ってください。」と話しました。
翌日、C君から事故の原因報告と現場状況の写真を送ってきました。
写真では、Aのオート三輪がセンターラインを越えて自転車に追突したことを表しています。事故の原因は明らかに弊社のワーカーのオート三輪にあります。
最初生死がはっきりしないと言っていた事故の相手は、頭を打って気を失っていたが、幸いなことに気が付いて頭と手に怪我をして病院のベッドで寝ていました。
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軽傷とは言えないが、命に別状があるとまでは言えない程度の様です。写真を見て一先ずほっとしましたが、問題はオート三輪を運転していたワーカーが何故センターラインを超えたのかです。
再び、C君に電話を入れて、居眠り運転だったかどうかを確認しました。
C君「居眠りです。運転していたワーカーは、午前3時からにタッピング(樹液採取作業)をした後、疲れて寝不足の状態で運転したんです。」
私「それじゃあ、マネージャーの君の責任じゃないか。なぜ、そんな危険なことをさせたの?」
ゴムのタッピング(樹液採取)は、まだ陽の出ない早朝から行われます。陽が出ると樹液の出が悪くなるためですが、暗いうちからのきつい作業なので疲れがたまりやすくなります。
一方、ゴム樹液の運搬は20km以上を運ばなければならないので、疲れていると居眠り運転になりやすくなります。そこで、運転するワーカーの疲労度合を確認して、無理な場合は早朝タッピングをしていないワーカーに運転させる必要があります。
C君「オート三輪はもう警察から返ってきました。でも、事故の相手に賠償金600ドルを払わないと、また取り上げられてしまいます。ワーカーには支払い能力がないので、会社が賠償金を払ってください。」
こちらのワーカーに事故の直接の責任があるし、増してマネージャー(会社側)がしっかりワーカーを管理できていなかった責任があるので、賠償金を払うのは仕方ありません。
しかし、ここであっさり支払ってしまったのでは、C 君が問題点をハッキリ認識しないままで終わってしまう恐れがあります。
そこで、私「マネージャーとして、再びワーカーが交通事故を起こさない方策を考えて報告してください。そうしないと、賠償金は支払わないよ。」
その翌日、C君は再発防止策を簡単にまとめてメールしてきました。彼が今後ワーカーの居眠り運転を無くすように管理しようと考えているようなので、賠償金の支払いを許可して一件落着となりました。
新年早々から事故が起こり、幸先の悪いスタートになってしまいましたが、不幸中の幸いで大事には至らず、逆に組織としての問題点が浮かんで、私も反省する機会を持つことになりました。
災いを転じて福として行きたいと思います。
2015年1月4日
弊社のKratie州の250ヘクタールのキャッサバ農園は今年1月から収穫を始めます。収穫量が6000トン前後にもなる大がかりな作業で、新しい機械なども取り入れるので、事前に手順を確認して上手く行くことを確認したり、作業工数や速度を測る必要があります。
そこで、年末に1.5ヘクタールほどの畑を実際に決められた手順で収穫する、トライアルを行いました。
先ず、地中にイモの部分だけを残して、茎を切り取ります。
上の写真の白矢印が茎を切られたキャッサバです。極一部にしか白矢印を付けていませんが、イモは1m間隔の畝の上に1m間隔であります。
イモは畝の中に埋まっていますので、これをトラクターの後ろに付けたリフターで掘り返して地上に持ち上げます。
上の写真の白矢印で示しているのが掘り出されて出てきたイモです。
現在、カンボジア、ベトナム、タイではこのようなリフターでイモを掘り出す方式が広く使われています。
ただし、この方式ではイモの一部が欠けて地中に残ってしまうことが、大きな問題になっています。
上の写真の白矢印が欠けた部分を示しています。
我々の実際の収穫では、タイで開発された最新の収穫機を導入して、イモが欠けることを防ぐ予定です。
地上に掘り出されたイモは、下の写真のように1本1本切り離して、籠に入れます。
籠にはおよそ50kg分のイモが入りますが、これを500kg入るビニールの袋に移します。
わざわざ籠からビニール袋に移すのは、このビニール袋をパワーショベルで吊上げて、出荷運送用の大型トラックに積み込むためです。(下の写真)
パワーショベルのバケットのすぐ下にはデジタルの重量秤が付けてあり、ここで出荷前に重さを測定します。
パワーショベルでビニール袋を吊り下げた瞬間に重さが分かるので、重量測定のために別途作業をする必要を省けます。
パワーショベルで出荷用トラックに積み込む様子です。
実は、このビニール袋は底が開くようになっていて、トラックの上で底を開けると、袋からイモが下に落ちて自動的に積み込むことができ、人手作業を省くことができます。
このように、パワーショベルと底の開くビニール袋のおかげで15人もの人手を削減できます。
今回は、イモを直接には出荷せず、乾燥させてドライチップにしてから出荷の予定です。そのために、イモを運んで作業場に降ろします。
さて、カンボジアや近隣のベトナム、タイでも現在は収穫作業のほとんどを人手で行っており、大変に人手がかかる作業になっています。
カンボジアでは、近隣のベトナム、タイに比べて人件費が半分以下なので、費用面では低いようにに見えますが、1人当たりの作業効率が近隣国より低いためにそれほど人件費は変わらず、高い費用が掛かります。
また、人手に頼ると大量に人を集めるのが一苦労となり、集められなければ作業が遅れてしまいます。
そこで、機械化が必須となります。我々も今回のトライアルでの作業手順を基に、更に機械化を進めていく予定です。
2014年12月30日
年末になって今年を振り返ってみると、普通の年の3年分くらいの経験をしたように感じてしまいます。
思い出すと疲れるところもありますが、一生の中でも際立った年なので、まとめておこうと思います。
1.年初から東奔西走の日々
昨年に手当てしたキャッサバ用地が使えないことが分かり、年初から農園用地を求めてカンボジア中を走り回りました。
行った州を見ても、東側ではコンポントム州、コンポンチュナン州、バッタンバン州、ポーサット州、南部カンポット州、西側ではコンポンチャム州、クラチェ州、モンドルキリ州と8つの州、延べ十数か所以上を訪れました。
車に乗った距離は北海道から沖縄まで以上になります。
農地調査なので、ただ現地に行くだけではなく、未開のジャングルに分け入って、植物の生え方や水没状況、土壌の質等を確かめました。おかげで毎回のように手足をすりむいたり傷だらけになりました。
2月初めにクラチェ州にキャッサバ用地を決めてからも、今度は胡椒農園の土地を求めて3月まで駆け回りました。(胡椒用地の契約)
2.開拓と植え付けの開始
2月初めにキャッサバ農地を決め、知事や副知事と順番に会って長期に使用できるよう根回しをしたうえで、契約しました。
その直後から、キャッサバ農地の開墾が始まり、4月中旬には全250ヘクタール中約200ヘクタールが使える状態になりました。
4月8日に最初の本格的なスコールが降り、キャッサバの植え付けを開始しました。当初は植え付けにそんなに時間がかかるとは思っておらず、5月一杯には完了の予定でした。
3.七転八倒の日々
4月中旬のクメール正月後に植え付けが本格化して、当初順調に進みました。
(苗を挿して植え付け)
ところが、5月になって大事件が起こりました。キャッサバのペストともいわれる害虫、メーリーバグ(Mealy bug)が大発生し、植え付け用の苗木を食い荒らし、大部分が枯れたりダメージを受けて使えなくりました。
(メーリーバグの被害で枯れた苗木。白い粉はメーリーバグの卵)
大変な損害を被っただけでなく、メーリーバグの駆除と新たな苗木の確保に追われ、体制を立て直して植え付けを再開するのに2週間以上の時間を無駄にしてしまいました。
やっと植え付けを再開した直後から、今度は連日強烈なスコールが続き、農園までの道路が冠水して農園に通うことが困難になりました。また悪いことに、畑にも水が溜まって土が柔らかくなり、トラクターが滑って進まなくなって植え付け用の畝が作れない状態で、植え付けができない日が続きました。
「播かぬ種は生えない」ので、何とか植え付けないとビジネスがとん挫してしまいます。トラクターによる畝作りの方法をあれこれ試行錯誤で改善して、少しずつ植え付けを進めましたが、7月になっても連日のスコールの勢いは衰えません。比較的低い場所には水が溜まって沼地の様になってしまいました。
まずいことに、土地のオーナーから借りたパワーショベルも故障して、排水路も作れません。仕方なく乏しい資金の中から捻出して自前のパワーショベルを買い、何とか排水作業をして植え付けを進めました。
植え付けが最後の50ヘクタールに来た時に、また問題が起こりました。我々が最後の50ヘクタールの開墾を依頼した土地のオーナーが資金不足で開墾をストップしてしまったのです。
我々もあの手この手で交渉しましたが、開墾は中々再開できず結局終わったのは7月終わりになってしまいました。
このように七転八倒の末に8月始めに何とか全体を植え付け終わりました。
4.胡椒畑作りの日々
一方キャッサバと並行して、3月に買ったカンポット州の農地に胡椒を植える準備を5月から本格的に進めてきました。
開墾、耕作、添え木立て、ココナツ葉での屋根葺きを順次終わらせて、8月からはいよいよ苗の植え付けを行いました。また、カンポット州の農地は雨が少ないので、通常の溜池だけでは足らず、井戸堀りをして何とか水を確保しました。
(圧搾空気による井戸堀り。地下水が噴き出す)
また、昨年植えたケップ特別市の農地では、胡椒の若木が育ってきていたので、施肥や雨水で流されて減ってしまった土を足す作業に追われました。
5.収穫準備の日々
七転八倒して何とか植え付けたキャッサバも年末近くには何とか育ち、来年の収穫を準備する段階に来ました。
250ヘクタールを2-3か月で収穫するためには、300人の人手がかかります。そんなに人を集められないので、何とか少ない人数でやる方法を研究しました。
まずは、機械化です。キャッサバの収穫機を求めて、手分けしてカンボジア国内だけでなく、近隣のベトナム、タイまで探し回りました。
私も何日もタイの首都バンコクから数百キロ離れた地方のメーカーを探し回りました。
(タイでの収穫機探し)
省力化のためには、機械化だけでなく作業手順の合理化も重要です。何度も手順について議論を重ね、テストを行いました。
昨日、今日で、最初の収穫作業の本格リハーサルを行いましたが、まだ改善の余地が多く、来年もリハーサルを行います。
さて、肝心のキャッサバですが、植えた時期、水没の有無、雑草の状態によってバラつきは有りますが、お陰様で何とか来年収穫できるところまで漕ぎ着けました。
(4mになる巨大キャッサバ)
また、胡椒の方も昨年植えたものが来年2-5月に収穫できる状態になりました。
チームのメンバーの頑張りと、何度もダメになりかけたところから復活できた幸運に感謝したいと思います。
今年ブログを読んで頂いた皆様、ありがとうございました。来年も良い年でありますように。
2014年12月26日
弊社のクラチェ州の250haの農園に、昨年4月から7月にかけて植えたキャッサバにもいよいよ収穫の時期がやってきました。
但し、全体で収穫量が6000トン前後にもなる大仕事なので、大量の要員や農機具も必要で、単にワーカーを集めて行きあたりばったりにやったのでは、遅れや無駄が大量に発生してしまいます。
そこで、事前に手順を作り、人手で行う仕事と重機等を使う仕事に分け、またそれぞれの仕事のやり方をテストして確認しておく必要があります。
そのテストの結果で、やり方を改善したり、処理のスピードを測って計画を修正したりしていきます。
1月中旬から本格的な収穫を始めるために、今週初めに最初の手順確認テストを行いました。
テストは長さ70mの畝4列について行いました。各畝には1m間隔で1本のキャッサバが植わっており、1本のキャッサバには、数キロのイモが成っています。
先ず、イモを茎ごと人手で抜きます。下の写真はその作業で、写真中央に茎ごと抜かれたイモが見えます。
本番では、イモが埋まっている状態で先に茎だけ切り、その後機械でイモを地中から掘り出しますが、今回は機械の掘り出し部分を省略して人手で行いました。
次は、茎を切ってイモの部分を切り離します。
この切り離された茎は、一旦束ねて片づけますが、3割程度は来年の苗木として使い、残りは廃棄します。
その後、台の上でイモを一本一本切り離して行きます。
実は、これまでカンボジアでもベトナムでもイモの切り離しに台を使わず、空中で切っていました。その場合には、時間とともに疲れで効率が下がるのと、切ったイモが散らばってしまう欠点があるので、今回はこのような台を工夫しました。
今回は、イモを切る鉈のような包丁の切れ味が悪く、切るのに苦労していました。本番では切れ味の良いものを揃えるため、随時研ぐ必要がありそうです。
このようにして切られたイモは、実際には大きな袋やプラスチックの容器にいれて集められ、35トントラックに積んで出荷します。
今回テストした一株あたりのイモの重さは、大分バラつきがあり、大きいものは1株6kg、小さいものは1株2kgでした。(下は1株6kgのイモ)
(下は1株2kgのイモ)
1ヘクタール当たりに1万株を植えるので、平均1株2キロの場合20トンの収穫量になります。
さて、今回は初回ということで収穫面積0.035haで、地面から茎ごと引き抜き、茎切りと茎の束ね、イモ切り離しまで10人で1時間かかりました。
一応、このようにすれば人手でもこんなスピードであれば出来るという最低限のことは確認できました。
今後は、何度かテストを繰り返して、機械の導入や、各作業の手際の良いやり方をワーカーに広めるなど、効率アップについての改善を進めて本番に備える予定です。